データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日豪両首脳による共同ステートメント

[場所] 
[年月日] 2011年4月21日
[出典] 首相官邸
[備考] 仮訳
[全文]

(地震と津波)

1.菅内閣総理大臣は、ギラード・オーストラリア首相の来日を歓迎するとともに、捜索救助隊の宮城県への派遣、救援活動支援を目的とするオーストラリア空軍C‐17輸送機の展開、オーストラリア赤十字社の日本・太平洋災害アピールに対する1000万オーストラリア・ドルの義捐金を含め、東日本大震災に際するオーストラリア政府による支援への日本政府の深甚なる謝意を表明した。菅総理は、新しい未来を創造するために、この悲劇を克服し日本を再生する決意を強調した。

2.ギラード首相は、日本の甚大な損失に対する悲嘆を表明した。ギラード首相は、震災を受け、オーストラリアの日本及び日本国民への友情と連帯を確認するとともに、日本の早期復興を支援する意向を表明した。ギラード首相は、早期に復興し、引き続き国際社会及び世界経済において力強く積極的な役割を果たしていく能力を日本が有していることを確信している旨強調した。

(原子力の安全)

3.菅総理は、福島第一原子力発電所の状況を打開する決意を表明し、日本として、事故への対応及び日本の製品の安全性に関し、最大限の透明性をもって国際社会に対して情報提供を継続していくことを保証するとともに、十分な科学的根拠に基づく冷静な対応を要請した。菅総理は、然るべく原子力発電所の事故を徹底的に検証し、事故から得られた経験を国際社会と共有する決意を表明した。ギラード首相は、こうした状況の打開に向けた日本の努力をオーストラリアとして支援する用意がある旨再度強調した。

4.両首脳は、原子力発電の安全基準を世界的に強化するため、国際原子力機関(IAEA)の枠組みにおける協力を強化する必要性を認識した。

(エネルギー・資源)

5.菅総理は、日本の長きにわたるエネルギー供給国及び緊密な経済パートナーとしてのオーストラリアの重要性を強調するとともに、日本に対する液化天然ガス(LNG)その他のエネルギー・鉱物資源の継続的な安定供給を期待する旨表明した。ギラード首相は菅総理に対して、市場メカニズムを通じて安定供給を継続していくことを保証した。ギラード首相は、日本への供給の安定に資するオーストラリアのLNG開発に対する日本企業の更なる投資を歓迎した。

6.両首脳は、クリーン・エネルギーの開発と利用を一層促進することが重要である旨強調するとともに、両国がこの分野で二国間及び多国間の協力を継続していくことを表明した。

(災害への備え・対応)

7.両首脳は、災害への備え・対応に関する民及び軍の分野における二国間の協力を更に発展させ、連携を強化することが時宜にかなっていることを確認した。また,両首脳は、災害救援及び人道支援に関する二国間の枠組みに基づき、日米豪戦略対話(TSD),日米豪安全保障・防衛協力会合(SDCF),ASEAN地域フォーラム(ARF)及び東アジア首脳会議(EAS)を含む国際場裡において、災害救援に関する協力を継続することを確認した。

(安全保障・防衛)

8.両首脳は、日本とオーストラリアは戦略的利益と価値を共有する当然の安全保障上のパートナーであるとの認識を新たにした。両首脳は、両国の外務・防衛大臣に対して、2007年の安全保障協力に関する共同宣言その他の取決めを基礎としつつ、次回2+2の文脈で、二国間安全保障及び防衛協力に関するビジョンを進展させるよう要請した。また、両首脳は、可能な限り早期に物品役務相互提供協定を発効させるとともに、次回2+2までに情報保護協定交渉を妥結させる意思があることを表明した。

(貿易政策)

9.両首脳は,貿易と投資の自由化は世界経済及び地域経済の継続的な健全性と両国経済の成長にとって死活的に重要であることを認識した。日本の現在の状況とその影響を考慮しつつ,両首脳は,両国が包括的且つ互恵的な二国間FTA/EPAの妥結に向けてさらに交渉を行うことを確認した。両首脳はまた、昨年11月のAPEC首脳会合及びG20サミットにおける宣言にかんがみ、WTOドーハ・ラウンド交渉の可能な限り迅速な成功裡の妥結を要請した。

(グローバルな問題)

10.両首脳は、日本とオーストラリアが国連安全保障理事会の常任・非常任双方のカテゴリー拡大を含め、同理事会その他の国連機関の代表性及び実効性の改善に向けた改革を実現すべく協力していくことを確認した。両首脳は、二国間、地域・国際機構で協力を継続していく。両首脳は、国際経済協力に関する第一のフォーラムとしてG20を強化するとともに、G20サミットにおいて、強固で持続可能かつ均衡ある成長のための枠組み及び価格変動を含め、世界の景気回復及び雇用創出を支えるために、G20サミットにおいて大きな成果を上げることが必要であることを確認した。両首脳は、EASへの米国及びロシアの来るべき参加を歓迎するとともに、本年のインドネシアにおける最初の拡大EAS会合を楽しみにしている。両首脳は、CEPEAを含む既存の優先課題を促進しつつ、政治、安全保障及び経済に関する議題の発展を支持するために、ASEAN及び他のEASメンバー国と協働することを確認した。両首脳は、アジア太平洋地域における持続的成長と繁栄に向け、自由で開かれた貿易及び投資というAPECの目標と横浜ビジョンを実現するために,本年特に規制協力、グリーン成長及び地域経済統合の分野で、具体的な行動をとることとした。

11.両首脳は、気候変動に立ち向かい、人間の安全保障を促進するため貧困を緩和し、核軍縮・不拡散を前進させるために共に協力を継続していくことを確認した。