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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 北西太平洋日ソ漁業委員会第一回会議の議事録

[場所] 
[年月日] 1957年4月6日
[出典] 外交青書1号,182‐194頁.
[備考] 
[全文]

 北西太平洋日ソ漁業委員会第一回会議は、千九百五十七年二月十五日から四月六日まで東京で開催された。

 日本国側からは、

  衆議院議員 平塚常次郎

  外務省欧亜局長心得 法眼晋作

  水産庁長官 岡井正男

 ソヴィエト連邦側からは、

  全連邦海洋漁業海洋学研究所長代理 ペ・ア・モイセーエフ

  太平洋海洋漁業海洋学研究所長 カ・イ・パーニン

  在日ソヴィエト連邦大使館特命全権公使 エス・エリ・チフヴィンスキー

    (三月十二日まで委員として参加した。)

が、それぞれの国別委員部の委員として参加した。

 委員会は、次の決定及び勧告を採択した。

I 仮議事手続規則

 委員会は、条約第三条4に基き、仮議事手続規則(別添一)を決定する。

II 次回会議の日時及び場所

 委員会は、その第二回会議を千九百五十八年一月十三日からモスクワで開催することを決定する。

III 事務局及び分担金

 委員会は、条約第三条 8に基き、次のとおり決定し、及び勧告する。

 この委員会の議長は、その任期中委員会の事務を行う責任者となり、常置の事務局を置かないこととする。

 したがつて、条約第三条 8による分担金は、議長を出している国が議長の任期中における委員会の共同経費を支払うことによつて負担されたものとみなす。

 ただし、特別の共同経費を必要とするときは、その形式及び割合は、そのつど委員会が定める。

IV 統計その他の資料

 委員会は、条約第四条(ハ)に基き次のとおり決定する。

 (I) 両締約国は、委員会の定例会議において条約区域内のさけ及びかにの漁業及び調査に関する統計その他の資料を別添二ないし七に従い委員会に提出するものとする。

 (II) 各締約国は、条約区域内のさけ、にしん及びかにの漁業に関する国内法令の制定、廃止及び改正に関しそのつど他方の締約国に通報するものとする。

 なお、委員会は、両締約国が条約によつて規制される漁業対象のせい息する他の区域について別添二ないし七に従い統計その他の資料を交換し、かつ、これらの区域における前記の漁業対象の漁業を規制する規則を他方の締約国に通報することが望ましいものと認める。

V 科学的調査研究の調整

 両締約国が関心を有する北西太平洋の漁業の最大の持続的生産性を維持することを目的とする科学的調査研究を推進し、及び調整するため、委員会は、次のとおり決定する。

 (I) さけ、にしん及びかにに関する科学的調査研究は、次の基本方針に従い実施されるものとする。

  (1) 漁獲の変動と漁業資源の状態との関係の調査研究

  (2) 漁獲の変動に及ぼす各種の人為的要因及び自然的条件の影響の究明

  (3) 漁業資源の再生産力及び補充機構の調査研究

  (4) 漁業資源の自然消耗に関する調査研究

  (5) 漁獲努力に対する各種規制の効果の究明

  (6) 漁業資源の各種増殖方法の効果に関する調査研究

  (7) 年間総漁獲量の決定を要する漁業資源の適正漁獲量の算定に関する調査研究

 (II) 条約第四条(ニ)に基き千九百五十七年度において別添八の計画に示された科学的協同調査の実施を両締約国に対して勧告する。

 (III) 協同調査計画案の作成に際しては、両締約国は、その領水において行うそれぞれの調査計画を交換し、この調査計画の内容を参考にするものとする。

 (IV) さけ、にしん及びかにの標識放流に関し実施される作業に関する情報を適時交換し、かつ、発見された標識札の返還及びその発見に附随する資料の通報をすみやかに行うことを両締約国に対して勧告する。

 (V) 漁業資源及び漁業規制の研究に関する経験を相互に交換するため千九百五十七年度に漁業使節団の交換を実現するように両締約国に対して勧告する。

VI 附属書の内容を構成する事項

 (I) 委員会は、附属書1(ロ)に関連し、次のとおり決定する。

 附属書1(ロ)の規定による科学的資料に基く禁止区域の再検討は、日ソ漁業委員会の千九百五十八年度会期で行われるものとする。

 千九百五十七年においては、規制区域における移動漁具による海上漁業の禁止区域は、いずれかの締約国の島しよ及び大陸沿岸の海岸線から起算し、北緯四十八度以南(日本海及びサガレンに近接する水域を除く。)においては二十海里とし、その他の区域(日本海及びサガレンに近接する水域を含む。)においては四十海里とする。

