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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 三木内閣総理大臣によるロバート・マルドゥーン首相(ニュージーランド)歓迎晩餐会における挨拶

[場所] 
[年月日] 1976年4月22日
[出典] 三木内閣総理大臣演説集,172−173頁.
[備考] 
[全文]

 ロバート・マルドゥーン首相閣下、ダンカン・マッキンタイア農漁業大臣閣下並びに御列席の皆様

 この度ニュー・ジーランドから、ロバート・マルドゥーン首相閣下及び同令夫人、並びに随行のダンカン・マッキンタイア農漁業大臣及び同令夫人他御一行をお迎えし、今夕歓迎の晩餐会を開くことができましたことは、私の大きな喜びであり、かつ、光栄とするところであります。私はここに日本国政府及び国民を代表し、心から歓迎の意を表するものであります。

 ニュー・ジーランドは、美しい自然に恵まれた環境の下に、充実した社会福祉制度をもつ安定した国として、広くわが国民の間に非常に親しみをもたれている国であります。私も、かねて生涯設計計画という構想を持っており、福祉の充実を含め国民生活の質的、精神的な豊かさを追求することを念願としています。両国はそれぞれ当面する諸課題をかかえていますが、貴国が世界諸国にさきがけて、自由で生きがいのある安定した社会を築き上げておられることに対して、私は深い敬意を払うものであります。

 私は昨年二月にも、マルドヮーン閣下と会談する機会がありましたが、今回はここに首相としてお迎えし、本日午後両国が関心をもつ多くの問題につき忌憚のない意見の交換を行いました。

 皆様も御承知のとおり、わが国とニュー・ジーランドは、現在極めて緊密な紐帯に結ばれております。両国の産業構造の相互補完性を背景として、両国の経済貿易関係は順調に進展して参りましたが、今後とも長期的にみて更に拡大発展すべき多くの可能性があると信じます。われわれはそれに向って建設的な協力を続けていくべきであると思います。

 また、文化・教育等の分野においても両国民間の交流は活発に行われており、相互理解と信頼の増進に大きく寄与しています。

 更に、両国はアジア・太平洋地域の南北に位置する友邦であり、民主主義に対する同じ信条をもつパートナーとして、この地域の平和と安定のために、今後一層緊密な協力を続けてゆかなければならず、またそれができる分野が大きいと考えます。

 私は先日閣下の自叙伝の抄訳を拝見し、閣下の議会人としての衿持、問題に対する簡明・率直な態度に、同じく政治にたずさわる者として大きな共感を覚えましたが、この度の閣下の御来訪を機会に、閣下を指導者に得たニュー・ジーランドとわが国の間の友好の絆が今後一層揺るぎないものとなることを確信するものであります。

 ここにマルドゥーン首相閣下及び同令今夫人の御健康を祝し、ニュー・ジーランドの発展と繁栄、ならびにわが国とニュー・ジーランドとの末永き友好を祈って杯を上げたいと思います。