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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] オーストラリアの対日GATT35条援用撤回に関する外務省情文局発表,オーストラリアの対日ガット三十五条,援用撤回について

[場所] 
[年月日] 1963年8月5日
[出典] 日本外交主要文書・年表(2),468頁.
[備考] 
[全文]

一、オーストラリアの対日ガット三十五条援用撤回および日豪通商協定改正のための交渉は、昨年十一月からキャンベラで、太田駐豪大使とカーモディ豪商工副次官との間で行なわれていたが、マッキュアン豪副首相兼貿易相の来日の機会に両国政府の間で最終的な意見の一致をみ、八月五日外務省で、福田外務大臣臨時代理とマッキュアン副首相およびマッキンタイヤ駐日豪大使は、通商協定改正議定書と合意議事録に署名し、またオーストラリアはこの議定書発効とともに日本に対するガット三十五条の援用を撤回する旨の書簡を交換した。議定書は批准書交換の日に発効することになつているが、署名と同時に行政府の範囲内で議定書および合意議事録に盛られている了解を暫定的に実施することとした。

二、議定書はオーストラリアの対日ガット三十五条援用撤回に伴ない、現行通商協定に所要の修正を加えたもので、市場こう乱の際の一方的輸入制限規定であるいわゆるセーフガード条項を削除することとしている。新通商協定はこの議定書の発効後三年間有効であるが、その後もいずれか一方が廃棄の通告をしない限り自動的に延長されることとなつている。

三、合意議事録では両国が現行の輸入自由化水準を維持すべく努力することを謳つたほか、日本側が小麦、大麦、羊毛などオーストラリアの対日輸出関心品目について輸入拡大に努力し、一方オーストラリアは暫定的輸入制限措置を最低限度に止め、その実施に先だち日本側と十分協議することなどを約束している。

四、オーストラリアがわが国に対するガット三十五条の援用を無条件に(セーフガードおよびセンシティヴァイテムなしに)撤回することになつたことは、両国の通商経済関係の安定と発展に役立つところが大きいばかりでなく、英国、フランス、ベネルックスに引続き、これで主要な貿易国のすべてが対日ガット三十五条援用を撤回することになつたという点できわめて意義が深い。