データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日・ロ首相会談後の共同コメント

[場所] 
[年月日] 1998年7月13日
[出典] 橋本内閣総理大臣演説集(上),565−566頁.
[備考] 
[全文]

○橋本総理

 今日、キリエンコ首相をお迎えして、約一時間(十八時○二分〜十九時〇三分)の会談を持ちました。

 今回のキリエンコ首相の訪日、これは旧ソ連そしてロシア、この歴史を紐解いて見て初めてのロシア首相の訪日です。ご覧のとおり若くて非常にエネルギッシュな素晴らしい首相です。そして非常に興味深い良い会話が出来ました。

 首脳級の交流の幅が広がると、これは両国にとって良いことです。また、経済関係について引き続き橋本・エリツィンプランを拡充し、着実な実施に努めて行くことで一致しました。

 特に、日・ロの投資会社構想の原則について一致することが出来、投資保護協定についても交渉が基本的に妥結したことを確認しましたし、八億ドル相当円の日本輸出入銀行によるアンタイド・ローンの貸付契約も署名されました。

 また、一昨日、私がエリツィン大統領と話をしたロシアに対するIMFの追加融資の件について、日本政府として、これを支持する、その姿勢を改めてお伝えすると同時に、キリエンコ首相率いるロシア政府が議会の承認を得て、経済安定化プログラムを着実に実施して行かれること、しかも早期に実施して行かれることを、私たちは期待していることもお伝えをしました。

 政治面においても、東京宣言に基づいて二〇〇〇年までに平和条約を締結するよう全力を尽くすというクラスノヤルスク合意の一層の前進、また、そのための作業の加速化が重要であることも確認しました。

 キリエンコ首相の訪日は、大変限られた忙しい日程になりましたけれど、さまざまの分野において重要な成果が得られたと、お互いにそう確信していますし、お互いのこうした成果を取りまとめて、共同新聞発表を作成することで合意しました。それぐらい良い会合でした。

○キリエンコ首相

 私は、橋本総理がおっしゃったことに一つだけ付け加えたいのですけれども、私たちロシアでは本当に橋本さんがそのポストを辞めるということを残念に思います。そして今日、記者会見で、参議院選挙の結果で、橋本総理は自分で辞任するというような勇気のある決断に、私は本当に敬意を抱いていることを強調したいと思います。

 今日の会談の時に私たちは、経済の問題に触れておりまして、今日、投資会社に関する取決めを交わすなど、あるいは輸出入銀行の融資の一部分の提供について話しましたし、この経済関係に関して多くの話がありました。私は、明日の記者会見で、もっと具体的に、そのご質問などにお答えするつもりです。ただ、私はここで強調したいのですけれども、橋本総理が日・ロ関係で行ったことは非常に歴史上に残る大きな道しるべになると思いますし、そして、橋本・エリツィンプランというのは、それは、私は疑いもなく、これから将来の歴史教科書にも残るような非常に大事なことでありまして、私たちは心から橋本総理が日・ロ関係で行った大きな貢献に対して心から感謝したいと思います。日本の国内政治にどんな変化があっても、あるいはロシアの国内政治であっても、私たちのこれからの関係は変わらないだろうと期待したいと思います。

 ありがとうございました。