データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 大平内閣総理大臣によるオリンピック参加問題についての見解,官房長官談話

[場所] 
[年月日] 1980年5月24日
[出典] 大平演説集,58頁.
[備考] 
[全文]

 政府は、モスクワオリンピック大会に選手団を派遣しないことを決定した日本オリンピック委員会の英断に対し敬意を表するものである。

 この決定に至るまでの日本体育協会、日本オリンピック委員会等関係者各位の並々ならぬご労苦をお察しするとともに、大会に参加すべく長い年月にわたり、精進を続けてこられた選手諸君の心情に対し、心から同情の念を禁じ得ないものである。

 オリンピック精神は、平和と友好の世界の建設に助力し、国際親善をつくり出すことを根本原則としている以上、現下の厳しい国際情勢のもとでは、その精神に即したオリンピック大会の開催が期待できないとして選手団を派遣しないこととした日本オリンピック委員会の決定に対し、選手諸君をはじめ、国民各位が十分理解されるよう切望して止まないものである。

 なお、政府は、今後とも国民スポーツの普及充実と国際競技力の向上のための協力を惜しまないものであるが、スポーツ界にあっては、この事態にくじけることなく、わが国スポーツの振興に一層の努力を払われ、また、候補選手はあらたな目標に向かって更に精進されることを念願して止まない。