データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 池田総理大臣とホリオーク首相との共同声明

[場所] 
[年月日] 1963年10月5日
[出典] 外交青書8号,26−27頁.
[備考] 
[全文]

 池田日本国総理大臣は夫人を伴いニュー・ジーランド政府の招待により一九六三年十月三日から五日までニュー・ジーランド政府の賓客としてニュー・ジーランドを訪問した。

 池田首相はニュー・ジーランド滞在中ホリオーク首相兼外相及びマーシャル副首相兼海外貿易相と会談した。これらの会談はもっとも友好的雰囲気のうちに進められ、両国が共通の関心を有する国際問題及び日本・ニュー・ジーランド間の友好関係の増進につき率直な意見の交換が行なわれた。また池田首相はノードマイヤー労働党首と会談した。

 両首相は日本及びニュー・ジーランド両国がアジア及び太平洋の情勢に対処するに当って多くの利害と目的とを共にすることを認め、就中両首相はこれらの地域における平和と経済発展とを促進すること、そしてその目的のために両国相互間の、また他の関係諸国との間の協力を拡大することに関心を示した。更に両首相は平和及び国際問題解決のための機構として国連が有する重要性を認めた。

 両首相は部分的核実験禁止条約が最近締結され両国がその署名国となったことに満足の意を表明した。しかし両首相は本条約が全ての国によって受入れられるまでは人類の環境を汚染する核実験が今後も行われるかもしれないとの見通しに対し引続き重大なる懸念を感ぜざるを得ないことを認め、また適当な国際的監視及び管理のもとにいかなる場合にも核実験を禁止する包括的条約を含む有効な一般軍縮措置に向って前進することが必要であると認めた。

 両首相は両国が共通の関心を有する国際情勢を検討し両国がマレイシアの結成を歓迎するものであることを認め現在の情勢に深い関心を示すと共に、問題が近く満足な解決を見ることを希望することに意見の一致を見た。

 両首相は日本・ニュー・ジーランド両国間の政治、経済及び文化関係が近年非常な発展をとげていることを喜ぶと共に一九五八年の通商協定締結以来両国間の貿易が著しく増大していること、また一九六二年三月の通商協定改正議定書の締結が両国間の貿易促進のために有益な措置であったことに満足の意を表明した。両首相は両国相互の利益のため貿易の堅実な拡大を維持するに適当な今後の方策を決定することを目的として両国政府及び担当官の間で常時現状の検討を行うべきことに意見の一致を見た。

 両首相は更に両国間の人的接触及び文化交流がますます増大していることに満足の意を表し両国政府は今後これらの発展を促進するため一層の努力を払うべきことに意見の一致を見た。

 両首相は今回の池田首相のニュー・ジーランド訪問が両国の相互理解と友好関係の増進に極めて有益であったことを認め、今後両国政府はあらゆる経路を通じて相互に出来る限り密接な接触を保つべきことに意見の一致を見た。