データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 田中総理大臣のニュー・ジーランド訪問に際しての日本・ニュー・ジーランド共同新聞発表

[場所] ウエリントン
[年月日] 1974年10月31日
[出典] 外交青書19号,87−89頁.
[備考] 仮訳
[全文]

1. 田中角栄日本国総理大臣は,ニュー・ジーランド政府の賓客として1974年10月28日から31日までの日程でニュー・ジーランドを公式訪問中である。ウエリントンにおいて,田中総理大臣は,10月29日及び30日,W・E・ローリング,ニュー・ジーランド首相と会談し,また,同総理大臣のために催された公式午餐会に出席した。田中総理大臣は,10月30日にネピアを訪問し,多くのニュー・ジーランド産業界及び実業界の指導者と会うほか,日本・ニュー・ジーランド産業協力の実例の一つであるパルプ製紙工場を視察する予定である。田中総理大臣はその後ロトルアを訪問し,10月31日オークランドから出発する。

2. 両国首相は,緊密かつ実りある関係が日本とニュー・ジーランドとの間に発展して来たことに喜びの念を表明した。

 両者の会談は,両国関係のあらゆる分野において明白に表われている友好と理解の精神の下に行われた。

 両者は,近年あらゆるレベルでの対話が両国関係の強化及び多角化に役立つてきたことを満足の意をもつて留意した。

 両者は,共通の関心分野において,協力及び協議関係のためのあらゆる機会を作り出すとの決意を再確認した。

3. 両国首相は,両国にとつて直接関心のある2国間事項を含め,相互に関心のある広範囲な問題について意見を交換した。両者は,アジア・太平洋地域の平和と発展に影響をおよぼす諸問題に特に注意を払つた。両者は,この地域に未だに不安定及び不確定要因が存在することに留意し,全ての関係諸国間の協議の継続的な進展により,情勢が改善されるであろうことに合意した。両国首相は,この地域の一部において既に確立されている協力の慣行を歓迎した。両者は,東南アジア開発閣僚会議において達成されている進展に満足の意をもつて留意した。両者は,また,東南アジア諸国連合及び南太平洋フォーラムの加盟国によつてなされた進展を歓迎した。

4. 両国首相は,軍縮,特に核軍縮に関する両国の深い掛り合いを想起した。両国首相は,核の分野における最近の動きに対し,深い憂慮の念を表明した。両国首相は,すべての核実験に対する反対を再確認するとともに,核兵器保有国にならないとの両国政府の決意を確認した。

   両国首相は,具体的な軍縮措置の必要性が従来にもまして緊急となつていることに合意した。両者は,核実験のテンポが早まつていることに対して深甚なる憂慮の念を表明し,完全に包括的な核実験禁止の目的を達成する条約の早期締結のために両国政府が努力する旨述べた。両者は,核実験が,全世界の環境を汚染し,人類及び資源を不当な危険にさらすような方法で継続されていることに憂慮の念を表明した。両者は,厳格かつ国際的に広く受け入れられる保障措置を含むその他の国際的措置が,核兵器及びその他の核爆発装置の一層の拡散を阻止するために早急にとられるべきことを希望した。この点に関連して,両者は,核兵器国の特別な責任を強調した。

5. 両国首相は,また,世界経済の現状について検討し,これが,異常な緊張状態に置かれていることに留意した。両国首相は,世界的性格をもつた経済問題に対処するための国際的な協力行動を支持することを表明した。両者は,より良き国際経済関係の確立を目的として,貿易,エネルギー及び国際通貨の分野において多角的枠組みの中で現在進められている討議を成功裡に完了させることを重要視していることを再確認した。

6. 2国間経済問題に関し,両国首相は,特に関心のある産品の貿易を一層促進する方策に特に注意を払つた。両者は,両国間の年間貿易のレベルが5億ニュー・ジーランド・ドルに達していることに留意するとともに,相互に利益となる貿易の機会が一層拡大することを期待した。ローリング首相は,ニュー・ジーランドの農産物に対する日本市場の重要性を強調した。最近の牛肉貿易の中断はニュー・ジーランドにおいて懸念を生じさせたが,長期的には,農産物貿易増加の見通しは有望である。両国首相は,その他の分野と同様に貿易の分野においても,相互信頼と継続性の基礎に立つた成熟した長期的な関係を樹立することが,両国の利益にかなうものであることに同意した。

7. 経済関係の全般的な方向及び発展につき継続的な検討を行うとともに,相互の関心事項に関して時宜を得た情報を提供するために,両国首相は,より定期的な,かつ,高いレベルでの協議が価値あるものであることに合意した。

8. 両国首相は,本年10月東京において開催された第1回日本・ニュー・ジーランド経済人会議の成果を歓迎するとともに,同会議における率直かつ友好的な意見交換が,両国間のより緊密な関係の発展に資するであろうことに留意した。

9. 両国首相は,民間航空に関する問題について意見を交換した。両者は,両国の航空企業の間で既に行われた直通の航空業務の開始についての討議に留意して,この分野における一層の協力が両国関係を強化するために有益であることを考慮した。

10. 両国首相は,政府及び公的なレベルにおける接触が,両国間のきずなを強化してきたことに満足の意をもつて留意した。両者は,文化及び教育の分野におけるより緊密な交流が,一層深い相互理解の発展にさらに資するものであり,また,かかる交流が奨励されるべきであるとの確信を再確認した。よつて,両者は,両国間の交流,例えば,教員,学者,学生及び公演団体等の交流を一層促進するために,両国政府が,資金を分担する文化及び教育の分野の「交流計画」を創設する意向を表明した。

11. 両国首相は,科学技術の分野において頻繁な交流がおこなわれていることに満足の意を表明した。両国首相は,このような交流を促進することの価値を認識するとともに,漁業調査の分野における協力を促進することに合意した。

12. 田中総理大臣は,ローリング首相に対し,近い将来訪日するようにとの日本国政府の招待を行つた。ローリング首相は,右招待を喜んで受諾した。

13. 田中総理大臣は,ニュー・ジーランド滞在中に田中総理大臣およびその一行に寄せられた暖かい歓迎ともてなしに対し,衷心より感謝の意を表明した。