データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日本国とモンゴル国との共同声明

[場所] 日本
[年月日] 2003年12月4日
[出典] 外務省
[備考] 
[全文]

 ナツァギーン・バガバンディ・モンゴル国大統領は、日本政府の公式実務訪問賓客として日本国を訪問し、小泉純一郎日本国総理大臣と会談を行った。ナツァギーン・バガバンディ・モンゴル国大統領の日本国公式訪問に際し、日本国とモンゴル国は以下のとおり発表する。

1. 日本側とモンゴル側(以下、「双方」という。)は、1998年5月にバガバンディ大統領がモンゴル国大統領として初めて訪日した際に発表した「日本国とモンゴル国との間の友好と協力に関する共同声明」(以下、「98年の共同声明」という。)において表明されている双方が準拠すべき理念及び原則を改めて確認した。双方は、「98年の共同声明」において両国の目標として確認された「総合的パートナーシップ」が、この間順調に進展し、具体的な成果を上げているとの認識で一致するとともに、今後、同パートナーシップを経済、文化、教育、人的交流等の二国間関係及び地域・国際社会における協力等において更に発展させるために協力していくことで一致した。

2. モンゴル側は、先に11月19ー21日、東京で開催されたモンゴル支援国会合の開催に当たり日本国が果たした役割に謝意を表明するとともに、日本国の経済協力が、モンゴル国が市場経済化・民主化への移行期の困難を克服する上で決定的な役割を果たしてきたことを評価し、モンゴル国民を代表し、深甚なる感謝の意を表明した。双方は、今後、両国の経済関係、協力関係を発展させる上で、モンゴル国の経済発展の基盤の一つであるインフラ整備に加え、マクロ経済の健全な運営、公的セクターの効率化のための制度強化、人材育成、貧困削減を含む社会開発、環境保全等を通じて、持続可能な経済成長に向けたモンゴルの自助努力を日本が支援していくことが重要であるとの認識で一致した。また、双方は、経済協力において実施されている事業を迅速に実施する上で重要な意義のある技術協力協定が両国政府の間で締結されるに至ったことについて満足の意を表明した。モンゴル側は、両国の政府間の経済協力を今後互恵的経済関係の実現につなげたいと希望している旨表明した。双方は、2002年に発効した投資保護協定は、貿易や投資の拡大を計る上で意義を有するものとの認識で一致した。また、モンゴル側は、経済関係強化の環境整備として、租税条約の締結が課題である旨述べた。

3. 日本側は、青年交流が総合的パートナーシップの強化に重要な意義を有するとの観点から、「98年の共同声明」において発表した、3年間で500名の青年の受入れが達成されたことを通報するとともに、2004年からの3年間の間にモンゴル青年500名を新たに受け入れる用意があることを表明した。また、モンゴル側の要請に基づき、日本側は、モンゴルにおける人材強化の観点から、留学生支援無償を継続する方針であることを表明した。モンゴル側は、かかる日本政府のイニシアティブが両国の目標とする「総合的パートナーシップ」の全面的発展を担う人材の育成にも資するものとして感謝の意を表明した。

4. 双方は、両国民の間に友好的な雰囲気が醸成され、スポーツ、文化、学術交流、NGO活動等幅広い分野で市民レベルの交流が着実に進展していることに満足の意を表明するとともに、両国民の間の相互理解を一層強化することが、ひいては両国の関係強化に資するとの認識で一致した。また、双方は、文化交流取極締結30周年に当たる明年、両国が協力し、可能な範囲で多様な文化行事を企画実施することは、かかる観点から極めて意義があるとの認識で一致した。

5. 双方は、昨今の国際情勢にかんがみ、国連、特に安全保障理事会が、その役割を十分に果たし得るよう機能を強化することが急務であるとの認識を共有し、安全保障理事会の常任・非常任議席双方の拡大を伴った形で改革が実現するよう、引き続き積極的に協力することを改めて表明した。モンゴル側は、日本国政府が地域及び国際の平和と安定のために果たしている役割を評価するとともに、日本国が安全保障理事会の常任理事国となることへの支持を改めて表明した。日本側は、モンゴル政府の国際場裡における日本国政府への協力に対し謝意を表明した。また、双方は、国連及び国際機関の活動の分野で今後とも密接な協力関係を発展させることで合意した。

6. 双方は、国際テロリズムの脅威が拡大していることに懸念を表明し、最近発生したテロ行為を断固として非難した。双方は、国際テロリズムとの闘争は国際社会が直面する緊急な課題となっていることを強調し、あらゆるテロリズムと一致協力して戦うことが重要であるとの認識で一致した。

7. 日本側は、日朝平壌宣言に基づき、北東アジア地域の平和と安全に資するような形で、核・ミサイル問題等の安全保障上の問題及び拉致問題といった未解決の諸問題を包括的に解決し、北朝鮮との国交正常化を実現するという、日本国政府の基本的立場を説明し、モンゴル側は右に対する理解を表明した。双方は、朝鮮半島の非核化を支持し、同半島の平和と安定を確保し、北朝鮮の核開発計画に関する問題を六者会合のプロセスの継続を含む対話により平和的に解決する必要があるとの認識で一致した。

8. 双方は、ASEAN地域フォーラム(ARF)における両国の積極的な協力関係は、 ARFの活動を一層強化することに資するとの認識で一致した。

9. 日本側は、モンゴル側に要請していたノモンハン事件戦没者の遺骨収集の実施及び戦後抑留者の個人情報の提供について、モンゴル側が前向きに決定し、関連する資料の一部を今回日本側に提供したことは、進展しつつある日本国とモンゴル国との間の良好な関係を反映するものとして謝意を表明した。