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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日ソ通商条約,日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の通商に閲する条約の附属書

[場所] 
[年月日] 1957年12月6日
[出典] 日本外交主要文書・年表(1),834−835頁.外務省条約局「条約集」,36−13頁.
[備考] 
[全文]

 在日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦通商代表部の法的地位について

   第一条

 在日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦通商代表部は、次の業務を遂行する。

(a)日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の貿易を容易にし、かつ、助長すること。

(b)日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の貿易の分野において、日本国におけるソヴィエト社会主義共和国連邦の利益を代表すること。

(c)日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の貿易取引に関し、ソヴィエト社会主義共和国連邦政府のため必要な措置を執ること。

(d)ソヴィエト社会主義共和国連邦政府の名において、日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の貿易を行うこと。

   第二条

 通商代表部は、在日本国ソヴィエト社会主義共和国連邦大使館の構成部分とする。

 通商代表部の事務所は、東京都港区麻布新龍土町十二番地に置かれ、外交使節団の事務所に対し認められる免除及び特権を享有するものとする。通商代表部の事務所は、日本国政府とソヴィエト社会主義共和国連邦政府との間の合意によつて、他の場所へ移転することができる。

 通商代表部は、日本国政府の事前の同意を得て、その支部を他の都市に設置することができる。

 通商代表部は、暗号を使用することができる。

 通商代表部は、商業登記に関する規則の適用を受けない。

 通商代表及びその二名の代理は、外交使節団の構成員に与えられるすべての免除及び特権を享有する。

 通商代表部の勤務員の数は、両政府が合意する範囲内の数とする。

 ソヴィエト社会主義共和国連邦の国民であつて、通商代表部の勤務員として日本国へ派遺された同勤務員であるものは、前条に掲げる業務の遂行に対してソヴィエト社会主義共和国連邦政府から受ける給与については、日本国の税を課せられないものとする。

   第三条

 通商代表部は、ソヴィエト社会主義共和国連邦政府の名において行動する。

 ソヴィエト社会主義共和国連邦政府は、通商代表部の名において日本国において締結され、又は保証されたすべての商事契約で、そのために委任を受けた二名の者によつて署名されたものに対して責任を負う。

 通商代表部は、前記の委任を受けた者の氏名及びそのおのおのが通商代表部の名において行う商事的証書の署名に関する権限の範囲を日本国政府に通報するものとし、日本国政府は、この氏名及び権限の範囲を日本国の官報に公示するものとする。これらの者の権限は、それが終了した旨の通報が同じ方法により公示されるまで継続するものとみなされる。

 ソヴィエト社会主義共和国連邦の法令により独立した法人の権利を享有するソヴィエト社会主義共和国連邦のいずれかの団体が通商代表部の保証なしで締結するいかなる商事契約も、当該団体のみを拘束するものであり、その商事契約についての強制執行は、当該団体の財産に対してのみ行うことができるものであることが了解される。ソヴィエト社会主義共和国連邦政府も、通商代表部も、また、当該契約の当事者以外のいかなるソヴィエト社会主義共和国連邦の団体も、これらの契約に対する責任を負わない。

   第四条

 通商代表部は、次の場合を除き、第二条の規定に基く免除及び特権を享有する。

 日本国の領域において前条第二項の規定に従つて通商代表部が締結し、又は保証した商事契約に関する紛争は、仲裁又は他の裁判管轄に関する留保がない限り、日本国の裁判所の管轄に属し、かつ、当該契約の条項又は日本国の法令に別段の定がない限り、日本国の法令に従つて解決されるものとする。ただし、通商代表部に対する保全処分は、行われない。

 前項にいう紛争について提起されることのある訴訟に関して行われる裁判所の手続においては、ソヴィエト社会主義共和国連邦政府は、通商代表及びその二名の代理のために第二条に掲げる免除及び特権を援用しないものとし、かつ、前項の規定によつて日本国の裁判所に提起されることのある訴訟について日本国の裁判所がその訴訟に関する手続を進行させることができるように、通商代表に対し又は通商代表に事故がある場合はその二名の代理のいずれかに対し自国を代表する権限を与えなければならない。

 通商代表部が当事者である契約に関連する裁判所のすべての裁判の強制執行は、日本国におけるソヴィェト社会主義共和国連邦のすべての国有の財産、特に、通商代表部によつて、又はその保証のもとになされた取引から生ずる財産、権利及び利益に対して行うことができる。ただし、通商代表部によつて保障された契約の当事者でない前条第四項に掲げる団体に属するものを除く。

 日本国においてソヴィエト社会主義共和国連邦政府の外交的又は領事的事務を国際慣行に従つて行うためにのみ充てられる財産及び土地建物並びに通商代表部の占める土地建物及びその中にある動産は、いかなる強制執行の措置をも受けないものとする。

   第五条

 通商代表部の設置は、商事契約の締結及び実施のため日本国の法人及び自然人がソヴィエト社会主義共和国連邦の外国貿易団体と直接の関係を有する権利をなんら害するものではない。