データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ソ連政府声明に対する日本国政府の立場表明

[場所] 
[年月日] 1975年6月19日
[出典] 外交青書20号,87頁.
[備考] 日本側発表
[全文]

 日本国政府は,これまで累次にわたり明らかにしてきたように,全ての国との間に友好関係を増進し,もつて世界の平和に寄与することを外交の基本としている。このような基本的立場に立脚し,隣国であるソ連邦との間に善隣友好関係を促進することは日本国政府の一貫した政策である。ソ連側は,1973年3月20日付の田中内閣総理大臣あてブレジネフ共産党中央委員会書記長の書簡においても,また1975年2月26日付の三木内閣総理大臣あてブレジネフ共産党中央委員会書記長の書簡においても,日本国政府のこの面における努力を常に理解と支持をもつて迎える旨明確に述べている。

 もとより,国家間の関係においてそれぞれの国が他の第三国との間にかかえる問題は同一でないことは自明である。

 日本国政府は,現在中国政府との間に,平和友好条約の締結交渉を行つているが,右は1972年9月29日付日中共同声明に基づき,日中間の平和的,友好的な関係を増進することを目的としたものである。日中共同声明は,日中両国間の国交正常化が第三国に対するものではないことを明らかにしており,同様に,右条約に臨む日本国政府の立場が第三国に対するものではないことは,前記の日本側の基本的立場からみて疑問の余地がない。

 他方,日本国とソ連邦との関係は,1956年の国交正常化以来幅広い分野にわたつて顕著な進展をとげているが,日ソ間には未だに平和条約が締結されていない。

 右に関連し,ソ連側声明は,「双方は,両国関係が善隣友好の基礎の上に発展することを確保する問題において,日本国及びソ連邦が直面している重大な課題の意義を明瞭に理解しなければならない」旨述べているが,日本国政府は,まさにこのような認識に立つて,日ソ双方が両国の関係を真に安定した基礎の上に発展させるため,できるだけ早い時期に第2次大戦の時からの未解決の問題を解決して平和条約を締結すべきであると考えており,このためソ連邦政府の積極的な態度を期待するものである。このことは,ひとり日ソ両国民の共通の利益に応えるのみならず,極東ひいては世界平和の増進に貢献するものと確信する。