データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日本国政府に対するソ連政府声明

[場所] 
[年月日] 1975年6月17日
[出典] 外交青書20号,86頁.
[備考] 仮訳
[全文]

 最近,ソ連邦を含む第三国と日本国との関係を複雑にする目的をもつて日本国に対し影響力を行使しようとする中国指導部の試みは益々明確となりつつある。このことは,現在締結交渉が行われている平和友好条約に,中国指導者も認めるように何よりもソ連邦に対して向けられた条項をあらゆる手段をもつて無理やり挿入せんとする北京の努力に最も赤裸々に表われている。中国指導者のかかる行為は,世界において益々支持を得つつある国際緊張緩和及び平和の強化という傾向に対して反対する自己の対外政策の軌道に,日本国を何らかの形で引き込もうとする彼等の意図を反映している。

 モスクワにおいては,このことに関し,以下の考え方を述べることが必要であると考える。

 ソ連邦及び日本国は,善隣友好関係の強化が,両国国民の共通の利益に合致するのみならず,極東及び全世界の平和と安定にとつて多大の貢献となることを一再ならず声明した。このことは,特に,1973年10月10日付のソ・日共同声明において定められた。

 ソ連邦は,一貫してこの方針を遵守している。ブレジネフ・ソ連邦共産党書記長は,本年2月3日付の三木日本国総理大臣あて書簡において,両国は隣国であり,両国関係は,真の友好,善隣及び互恵的協力の途に沿つて発展することが客観的必要性の求めるところであるということを強調した。

 全ての点から判断して,このことは,日本の指導者が一度ならずソ連邦との関係において正にかかる路線をとることに賛意を表明してきているので,日本の指導者の見解ともくい違つていない。特に,三木総理大臣が本年1月14日及び4月18日付の親書において,ソ連邦との間に善隣関係を発展させることは,日本国の最も重要視するところの1つであると述べられたことが想起される。

 ソ連政府は,日本国政府が,第三国との関係を発展させるに際し,ソ連邦と日本国との間の関係発展に損害をもたらす可能性のあるような如何なることも行わないことを希望する。われわれの見解によれば,双方は,両国関係が善隣友好の基礎の上に発展することを確保する問題において,日本国及びソ連邦が直面している重大な課題の意義を明瞭に理解しなければならない。

 自己の狭い志向に従つてソ日関係の改善に障害を与ようと試みている第三国の如何なる行動に対しても,日本国及びソ連邦の共通の利益のために当然の反撃を加えるべきである。ソ連邦は,正にかかる方針をとつており,隣国たる日本国の同様の姿勢を期待する。