 前記の禁止区域のうち北海道に近接する区域においては、前記の移動漁具による海上漁業の禁止の規定は、日本の小漁船には適用しない。

 (II) 委員会は、実施のため日本国代表団及びソヴィエト連邦代表団の間にできた次の合意を採択する。

  (1)千九百五十七年においては、オホーツク海の公海におけるさけの漁獲量は、一万三千メトリックトンとし、二隻をこえない母船に属する漁船によつて操業されるものとする。

  (2) 条約実施第一年、すなわち、委員会が豊漁年とみなしている千九百五十七年における附属書1(イ)の規定する規制区域内のさけ年間総漁獲量に関しては、日本国代表団及びソヴィエト連邦代表団は、それぞれの政府の特別の訓令に基き、その総漁獲量を、千九百五十七年についてのみ、十二万メトリックトンとすることを合意する。

 (III) 委員会は、科学技術小委員会の勧告に基き、附属書1(ホ)に関連して、次のとおり決定する。

 べにざけ資源の保護のため、北緯五十二度以北東経百七十度二十五分以西のカムチャッカ半島東方海域(別図一)におけるさけ漁業を千九百五十七年において七月二十日以降停止するものとする。

 千九百五十八年度以降は、前記の区域におけるさけ漁業の停止については、委員会において再検討するものとする。

 (IV) 委員会は、附属書2第二項に基き、小にしんの混獲許容限度について、次のとおり決定する。

 商業的漁獲における小にしんの混獲は、一漁船の一航海につき尾数にして全漁獲量の十パーセントをこえない範囲内において認められる。

 小にしんの混獲が尾数計算で十パーセントをこえたときは、当該漁船による当該場所における操業は中止されるか、又はその漁船の漁具はさらに大きな綱目にものに代えなければならない。

 (V) 委員会は、附属書3(イ)第二項及び第三項に基き、めすがに及び子がにの混獲の限度について、次のとおり決定する。

 一漁船(川崎船)による揚網一反当り平均一尾(オリュートル区域については平均0・5尾)をこえない限度におけるめすがに及び子がにの混獲は、附属書3(イ)第一項で定められた禁止の違反とはみなさないものとする。

 ある区域において漁獲が停止されるべきめすがに及び子がにの混獲限度は、日ソ両国の科学的協同調査の結果に基き今後決定される。

 (VI) 委員会は、附属書3(ロ)に基き、かに網の設置について、次のとおり決定する。

 かに網の配列の長さ、一線上にある配列の間の間隔及び線の間の距離については、資源の保護及び操業能率を考慮して次のとおりとする。

  (1) 相互に結合された網からなるかに網の配列の全長は、千七百メートルをこえないものとする。

  (2) 一線上にある隣接する二個の網の配列の末端間の間隔は百メートル以上でなければならない。

 ただし、千九百五十七年においては、前記の間隔が三十メートル以上の場合は、違反とみなさないものとする。

  (3) 二個の並行した網の配列の線の間の距離は、二百五十メートル以上でなければならない。

VII その他の事項

 委員会は、科学技術小委員会の報告(委一科技第十号)を採択した。その際、日本国側は、前記の報告の第二項に関するソヴィエト連邦側提案を聴取した。

 以上の証拠として、委員会の両国国別委員部の委員は、この議事録に署名した。

 千九百五十七年四月六日に東京で、ひとしく正文である日本語及びロシア語により、本書二通を作成した。

日本国国別委員部のために

平塚常次郎

法眼晋作

岡井正男

ソヴィエト社会主義共和国連邦国別委員部のために

ベ・ア・モイセーエフ

カ・イ・バーニン

(別添一)

仮議事手続規則

第一条 千九百五十六年五月十四日にモスクワで署名された北西太平洋の公海における漁業に関する日本国とソヴィエト社会主義共和国連邦との間の条約(以下「条約」という。)に後つて設置された北西太平洋日ソ漁業委員会(以下「委員会」という。)は、二の国別委員部で構成し、各国別委員部は、それぞれの締約国の政府が任命する三人の委員で構成する。各国別委員部は、その委員の変更及びこの仮規則の第十四条の規定による通信責任者たる委員を議長にすみやかに通報しなければならない。

第二条 委員会は、別段の合意がない限り毎年一月中旬に、両国別委員部が合意する場所において、定例年次会議を開くものとし、また、そのほかに、一方の国別委員部の要請により、両国別委員部が合意する期日及び場所において会合することができる。

