データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ダグラス・アンソニー・オーストラリア連邦副首相兼貿易産業大臣の日本公式訪問に際しての共同コミュニケ

[場所] 東京
[年月日] 1971年6月1日
[出典] 外交青書16号,448−449頁.
[備考] 仮訳
[全文]

 1.J・ダグラス・アンソニー・オーストラリア連邦副首相兼貿易産業大臣夫妻は,日本国政府の招待により,1971年5月25日から6月1日まで,日本国を公式に訪問した。同夫妻には,ダグラス・H・マカイ貿易産業省次官夫妻,ウィリアム・A・マッキノン同省副次官,グラハム・マグレガー同省アジア部長及びバリー・ヴァーチュー新聞係秘書が随員として同行した。

 2.アンソニー副首相夫妻は,滞在中,5月28日皇居において,天皇・皇后両陛下に謁見を賜わつた。

 同副首相夫妻は,同日,三笠宮・同妃両殿下を三笠宮邸にお訪ねした。

 3.同副首相は,5月28日,佐藤栄作総理大臣を表敬訪問した。総理及び副首相は,会談において,両国が共通の関心を有する広範囲の問題につき,卒直かつ有益な意見交換を行なつた。討議は,もつとも友好的な雰囲気の中に行なわれ,個人的接触が,両国間及び両国民間に存在している友好関係と相互理解とを一層増進する上に有益であることを確認した。

 4.アンソニー副首相は,5月26日及び31日の両日,愛知揆一外務大臣と会談を行なつた。会談は,日本国及びオーストラリア連邦の両国にとつて相互に関心のある多くの重要な問題にわたつて行なわれた。両大臣は,また,両国間のきずなを強化することが,たんに両国にとつて最も重要であるのみならず,両国が位置するアジア・太平洋地域の安定と繁栄にとつても不可欠であるとの信念を有していることについても一致した。

 この両日の会談を終えるにあたり,関係各省の閣僚レベルの合同委員会を設置すべきことが合意された。同委員会は,国間及び多数国間の貿易及び関連事項について,また,両国間の貿易及び経済関係に関する両国の共通関心事項であつて,今後必要と考えられるその他の問題について,意見を交換し,かつ,協議を行なうことを目的とするものである。

 5.副首相は,福田赳夫大蔵大臣,倉石忠雄農林大臣及び宮沢喜一通商産業大臣を訪問し,相互に関心のある各般の問題について意見の交換を行なつた。これらの大臣との会談がいずれももつとも友好的に,かつ,打ちとけて行なわれたことは,日本国とオーストラリア連邦とが相互に深い信義と信頼のきづなで結ばれていることを示すものであつた。

 6.副首相は,滞日中,東京及び大阪において,多数の実業界及び金融界の代表的指導者と懇談した。

 7.アンソニー副首相は,また,大阪及び京都を含む関西地方を訪れた。副首相夫妻は,東京及び関西滞在中,電子工学,造船及び公共通信放送の分野における数多くの産業施設を視察するとともに,さらに,歴史的関心のある仏閣,城郭及び庭園をも訪れた。これらの訪問により,副首相夫妻は,日本及びその文化の多くの分野に親しく接する機会を得た。

 8.副首相は,同副首相夫妻及び随員一行が滞日中極めて暖かい歓迎を受けたことに対し,日本国政府及び日本国民への深い感謝の意を表明した。