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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第二十八回日豪経済合同委員会会議の開会式における海部内閣総理大臣の祝辞

[場所] アデード
[年月日] 1990年10月22日
[出典] 海部演説集,300−301頁.
[備考] 
[全文]

 本日ここに日豪の経済界を代表される皆さま方が一堂に会され、第二十八回日豪経済合同委員会が開催されることを心からお喜び申し上げます。とりわけ、長い歴史を有する本委員会の会議が、この緑溢れる美しい都市、アデレードにおいて初めて開催されることは喜ばしい限りであります。最近多様な発展を遂げつつある日豪関係を象徴するかのように思え、感慨を新たにしております。

 私の総理就任以来、一年と少しが経過致しましたが、この間、国際社会の変化の速度は歴史に類例のないほどのものでした。自由、民主主義、市場経済という基本的価値観に立脚して、平和共存の世界を構築しようとする、この歴史的歩みは、日に日に力強さを増していると言えましょう。ドイツ統一はこれを象徴する成果であります。一方、中東において勃発した事態は、新たな国際秩序の模索の過程で生じた重大な試練であり、この克服のため、国際連合の理念の下に、全加盟国の協調的努力が求められています。

 このような国際情勢を背景として、私は先日来日されたホーク首相との間で、密度の濃い会談を行うことができました。我々は、日豪両国が、政治、経済、その他広範な分野において多くの目標と利害関係を共有していることを確認し、また、両国が、そのような共通の立場を踏まえて、アジア・大平洋地域、ひいては世界の平和と繁栄のため如何に行動し、如何に協力すべきかにつき、有意義な意見交換を行い、アジア・大平洋地域の南北に位置するアンカーとしての両国の役割の重要性を含め、多くの点で意見の一致を見ました。

 日豪関係は多様な分野において順調に発展しています。これまで両国関係の土台をなしてきた貿易経済関係も、この発展の例外ではありません。現在進行しつつある日本の高度技術・情報化社会への移行と、豪州の経済構造の多様化は、両国の経済関係に新たな協力の機会をもたらすでありましょう。それは、日豪両国がお互いの長所を十分に活用して、相互の経済発展に寄与し合うものでなくてはなりません。ここアデレードに建設が予定されているマルチファンクションポリスもその一例であります。こうした協力を通じて、日豪両国に揺るぎない信頼関係が築き上げられると申し上げても過言ではないでしょう。

 私は、日豪関係の将来を展望する時、その過去に想いをはせないわけにはまいりません。それは我々の諸先輩が積み重ねてきた努力の結晶であります。その強固な基盤を作り上げてきた道のりで、既に四半世紀を超える長きにわたり、本委員会が、日豪財界人の真剣な議論の場となってきたことは、如何に高く評価しようとも評価しすぎということはありません。その意味で、今次委員会においても胸襟を開いた活発な意見交換がなされることを期待して止みません。会合のご成功と貴委員会の一層のご発展を衷心より祈念致します。