第三条 各国別委員部は、委員会の会合に各自の任命する専門家、顧問及び通訳を伴うことができる。これらの専門家、顧問及び通訳の名簿は、会期が開かれる際に又はその前に議長に通報しなければならない。

第四条 委員会においては委員以外の専門家、顧問、その他の者も、国別委員部の委任により、かつ、他方の国別委員部の反対がない限り、発言することができる。

第五条 各国別委員部は、一個の投票権を有し、この投票権は、当該国別委員部のいずれの委員も行使することができる。

第六条 委員会の会合におけるすべての決議、勧告その他の決定は、両国別委員部間の合意によつてのみ採択されるものとし、その合意は、議長が適当と認める挙手又は発声の方法により行われるものとする。

第七条 委員会の会期から会期までの間の期間における投票は、郵便その他の通信方法により行うことができる。各国別委員部の通信責任者は、投票を議長に伝達するものとする。

第八条 委員会は、その定例年次会議において議長及び副議長を異る国別委員部から選定するものとし、それらの者の任期は、その会議の開始の時から次回の定例年次会議の開始の時までとする。国別委員部からの議長及び副議長の選定は、各年において各国別委員部がそれらの地位に順番に代表されるように行うものとする。

第九条 議長の権限及び義務は、次のとおりとする。

 (イ) この仮規則の第二条の規定による定例年次会議及びその他の会議を召集すること。

 (ロ) 委員会のすべての会議を司会すること。

 (ハ) 委員会の会議において提起される議事進行に関するすべての問題を決定すること。もつとも、いずれの国別委員部も、議長の裁決を委員会の表決に付することを要請する権利を有するものとする。

 (ニ) 委員会に対し投票を求め、及び投票の結果を発表すること。

 (ホ) 各国別委員部と協議した後、会期の開始の三十日前までに委員会の会期の議事日程案を各国別委員部に伝達すること。

 (へ) 委員会の会期から会期までの間の期間において委員会の決定に従つて行動すること。

 (ト) 委員会に代つて、締約国、国別委員部、委員及びその他の関係者と通信を行うこと。

 (チ) 委員会に代つて接受し又は発送するすべての文書の写及び委員会が刊行するすべての文書をすみやかに各国別委員部に伝達すること。

 (リ) その任期中事務局の行うべき通常の事務を指導すること。委員会の常置の事務局は設置しない。

第十条 議長の地位が空席となるか又は議長がその機能を遂行することができない場合には、議長の権限及び任務は、議長がその機能を遂行することができるまで、又はこの仮規則の第十一条に定める後任者が選定されるまで、副議長が遂行するものとする。副議長による議長の地位の一時的代行は、次の年度における地位の交代に影響を及ぼすものではない。

第十一条 議長又は副議長の地位が任期の満了以前に空席となつた場合には、その地位の前任者と同一の国別委員部から委員会によつて選定された委員が任期の残りの期間中その地位につくものとする。

第十二条 

 1 委員会は、次の二の常置小委員会を設置するものとする。

  (イ) 運営財政小委員会

 運営財政小委員会は、各国別委員部からのそれぞれ一名の委員及び二名の専門家又は顧問で構成する。この小委員会は、委員会の運営財政及びその他の問題に関し委員会が付託する事項を審議し、かつ、これらの事項について委員会に報告及び勧告を行うものとする。

  (ロ) 科学技術小委員会

 科学技術小委員会は、各国別委員部からのそれぞれ一名の委員及び三名の専門家又は顧問で構成する。この小委員会は、生物学、水産業、科学技術、調査研究その他の問題に関し委員会が付託する事項を審議し、かつ、これらの事項について委員会に報告及び勧告を行うものとする。

 2 委員会は、特別の小委員会を必要に応じて設置することができる。

 3 各国別委員部は、各小委員会におけるそれぞれの代表を選定するものとし、随時これを変更することができる。

第十三条 仮議事手続規則の改正及び条約第四条(イ)の規定に基く附属書の修正に関する提案は、その理由を附してそれらが討議される会期の開始の少くとも三十日前までに議長から各国別委員部に伝達されていない限り、委員会の決定の対象とはならない。

第十四条 各国別委員部は、その委員のうち一名を、委員会の会期から会期までの間の期間に当該国別委員部に代つて通信する責任者として指名するものとする。

第十五条 条約第三条8に定める共同の経費は、議長の属する国がその任期中支払うこととする。ただし、特別の共同の経費を必要とするときは、その経費は、そのつど委員会が決定し、両締約国に勧告するものとする。

