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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日露フォーラム 「グローバル化の中でのアジア太平洋地域における日露関係」 総括文書

[場所] モスクワ
[年月日] 2001年5月30日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

 日露フォーラム「グローバル化の中でのアジア太平洋地域における日露関係」は、2001年5月29、30日の両日、日本側の総合研究開発機構(NIRA)とロシア側のロシア戦略策定センターの共催の下、モスクワで開催された。フォーラムでは、有馬日本国政府代表、グレフ経済発展貿易大臣が代表団長及びセッションの共同議長を務めた。

 フォーラムは、平和条約の早期締結を含む日本国とロシアとの間の友好関係の発展の重要性を、両国の世論に説明することが必要であるとの首脳間の合意に従い、開催された。その合意は、2000年9月5日に森日本国総理大臣(当時)とプーチン・ロシア連邦大統領によって署名された平和条約問題に関する両国首脳の声明において強調されている。

 フォーラムの参加者は、創造的パートナーシップの確立に向けた21世紀におけるダイナミックな日露関係の発展は、アジア・太平洋地域ひいては国際社会全体の平和と安定の強化に資するとの点で意見の一致を見た。今回のフォーラムの参加者は、平和条約交渉の今後の継続についての両国首脳の声明を含め2001年3月25日にイルクーツクにおける日露首脳会談の成果の重要性を指摘した。

 フォーラムの冒頭に、グレフ経済発展貿易大臣が「露日経済関係:現実と新たな可能性」について、有馬政府代表が「アジア太平洋地域における日露関係」について基調報告を行った。

 引き続き、フォーラムのテーマに沿って、「経済の展望」、「人文・文化交流」及び「地政学的関係」という3つの主要分野に関するセッションで議論が行われた。

 「経済の展望」のセッションでは、21世紀における両国間の貿易・経済及び投資関係の一層の改善をめざし、最も効果的な協力の方途及び優先的な協力の分野について議論を行った。その結果、日露双方の経済の現状と展望について相互理解を深めた。また、資源の賦存状況の比較優位、ロシアの改革の進捗状況等を踏まえ、日露交易拡大の更なる可能性が確認された。さらに、北東アジアの他の諸国との協力の可能性を模索することの重要性も指摘された。

 「人文・文化交流」のセッションでは、文化的・人的交流が重要であるという認識が明確に示された。新世紀に真の善隣友好関係を確立するためには、相互の歴史、伝統、文化、芸術、ビジネス倫理等に対して敬意を抱き、また、正しい理解を深めることが基盤となるべきである。

 「地政学的関係」のセッションでは、特に北東アジアの平和と安定の確保のために国際場裡における日本国とロシアとの協力の態様とメカニズムに優先的な注意が払われた。グローバル化の進展に伴い、先鋭化している難民、テロリズム、国際犯罪、環境汚染、貧困に喘ぐ諸国への支援等の越境問題並びに地域紛争の解決のために共同で努力する必要性が強調された。

 同時に、フォーラムの参加者は、択捉島、国後島、色丹島及び歯舞群島の帰属の問題を解決してロシアと日本国との間の平和条約を締結することの重要性を改めて確認した。

 近年日本とロシアとの間では、活発な対話が頻繁に行われており、フォーラムの参加者は、今回の集まりはその中でも極めて有意義であったとの意見を分かちあった。そして、今回の会合の成果のひとつは、両国の更なる歩み寄りが、今の時代の客観的な要請であることについて参加者が同様の認識を分かちあったことである。フォーラム参加者は、互恵的な協力のあり方を今後とも積極的に模索していく用意のあることを確認した。同時に、日露平和条約の締結が両国間の関係を新たな水準に高めるとともに、北東アジアひいてはアジア・太平洋地域そして全世界における事態の展開に肯定的な影響を与えるとの認識の下に、平和条約締結に向けた作業に協力する用意のあることを確認した。

2001年5月30日 モスクワ