データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ソ連邦沿岸に接続する海域における生物資源の保存及び漁業規制に関する暫定措置に関するソ連邦最高会議幹部会令

[場所] 
[年月日] 1976年12月10日
[出典] 外交青書21号,122−123頁.
[備考] 仮訳
[全文]

 ソ連邦最高会議幹部会は,最近ソ連の隣国を含む増々多くの国が,第3回国連海洋法会議において作成されつつある国際条約の締結を待たずに自国沿岸において200カイリまでの経済水域または漁業専管水域を設定していることを指摘する。

 ソ連邦は,今後とも,国際的基盤に基づく世界の海洋の法的制度の緊急な諸問題の解決及びこの目的のため,沿岸海域の生物資源利用問題を含むこれらの問題が総合的に,その相互関連において,また,全ての国の正当な利益を考慮して解決されるような条約の締結を支持する。

 かかる条約の締結まで,ソ連邦沿岸に接続する海域の生物資源の保存,再生産ならびに最適利用に関しソ連国家の利益の保護のための措置を緊急にとる必要があることを考慮し,ソ連邦最高会議は次のとおり決定する。

1.ソ連邦の領海と同じ基線から算定される200カイリまでのソ連邦の沿岸に接続する海域において本幹部会令の諸規定に従い,生物資源の保存及び漁業規制に関する暫定措置が実施される。

 このような暫定措置の設定は,ソ連邦の領海制度に抵触するものではない。

2.本幹部会令の第1条に規定される海域内においてソ連邦は,魚類及び他の生物資源に対し,その探索,開発及び保存のため主権的権利を行使する。ソ連邦のこれらの権利は,回遊水域における遡河性魚類にも及ぶものとする。ただし,それらの魚類が,ソ連により他の国の領海,経済水域または漁業専管水域と認められる水域にある場合には,この限りではない。

3.魚類及び他の生物資源の操業,ならびにかかる漁業に関連する探索及びその他の作業(以下「漁業操業」という)は,外国の法人及び自然人により,本幹部会令の第1条に規定される海域において,ソ連邦と外国との間の協定またはその他の合意に基づいてのみ行われ得る。

4.本幹部会令の第1条で規定されている海域における魚類及び他の生物資源の最適利用は,必要な科学的資料に基づき,また必要な場合には,権限ある国際機関の勧告を考慮して実施されるものとする。なかんずく右目的のため以下の事項が定められる。

 (A) 魚類及び他の生物資源の各種類についての毎年度総許容漁獲量。

 (B) もし何らかの操業対象魚種の資源の総許容漁獲量が,ソヴィエトによる漁業操業の作業能力を超えている場合,魚類及び他の生物資源の毎年度許容漁獲量の内で外国の漁船が捕獲出来る部分。

 (C) 漁業操業の合理的実施の保証及び生物資源の保存と再生産のための措置。

5.本幹部会令の第2,3及び4条の規定を遵守して,外国に対して漁獲割当量を定めることが可能であり,その割当量に基づき外国の漁船に対し漁業操業の許可証が発給される。

 右許可証なしには漁業操業は認められない。

6.ソ連邦沿岸に接続する具体的海域についてとられる生物資源保存及び漁業規制のための暫定措置の実施の条件及び期間,本幹部会令の諸規定の遵守状況の監督措置の確定ならびに本幹部会令第2,3,4及び5条の適用方法はソ連邦大臣会議が規定する。

7.本幹部会令の諸規定あるいは本幹部会令の実施のために発布される規則の違反に対しては,その違反者は,罰金による処分を課せられるものとする。

 行政手続で課せられる罰金は,1万ルーブルまでとする。

 もしも上記違反が重大な損害を与えるか,その他の重大な結果を招来したか,あるいはその違反がくり返されたときは,その違反者は裁判責任に問われるものとする。裁判手続によつて課せられる罰金は,その額を10万ルーブルまでとする。本幹部会令第1条で規定されている海域における魚類及び他の生物資源の保護を担当する機関の申し入れにより,裁判所は違反者が使用した漁船,漁具及び器具ならびに不法に捕獲したすべてのものを没収することができる。

 外国漁船の逮捕あるいは拿捕の場合には,ソヴィエトの権限ある関係機関は遅滞なく,旗国に対し,とられた措置及びすべてのその後の処罰措置を通報するものとする。拿捕漁船及びその乗組員は,それ相当の担保あるいは他の保証が納入された後直ちに釈放されるものとする。

8.本幹部会令の規定は,今後第3回国連海洋法会議の作業を考慮に入れて本幹部会令第1条に規定されている海域制度を定める他のソ連邦法律が採択されるまで,効力を有する。