第十六条 委員会の公用語は、日本語及びロシア語とする。提案及び資料は、前記の国語のいずれによつても委員会に提出することができる。

第十七条 委員会の各会合の議事録は、作成することを要しない。ただし、各会合における合意及び他の必要と認める事項は、適当な形式により記録される。

第十八条 この仮議事手続規則は、委員会が議事手続規則を採択するまで効力を有する。前記の議事手続規則は、条約の規定と合致するものでなければならない。

第十九条 この仮規則の第九条(ホ)及び第十三条の規定は、第一回会議には適用しない。

(別添二)

  さけに関する生物学的統計資料

 公海及び沿岸区域におけるさけ漁業に関しては、各魚種別に次の生物学的統計資料を提出するものとする。

 1 漁獲されたさけの年齢組成

 2 漁獲されたさけの体長組成及び体重組成

 3 公海及び沿岸区域において漁獲されたさけの成熟度(体重に対する生殖巣重量の百分比により表示する。)

 体長及び体重並びに成熟度については、それぞれの平均値及び頻度分布表を提出するものとする。

 前記の資料は、十分多量の標本魚について調査した結果でなければならない。また、この資料は、操業期間の月別及び主要漁業区域別の漁獲物について表示したものでなければならない。

 日本側は、次の区域の資料を提出する。

 アリューシャン区域(東経百七十度以東の水域)

 カムチャッカ・千島区域(太平洋側)

 オホーツク海域

 南方区域(北緯四十八度以南規制区域境界線まで、及び規制区域境界線以南)

 北海道

 ソヴィエト連邦側は、次の区域の資料を提出する。

 カムチャッカ東海岸及び西海岸

 オホーツク沿岸

 アムール河

 サガレン

 主要な産卵河川及び公海において採取された各種さけの鱗の標本の交換を行うものとする。

 主要なさけ産卵河川における観測所別の溯河親魚の数及び降下稚魚数に関する資料の提出は、好ましいものと認める。

(別添三)

  かにに関する生物学的統計資料

 公海及び沿岸区域におけるかに漁業に関しては、次の生物学的統計資料を提出するものとする。

 1 かにの大きさ(センチメートルによる胸甲の長さ及び幅)

 2 かにの重量(単位キログラム)

 3 脱皮がにの出現の開始及び終了の時期並びに漁獲量中の脱皮おすがにの混獲率に関する資料

 かに(おすがに)の大きさ及び重量については、平均値及び頻度分布表を提出するものとする。

 前記の資料は、十分多量の標本がにについて調査した結果でなければならない。また、この資料は、操業期間の月別及びカムチャッカ西海岸、オリュートル湾の各区別の漁獲物について表示したものでなければならない。

 備考

 一 オリュートル湾については、たらばがにのほか、あぶらがにについても資料を提出する。

 二 めすがに、子がに及び脱皮がにについての前記の資料は、科学調査船による調査に基き提出されるものとする。

 三 胸甲の長さは、前端右眼窩から後中央部までを測る。胸甲の幅は、甲殻の最広部位を測る。(刺と刺との間)

(別添四)

 母船式さけ漁獲量

  千九百五十年  月から  月まで

(月別)  {表は省略}

(別添五) {表は省略}

(別添六) {表は省略}

 資料は、次の区域について提出するものとする。

 カムチャッカ東海岸及び西海岸

 千島列島

 オホーツク海北部沿岸

 オホーツク沿岸

 アムール河

 サガレン

 沿海州

 北海道(太平洋、オホーツク海、日本海沿岸)

 本 州

(別添七)

  母船によるかに漁獲量

 (月別) 千九百五十年   から   まで

{表は省略}

 カムチャッカ沿岸区域及び北海道沿岸区域におけるかにの総漁獲量及び漁船数に関する資料も同時に提出するものとする。

(別添八)

  千九百五十七年度科学的協同調査計画

 一 さけ

日本国側

1 調査概要

 (イ) さけの地理的系統別年級別ポピュレーションの分布、移動及び変動の研究のため、主として漁船の漁獲物について採鱗、魚体測定、成熟過程の観察及び罹網状況の調査を実施し、これらから得られた資料の統計学的分析を行う。

 (ロ) さけの海洋における生活史、特に、若齢魚の季節的な分布、移動及び成熟過程の研究のため、主として科学調査船により海洋学的調査、標識放流及び標本の採集を行い、これらから得られた資料の生物学的研究を行う。

