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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日本・パレスチナ首脳会談後の共同記者会見

[場所] 首相官邸
[年月日] 2005年5月16日
[出典] 首相官邸
[備考] 
[全文]

【小泉総理冒頭発言】

 本日、アッバース大統領と初めて会談いたしましたが、中東和平プロセス前進に向けた歴史的な機会が到来している中での訪日であり、会談であり、極めて有意義だと思います。

 中東の平和と安定、これは世界は無関心ではいられません。この中東和平は、世界の安定、繁栄に直結しておりますので、日本としてもロードマップに沿ったイスラエル、パレスチナ、2つの国家の平和共存の実現にできる限りの支援をしていきたいと思っております。

 今日の会談で、アッバース大統領が和平に向けた実現に対して強い決意、もろもろの改革、特に治安の維持、こういう困難な問題に真剣に取り組んで、具体的な成果を今までも着実に上げてきたと、これからも、治安の安定と政治改革に真剣に取り組みたいという決意を伺いまして、高く評価しております。

 国際社会が一致して、アッバース大統領の和平実現に向けた努力を支援することが重要であるということを改めて感じました。我が国も、限りがありますが、国際社会の一員としての責任を果たすべく、積極的な中東和平実現、イスラエル、パレスチナ両国間の平和共存に向けた努力を、これからも真剣に考えていきたいと。

 当面、ガザ撤退も踏まえ、総額1億ドル程度のパレスチナ支援を実施する方針であることを表明いたしました。

 また、近い将来、イスラエルのシャロン首相も訪日の意向であるということを伺っております。日本としては、パレスチナ、イスラエル両国に偏ることなく、両国の平和共存に向けた努力を積極的にしていきたいと思っております。

 また、私に対しても、パレスチナ訪問の招待をいただきましたけども、できるだけ近い機会にできれば訪問したいと思っております。

 アッバース大統領の大統領としての初めての日本訪問を、心から歓迎したいと思います。

【アッバース大統領冒頭発言】

 まず最初に、今回、御招待いただきました小泉総理に感謝申し上げたいと思います。更に、総理の個人的な努力、日本政府の努力、イスラエル、パレスチナの和平に向けた努力に謝意を表明いたします。

 さらに、今、総理から説明がありました経済支援につきまして、深く謝意を表明したいと思います。

 今日の総理との会談は、非常に成果のある建設的なものでした。これを通じて、私は日本政府が和平プロセスをいかに前進させていくかについて話し合うことができました。

 私の方からは、パレスチナ側の約束の履行状況、特にロードマップ、シャルム・エル・シェイク合意に関する履行状況について説明しました。

 本日、イラクで行方不明となっております日本人の件につきまして、深い遺憾の念を表しました。パレスチナ人も1人拘束されていますが、こういった行為は完全に拒否されるべきものでありまして、釈放、解決のためにいかなる支援も提供するよう、私は呼びかけたいと思います。

 これから、パレスチナでは立法評議会、地方で選挙が行われていきますが、我々は法治主義を貫徹するための治安体制の構築に取り組んでおります。法治主義とは、すべての者に対して法律が平等に適用されるということでございまして、1つの権限主体、そして1つの合法的な武器、そして民主的な多元性、これを意味します。

 我々は、シャルム・エル・シェイクの了解事項、そしてイスラエルによるガザ撤退に関して、イスラエル・パレスチナの間で調整すべきこと、それがロードマップの一部であるべきことについて話し合いました。

 我々は、ここでイスラエルが分離壁、それから入植活動を停止する必要があるということを確認します。

 我々は、このパレスチナ問題が一刻も早く政治的な解決を見るように希望しておりまして、これが中東の安定、そして包括的な解決につながると思います。

 もう一度、日本がこれまでに行っていただいた支援について謝意を表明いたします。日本の支援は、パレスチナ経済の発展に大きく貢献しました。

 最後に、小泉総理がパレスチナを適当な時期と御判断されるときに訪問されることを希望いたします。

【質疑応答】

【質問】 アッバース議長に、2点伺います。

 イスラエルとの和平を進めていく上で、やはりイスラム原理主義組織ハマスなどの過激な行動を、どう抑え込むかということが最大の課題になるんだと思います。この過激派の行動を抑え込むために、どういう取り組みをしていくお考えか。

 もう一つは、今後のパレスチナの民主化プロセスを進めて、経済復興を実現するために、日本政府に具体的にどういう支援を望まれますか。お考えをお聞かせください。

【アッバース大統領】 ハマスがイスラエルとの停戦を受け入れ、今後の地方選挙や立法評議会の選挙に参加していくこと、このような変化がパレスチナの政治的な取組み、そして多元的な民主主義にとって大事なことだと思います。ハマスは我々にとって脅威ではありません。日本は、経済的に非常に重要な支援をパレスチナに対して行っており、本日さらなる支援の表明があったわけでございますけれども、これに加えて政治的な影響力も行使していただきたいと思います。日本は、地域の国々とバランスの取れた関係を持っておりますので、それができると思います。

