データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 通商に関する日本国とニュー・ジーランドとの間の協定

[場所] ウエリントン
[年月日] 1958年9月9日
[出典] 外交青書3号,208−211頁.
[備考] 
[全文]

 日本国政府及びニュー・ジーランド政府は、両国間の貿易及び通商を両国相互の利益となるように増大し、及び容易にすることを希望して、次のとおり協定した。

  第一条

1 各国政府は、輸入若しくは輸出について若しくはそれらに関連して課され、又は輸入品若しくは輸出品のための支払手段の国際的移転について課されるすべての種類の関税及び課徴金に関する事項、それらの関税及び課徴金の賦課の方法に関する事項、輸入又は輸出に関連する規則及び手続に関する事項、すべての内国税その他すべての種類の内国課徴金に関する事項並びに自国内における輸入貨物の販売、販売のための提供、購入、分配又は使用に影響を及ぼすすべての法令及び要件に関する事項のすべてについて、他方の国に無条件の最恵国待遇を与えなければならない。

2 したがつて、いずれか一方の国の産品で他方の国に輸入されるものには、前項に掲げる事項について、いずれかの第三国の同様の産品に課されているか又は将来課される関税、内国税又は課徴金より一層高額の関税、内国税又は課徴金が課されることはなく、また、同産品に適用されているか又は将来適用される規則又は手続より一層厳重な規則又は手続が適用されることはない。

3 同様に、いずれか一方の国から輸出され、かつ、他方の国に仕向けられる産品には、1に掲げる事項について、同様の産品がいずれかの第3国に仕向けられる場合に課されているか又は将来課される関税、内国税又は課徴金より一層高額の関税、内国税又は課徴金が課されることはなく、また、同産品に同様の場合に適用されているか又は将来適用される規則又は手続より一層厳重な規則又は手続が適用されることはない。

4 1に掲げる事項についていずれか一方の国の政府がいずれかの第三国を原産地とする産品又はいずれかの第三国に仕向けられる産品に対して与えているか又は将来与えるすべての利益、特典、特権又は免除は、他方の国を原産地とする同様の産品又は他方の国に仕向けられる同様の産品に対し、即時に、かつ、無条件で与えられるものとする。

5 この条の最恵国待遇に関する規定は、日本国政府に対し、ニュー・ジーランド政府が英連邦のいずれかの構成国(その属領を含む。)又はアイルランド共和国にいずれかの時に与えるいかなる特恵又は利益の享受をも要求する権利を与えるものではない。

  第二条

1 いずれの一方の国の政府も、他方の国のすべての産品の輸入に対し、又は他方の国に仕向けられるすべての産品の輸出若しくは輸出のための販売に対し、割当によると、輸入又は輸出の許可によると、その他の措置によるとを問わず、いかなる禁止又は制限も新設し、又は維持してはならない。ただし、すべての第三国の同様の産品の輸入又はすべての第三国への同様の産品の輸出若しくは輸出のための販売が同様に禁止され、又は制限されている場合は、この限りでない。

2 各国政府は、他方の国に対し、貨物の輸入及び輸出を伴う取引に影響を及ぼす外国為替の割当と外国為替制限の実施とに関するすべての事項につき、無条件の最恵国待遇を与えることを約束する。

3 前二項の規定にかかわらず、各政府は、自国の対外財政状態及び国際収支を擁護するため必要な措置を執ることができる。

  第三条

1 各国政府は、所在地のいかんを問わず国家企業を設立し、若しくは維持し、又はいずれかの企業に対して排他的の若しくは特別の特権を正式に若しくは事実上与えるときは、それらの企業を、輸入又は輸出を伴う購入又は販売に際し、この協定で定める非差別的待遇の原則に合致する方法で行動させることを約束する。この目的のため、それらの企業は、この協定の規定に従うことを条件として、すべての購入又は販売を商業上考慮される事項(価格、品質、入手可能性、市場性、運送その他購入又は販売の条件をいう。)に従つてのみ行わなければならず、また他方の国の企業に対し、前記の購入又は販売に参加するために競争する適当な機会を通常の商慣行に従つて与えなければならない。

