データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] グロムイコ・ソ連外務大臣の公式訪問に際しての日ソ共同コミュニケ

[場所] 
[年月日] 1972年1月27日
[出典] 外交青書16号,461−463頁.
[備考] 
[全文]

 ソヴィエト社会主義共和国連邦外務大臣ア・ア・グロムイコは,日本国政府の招待により,1972年1月23日から同月28日まで日本国を公式訪問した。

 グロムイコ外務大臣は東京,名古屋および鳥羽を訪問した。

 グロムイコ外務大臣は日本国に滞在中,夫人とともに天皇陛下および皇后陛下から謁見を賜つた。

 グロムイコ外務大臣は,また佐藤総理大臣と会談した。グロムイコ外務大臣は田中通産大臣,赤城農林大臣および大石環境庁長官と会見した。

 グロムイコ外務大臣は,第2回日ソ定期協議として福田外務大臣と数回にわたり会談した。この会談には,日本側から新関駐ソ大使,法眼外務審議官,有田欧亜局長その他が参加し,ソ連側からはトロヤノフスキー駐日大使,カーピツァ外務省第1極東部長,シュペチコ外務省第2極東部長その他が参加した。率直かつ友好的雰囲気の下に行なわれたこれらの会談において,日ソ両国間の諸問題及び両国が関心を有する若干の重要国際問題について討議が行なわれた。

 双方は近年両国間において人の往来,通商,経済,科学,文化その他の分野における交流が一層進展し,更に最近では諸国際問題に関する協議も緊密化していることを満足の意をもつて指摘し,互恵平等と内政不干渉の原則に基づきあらゆる分野における関係を今後ますます発展させていくことが望ましいとの一致した見解を表明した。

 双方はこのような日ソ両国間の友好協力関係の増進がアジア,ひいては世界の平和の強化に貢献するところが大であることの確信を表明した。

 双方は既存の招待に基づく日ソ両国首脳の相互訪問を実現するよう努力することとした。

 双方は,日ソ関係をさらに恒久的に安定した基礎の上に発展せしめるために日ソ平和条約を締結する意義を認め,平和条約締結に関する交渉を本年中の双方に好都合な時期に行なうことに合意した。

 双方は2国間の貿易経済関係の発展に満足の意を表明した。また双方は日ソ経済合同委員会の活動を高く評価するとともに右委員会を通じ,いくつかの経済開発プロジェクトが合意され実施されていることに満足の意を表し,長期的展望に立つて両国間の経済協力を一層推進するため努力することに合意した。

 日ソ両国間の文化交流を一層促進することを希望し,両外務大臣は1月27日日ソ両国政府間の文化交流に関する書簡を交換した。

 さらに双方は科学・技術の分野における両国の交流拡大が有益であると認め,両国間の科学・技術協力に関する取極締結の話合いに入る用意があることを表明した。

 双方は漁業の分野における両国間の恒常的協力が有益であることを認め,来るべき日ソ間の漁業関係交渉が成功裡に行なわれることは両国の利益に合致するものであるとの見解を表明した。

 双方は平和強化の立場に立つて広汎な国際問題について意見を交換した。

 双方は依然として不幸な武力紛争が続いているインドシナ情勢に懸念を表明し,同地域における恒久的平和の確立に際しては自己の将来を決定するインドシナ諸国民の権利を基礎とすべきであるとの見解を表明した。

 双方は近東における情勢について憂慮の念を表明すると共に,1967年11月22日の国連安保理事会決議を基礎とし,右決議に基づくヤーリング特使の活動を通じ,同地域における恒久的平和の確立に努力すべき旨を述べた。

 双方は国際連合の活動を重視し,その機能が強化されるよう協力することに同意した。

 双方は核軍縮を含む軍縮問題につきそれぞれの政府の立場を説明し,効果的な国際管理の下に核兵器・通常兵器を含む全面完全軍縮を実現することの重要性を認めた。

 両外務大臣は,両国間の諸問題及び両国が関心を有する国際問題に関する定期的意見交換が望ましいことを認め,今後引続き両国外務大臣間の定期的協議を交互に少なくとも年1回行なうことに合意した。