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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 対露支援外相と蔵相の合同会議議長声明

[場所] 東京
[年月日] 1993年4月15日
[出典] 外交青書37号,178−179頁.
[備考] 仮訳
[全文]

1. 序

 主要先進7カ国の首脳及び首相並びにEC委員会委員長の求めにより,東京サミットの準備の一環として,G7諸国の外務大臣及び大蔵大臣並びに欧州共同体の代表は,ロシア連邦の改革に対する支援を検討するため,1993年4月14日,東京で会合した。この会合は宮澤喜一総理によって開会され,武藤嘉文外務大臣及び林義郎大蔵大臣が共同議長となった。

 閣僚は,ロシアの経済的,政治的状況に関し討議を尽くすため,1993年4月15日,ロシアのボリス・フョードロフ副首相兼大蔵大臣及びアンドレイ・コズイレフ外務大臣と会合し,国際社会がロシアの改革プログラムをいかにして最も適切に支援し得るかを検討した。ロシアの同僚は,改革を前進させるとのエリツィン大統領とロシア政府の決意を再確認した。彼らは,ロシアの努力を補完する形で改革プロセスを支援するとの我々の決意を歓迎した。

2. ロシアの改革への支援

 ロシアは,エリツィン大統領の指導力のもと,民主的社会を構築し市場経済を確立し国民の福祉を増進することを目指した広範な移行プロセスに着手した。ロシアは,過去2年間に大胆かつ際立った進展を見せた。民主化に向けたロシアの改革と進展は,世界平和にとり不可欠である。我々は,民主的,安定的で,経済的に強力なロシアが民主主義国家の共同体及び世界経済の中にしっかりと統合されることを望む。我々は,G7とロシアが国際問題に関し,引き続き責任をもって建設的に協力していくとの自信を有している。

 ロシア国民自身が経済及び政治改革の第一義的責任を負わなければならない。ロシアにおける市場経済の発展は,ロシア国民による困難な調整を要する長くて険しい作業となろう。我々は,移行期に不可避な諸困難に取り組むにあたっての我々の支持をロシア国民に対し保証する。我々は,パートナーシップ及び自助努力を助けるとのミュンヘン・サミットにおいて定められた原則に基づいた永続的な協力関係を発展させるため,ロシアと共に努力する決意を持ち続けている。我々の支援は,実用的で目に見える,具体的,効果的なものであり,ロシアの受入れ能力に合わせて策定され,改革の進展に対応したものとなろう。

 我々は,通貨の安定と民営化を含む一層の構造改革との両方が決定的に重要であるとのロシア政府の認識を歓迎する。適当な法的,行政的枠組みを含む民間投資及び民間のイニシアティヴのための良好な環境は,経済の変革のために決定的に重要である。輸出市場へのより良いアクセスは,ロシアの構造改革にとって欠くことができない。

3. 二国間及び多数国間の行動

 我々は,付属書に示されたとおり,我々の二国間の努力と密接に関連している一連の多数国間の行動に合意した。我々諸国及び国際機関の相互の緊密な調整並びにロシア当局との緊密な連絡が必要となろう。

 ロシアは,特に困難な状況を現在経験しつつある。我々は,ロシア以外の移行期にある経済圏が抱えている厳しい課題も十分承知している。それらの経済圏も引続き我々の支援を信頼することができる。

 ロシアの改革プログラムの成功は,全ての国々の利益となる。我々は,他の国々に対し,我々が本日とった行動に力を貸すことを奨励する。

4. 次の段階

 東京における我々の会合は,7月に東京で開かれる我々とエリツィン大統領との会合の基礎を整える助けとなった。主要先進民主主義7カ国の元首及び首相並びに欧州共同体委員会委員長は,引き続きロシアの動向に注視する。彼等は,7月に有益な検討が行われることを待望する。