2 いずれの一方の政府も、その管轄の下にある企業(前項に定める種類の企業であるかどうかを問わない。)が前項の原則に従つて行動することを妨げてはならない。

3 前二項の規定は、再販売するため又は販売のための貨物の生産に使用するためではなく直接に又は最終的に政府用として消費する産品の輸入には、適用しない。各国政府は、そのような輸入に関しては、他方の国の貿易に対して公正かつ衡平な待遇を与えなければならない。

  第四条

1 この協定の規定は、いずれの一方の国の貿易に対しても、他方の国の政府が関税及び貿易に関する一般協定を適用する国の貿易に対し同政府が与える権利のある待遇又は与える義務のある待遇より有利な待遇を与えるものと解してはならない。両政府は、できる限り、かつ、両政府間で随時合意されるところに従い、この協定に規定されていない事項に関し、両国間の通商関係を関税及び貿易に関する一般協定の規定に基かせるようにしなければならない。

2 この協定の規定又はこの協定の規定に基いて執られる措置は、関税及び貿易に関する一般協定第三十五条の規定に基くいずれの一方の政府の権利にも影響を及ぼすものでなく、また、関税及び貿易に関する一般協定の適用に関する両国間の交渉におけるいずれの一方の政府の自由をも損ずるものではない。

  第五条

1 この協定の結果相互の貿易が増大することは、両政府の期待するところである。さらに、この貿易の拡大は、日本国又はニュー・ジーランドの国内生産者に対し重大な損害を与えることなく、又は与えるおそれなく、達成されることが期待される。もつとも、予見されなかつた事態の発展の結果、いずれか一方の国の政府が、いずれかの産品がその国の同様の産品又は直接的競争産品の生産者に重大な損害を与え、又は与えるおそれがある条件で他方の国から輸入されていると認めるときは、その政府は、その産品については、その損害を防止し、又は救済するため必要な限度で及び必要な期間、この協定に基く義務を停止することができる。

2 いずれの一方の政府も、前項の規定に従つて措置を執るに先だち、できる限りすみやかに書面により他方の政府に通告しなければならず、また、その執ろうとする措置について事情の許す限り十分に自己と協議する機会を他方の政府に与えなければならない。

3 いずれか一方の政府が、この協定の目的の達成が著しく阻害されると他方の政府が認めるほど多くの産品の数又は貿易の量に影響を及ぼす措置をこの条の規定に基いて執る必要があると認める場合には、その利益に悪影響を受けると考える政府は、それまでに発展した事態(執られる措置を含む。)について他方の政府に対し協議を行うことを要請することができ、また、相互に満足すべき解決に到達しなかつたときは、措置が執られた日から二箇月後に、なんらの解決もできる見込がないことが合意されたときは、それより早い日に、この協定の条項についての再交渉を書面により要請することができる。その再交渉は、書面による再交渉の要請が行われた日の後できる限りすみやかに開始しなければならない。書面による再交渉の要請が行われた日から二箇月以内に相互に満足すべき解決に到達しなかつた場合には、再交渉を要請した政府は、他方の政府に対し、この協定を終了させる意思を書面により通告することができる。

  第六条

1 各政府は、他方の政府がこの協定の運用から生ずる問題に関して行う申入に対して好意的考慮を払わなければならず、また、協議のため適当な機会を他方の政府に与えなければならない。

2 この協定の運用に関する協議は、いかなる場合にも、毎年行わなければならない。

  第七条

1 この協定は、各政府により批准されなければならず、批准書の交換の日に効力を生ずる。批准書の交換は、できる限りすみやかに東京で行うものとする。

2 千九百六十一年七月八日の後はいつでも、いずれの一方の政府も、他方の政府に対し、この協定を終了させる意思を書面により通告することができる。

3 この協定は、いずれか一方の政府が、他方の政府から、前項の規定又は第五条3の規定に従つてこの協定を終了させる意思の書面による通告を受領した日から三箇月後に終了する。

 以上の証拠として、このために正当に委任された両政府の代表者はこの協定に署名した。

 千九百五十八年九月九日にウエリントンで、ひとしく正文である日本語及び英語により本書二通を作成した。

 日本国政府のために        島津久大

 ニュー・ジーランド政府のために  W・ナッシュ