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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] エネルギー分野における日本国政府とロシア連邦政府との間の長期協力の基本的方向性

[場所] 
[年月日] 2005年11月20日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

エネルギー分野における日本国政府とロシア連邦政府との間の長期協力の基本的方向性

 日本国政府及びロシア連邦政府(以下「双方」という。)は、

 日本国とロシア連邦との関係の善隣友好的性格に立脚し、

 エネルギー分野における協力が二国間関係における戦略的に重要な分野であることを認識し、

 この分野における長期的な戦略的パートナーシップ関係を発展させることに関する強い意思を確認し、

 エネルギー分野における日露両国間の政府レベル及び企業レベルでの更なる協力が、互恵的性格を有し、アジア太平洋地域のエネルギー安全保障の強化を促進することを強く確信し、

 エネルギー分野における両国間の協力の深化のための可能性が存在するとの考えを共有し、

 2000年9月5日付けの「日本国及びロシア連邦との間の貿易経済分野の協力の深化のためのプログラム」及び2003年1月10日に採択された「日露行動計画」に従って、この分野での協力を拡大する必要性について一致し、

 「エネルギー分野における日本国政府とロシア連邦政府との間の長期協力の基本的方向性(以下「基本的方向性」という。)」を採択した。

1.双方は、エネルギー分野において両国間協力が拡大する可能性が存在するという認識を共有している。さらに、双方は、そのような協力の拡大を追求するため、政府間の閣僚レベルを含めて行われている協議を一層強化する。また、双方は、両国の企業間の経済活動が一層促進されるよう奨励する。双方は、両国の民間経済界・産業団体の関係者の協力を全面的に促進する。双方は、両国のエネルギー政策、エネルギー市況、エネルギー分野の協力を規定する法令についての情報交換の向上を図る。この関連で、双方は、貿易経済に関する日露政府間委員会や日露エネルギー協議を活用していくことで意見の一致をみた。

2.双方は、エネルギー分野における長期協力は、この基本的方向性の枠内において、以下の基本的分野において実現することにつき意見の一致をみた。

 ○石油、天然ガス、石炭を含むエネルギー資源鉱床の探鉱及び開発、それらの輸送及び精製・加工のプロジェクトでの協力

 ○電力、再生可能及び新たなエネルギー源、エネルギー分野におけるハイテクの発達に向けた協力

 ○エネルギー効率の向上及び省エネルギーの推進に向けた協力

 ○グローバルな気候変動への人為的影響の制限及び削減に関するプロジェクトの実現及び措置の実施に向けた協力

 双方は、相互にとり関心のある他のエネルギー分野の協力についても実現することができる。

3.双方は、エネルギー分野における二国間協力が円滑に実施されるよう、このような協力の実施主体となる両国の政府関係機関及び民間の機関にとり受入れ可能なファイナンスの形式の探求を含む、ファイナンスの確保にかかる問題の検討を共同で行う。

4.双方は、エネルギー効率化の向上に向けた活動は、アジア太平洋地域全体におけるエネルギーの安定供給及びエネルギー安全保障の強化に資するとの認識の下、省エネルギー及びエネルギー効率の分野の共同のプロジェクト及び計画の実現の可能性を検討し、関係する人材の育成、この分野におけるベスト・プラクティスの共有を含む協力を進める意図を有する。

5.双方は、ロシア連邦が批准したことにより、気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書が発効したことを歓迎する。双方は、気候変動に関連するグローバルな問題の解決に関する広範な多国間の国際協力に向けて努力するとともに、すべての国が参加する共通ルールの構築に向けた作業に参加する意向を表明する。

 双方は、大気中への温室効果ガスの排出削減のために、1992年5月9日付けの気候変動に関する国際連合枠組条約における規定の実現のためにエネルギー分野における可能な措置について検討する。

 双方は、1997年12月11日付けの気候変動に関する国際連合枠組条約の京都議定書において規定されている国際協力のメカニズムの利用の可能性について検討する。

 また、双方は、3R(発生抑制、再使用、再生利用)イニシアティブが重要であり、これが資源及び原料のより効率的な利用を促進し、経済的競争力を強化するものであることを確認した。

6.双方は、エネルギー分野における両国の企業の経済活動がその潜在的な可能性を十分に発揮できるような環境を整備することの重要性を確認する。このため、双方は、市場の透明性及び予見性の確保、市場へのアクセスの確保、いずれか一方の国に存在する企業及び団体の支店の円滑な開設と現行の法律の遵守に基づく経済活動の確保に最大限の努力を払う。

7.双方は、エネルギー分野における科学技術の成果の利用、専門的学術機関間の協力、専門家の交流及び両国関係機関間のその他の協力形態を通じ、エネルギー分野における科学技術協力を一層発展させる。

8.日露両国の法令に従ってこの基本的方向性の実施にかかる作業を調整する権限のある機関は以下のとおりである。

 日本側においては、関係省庁の参加を得て日本国経済産業省、外務省及び環境省(但し、環境省については上記5.に係る作業の調整に限る。)

 ロシア側においては、関係省庁の参加を得てロシア連邦産業エネルギー省

9.この基本的方向性に従って協力を実施するために、双方の権限のある機関は、「エネルギーの個別分野における協力に関する細目(以下「細目」という。)」を作成し、署名する。日露両国の間のエネルギー分野における協力は、就中この基本的方向性及び細目に従って実施される。

10.双方の権限ある機関は、この基本的方向性及び細目の実施状況に関し、必要に応じて意見及び情報の交換を行う。

11.この基本的方向性は、双方の決定により、修正ないし追加することができる。

日本国政府のために

ロシア連邦政府のために

東京 2005年11月21日