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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] エリツィン露大統領との共同記者会見における細川内閣総理大臣の冒頭発言

[場所] 
[年月日] 1993年10月13日
[出典] 細川演説集,77−78頁.
[備考] 
[全文]

 冒頭に私の方から発言をさせていただきます。

 今般エリツィン大統領は、ロシア情勢が引き続き緊迫した状況の下に訪日されました。まずは、今般の悲劇による犠牲者に哀悼の意を表する次第です。私は、大統領の指導力の下で、真に国民の意思を反映する民主的で安定的な政治状況がロシアにおいて達成され、歴史的な改革が完遂されることを強く期待を致しております。

 我が国は、ロシアの改革の成功が世界的な重要性を有することを踏まえ、一貫してエリツィン大統領の推進される改革努力を支持して参りました。私は、この場を借り改めてG7首脳を代表して、エリツィン大統領の改革路線を支持する旨を表明させていただきます。

 日露両国関係の現在及び未来について忌憚のない意見交換をし、その成果は我々二人が今署名をした日露関係に関する東京宣言に結実されている。この宣言が示すとおり、エリツィン大統領と私は、日露間の最大の懸案である領土問題の解決と平和条約の締結について真剣な交渉を行って参りました。エリツイン大統領は、領土問題が存在し、これを必ず解決しなければならないとの決意を表明された。今後の領土問題の解決に向けて、新たに前進した交渉の基盤を確立することができたと考えているところであります。

 エリツィン大統領は、シベリア抑留問題を全体主義の悪しき遺産と位置付けると共に、ロシア政府・国民を代表して、この非人間的な行為に対して謝罪の意を表明されました。また、抑留者の遺族の墓参に全面協力することを約されました。私は、このような大統領の発言を、日露両国民の精神的な和解の基礎を築くものとして高く評価をしたいと思っています。

 今回の訪日は、日露関係に新たな一ページを開くことになったと受け止めています。日露両国は、更に活発な対話を継続して参ります。私は、エリツィン大統領より頂いたロシア連邦公式訪問への招待を喜んで受諾をしました。