2 調査方法

 (イ) 海洋学的調査及び生物学的調査

 科学調査船 二百トン級三隻及び六百トン級一隻を使用する。

 調査期間  五月中旬から八月中旬までの三箇月

 行動範囲  西経百六十五度以西、北緯四十度以北の太平洋及びベーリング海(別図参照)

○海洋学的調査

 一般的海洋観測及び餌料生物を調査するためのプランクトン採集

 温度及び比重の観測層 〇、一〇、二五、五〇、七五、一〇〇、一五〇、二〇〇、三〇〇、四〇〇メートル

○標識放流調査

 魚種は、べにざけ、さけ及びますについて行う。使用漁具は、流網及び延繩とする。標識放流目標は、べにざけについては二千尾、さけについては一千尾、ますについては一千尾とする。

○標本の採集 各種目合の流網及び延繩により採集する。

 (ロ) 生物統計学的調査

 調査方法は、母船、科学調査船及び根拠地において魚体測定、採鱗及び罹網状況の調査を行う。べにざけ、さけ及びますにつき推計学的方法により、標本をちゆう出し、メリスティクな生物測定及び採鱗が行われ、これらの資料によつて時期的、漁区別、年級別にポピュレーションの分布及び移動並びに組成の変動について研究するとともに、未成熟魚及び若齢魚の混獲を調査する。

ソヴィエト連邦側

 北西太平洋において千九百五十七年五月から九月までの間さけの生物学的及び漁業上の調査の目的をもつて次の事業が行われる。

1 試験的漁獲を行つて、さけ(さけ、ます、べにざけ、ぎんざけ及びますのすけ)の成熟魚及び未成熟魚の分布、移動及び生態を解明する。漁獲したさけの生物統計学的調査のための資料(魚の大きさ、重さ、性別、年齢、魚の栄養度、生殖巣の成熟度その他)を収集する。おおよそ一千尾のさけを標識放流する。

2 プランクトンの組成及び分布を含むカムチャッカの東方海域における海洋の状況を調査する。その調査は、一般通念となつている観測層において行われ、海水の温度、塩分、透明度その他の環境条件に及ぶ。

3 さけの種族別及び各年級別のせい息地決定の資料の収集

 この計画の実施方法

 この計画の実施のため前記の期間中、科学調査のため適当な装備のある約三百五十トンの調査船二隻を使用する。この調査船には必要な分野の専門家のグループが乗船する。

(別図一){図は省略}

 二 かに

日本国側

1 調査概要

 (イ) かにの地理的な種族の識別、分布、移動及び資源変動の研究のため主として母船の漁獲物についてメリスティクな生物測定及び罹網状況の調査を実施し、これらから得られた資料の統計学的分析を行う。

 (ロ) めすがに、子がにの混獲が資源に及ぼす影響について研究するため、主として科学調査船により標識放流及び標本の採集を行い、これらから得られた資料の生物学的研究を行う。

 (ハ) かにのせい息地の調査のため、主として科学調査船により漁獲調査並びに地形及び底質の調査を実施する。

(別図二) さけ及びかにの調査計画(1957年){図は省略}

2 調査方法

 (イ) 科学調査船による調査

 科学調査船 百五十トン級一隻を使用する。

 期間    四月から九月まで(五箇月)

 範囲    モロシェチナヤ沖ほか二点(別図)

 調査器具  底曳縄、刺網、ドレッジ、採泥器

 かにの標識放流 標識放流は、一万尾より少くない尾数を予定する。その再捕がにの資料に基いて資源状況の調査を行う。なお、年齢と成長との関係に関する資料を求める。

 (ロ) 母船による調査

 母船四隻とし、調査員一名乗船

 期間 四月から九月まで(五箇月)

  標本を収集し、生物学的調査及び測定を行う。収集せられた資料について統計的分析を行う。めすがに、子がにの混獲の調査を行う。罹網状況の調査を行う。

 ソヴィエト連邦側

 千九百五十七年においては、カムチャッカ西海岸沿いにたらばがにの生活史、分布及び移動に関する調査を行う。商業的漁獲物並びに科学調査船及び探索船の試験的漁獲物の生物学的統計(胸甲の長さ及び幅、体重並びに性別)の分析を実施する。

 特に、脱皮がに及び子がにのせい息区域及び期間の究明に重点を置くとともに、幼年期におけるかにの分布を研究する。

 たらばがにの移動経路及び速度を調査するため生体がに及び子がに千尾の標識放流を行う。

 研究は、科学調査船一隻及び探索船により底曳網、底刺網及び所要の器具を用い千九百五十七年六月ないし九月の期間中に行う。