【質問】 イスラエルのシャロン首相がガザからの撤退延期の発表をいたしました。これがどういう影響を、すなわち国連の安全保障理事会の決定にどういう影響を与えるでしょうか。

 また、日本はパレスチナに対して支援をして、イスラエルが国連の決議を履行することを助けることができるでしょうか。

【アッバース大統領】 先ほど申し上げましたように、日本は大きな役割を果たせると思います。バランスの取れた役割を果たせると思います。

 イスラエルによるガザ及び西岸北部一部からの撤退につきましては、イスラエルによる一方的な措置でした。

 シャロン首相は3週間の撤退の延期を宗教的な理由により表明しましたけれども、これは撤退を本質的に変えるものではないと思います。

【質問】 小泉総理大臣に質問します。今回、日本政府はアッバース議長、そして今後シャロン首相とパレスチナ、イスラエルの首脳を順次招きます。これによって総理は、中東和平プロセスがどのように前進するとお考えでしょうか。

 また、日本政府として中東和平プロセスにどのような、ならではの貢献ができるとお考えでしょうか。お聞かせください。

【小泉総理】 シャロン首相が近く日本を訪問する予定でありますが、日本としては、今日、アッバース大統領に働きかけた同じ提案、すなわちロードマップに従って、パレスチナ、イスラエルの平和共存、これに向けて両者が和解の努力を進めるべく、どのような支援ができるか、これを真剣に今まで検討してまいりました。

 日本としては、パレスチナ、イスラエルに偏ることなく、力は一部限界であるということは承知しておりますけれども、日本としてもできることも多々あると思っております。今日、そういう中でアッバース大統領と具体的なパレスチナの発展のための協力について話し合いましたけれども、こういう問題につきましても、今後具体的に支援プログラムを実現していくために、本年度中にパレスチナとの間の閣僚級会議を東京で開催したいと思っております。

 将来、日本として中東の和平の問題は人ごとではありませんから、中東の平和というものが日本の発展のためには不可欠であると認識しておりますので、パレスチナとイスラエルの和平の実現のためには、今まで支援をしてきた実績を踏まえて、このようないい機会をとらえて、今後真剣に何ができるかを検討し、シャロン首相とも、これからもアッバース大統領とも具体的な支援問題について検討していきたいと。それで両国の首脳のみならず、各閣僚、事務当局と緊密な連携協力をしていきたいと思っております。

 そういう中で、日本の国際社会の平和と安定のために一定の役割を果たすことができるのではないかと思っております。

【質問】 小泉総理に伺います。

 日本は既に三者首脳会議を日本で開催することに興味をお持ちだということです。シャロン首相、アッバース大統領もともにということですが、これはガザ撤退の前にすることができるんでしょうか。

 それから、アッバース大統領は、日本が非常にバランスの取れた関係を中東と持っているとおっしゃいましたが、小泉総理のお考えでは、イラクに自衛隊を派遣をしたということによって、バランスが少し崩れたとはお思いにならないでしょうか。

【小泉総理】 まず、最後のイラクに自衛隊を派遣したことによって、日本の中東に対する支援にバランスを欠いたという指摘は全く当たらないと思います。イラクの安定した民主的な政権をつくるということに対しては、今、国際社会が一致して支援しております。そういう中で、日本が何ができるかということで、自衛隊を派遣して、人道支援、復興支援にいそしんでいるわけであります。

 そういう点から考えて、国際社会の平和と安定、イラクの安定的な民主的な政権づくりに自衛隊を派遣したことがバランスを欠いた支援という指摘は全く当たらないと思っております。

 それと、アッバース大統領とシャロン首相と私との三者会談についての御質問だと思いますが、この問題について、先ほどアッバース大統領との会談で、アッバース大統領はシャロン首相との会談、東京でできる機会があれば喜んで応じたいという話をいただきました。私も、もしもシャロン首相、アッバース大統領が日本で私と会談したいというんだったら、喜んでその場を設けたいと思っております。

 しかし、それがいつになるか、それはまだ今の段階で言うことはできませんし、いずれ近いうちにシャロン首相が日本を訪問されますし、私とも会談いたしますから、その際にそのような可能性があるかどうか、私からも聞いてみたいと思っております。

 いずれにしても、日本としては中東和平に無関心ではいられませんし、人ごとではありませんから、日本として何ができるか、今後も積極的にイスラエル、パレスチナ両国の平和国家実現に向けて、日本として何ができるかを考えながら、積極的に取り組んでいきたいと思っております。