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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ラマダーン・イラク第一副首相歓迎午餐会における鈴木内閣総理大臣の挨拶

[場所] 東京(首相官邸)
[年月日] 1981年1月23日
[出典] 鈴木演説集,248−249頁.
[備考] 
[全文]

 ラマダーン第一副首相閣下、アリ貿易大臣閣下及び御一行の皆様、この度の皆様の御訪日を心から歓迎致します。ラマダーン第一副首相閣下及びアリ大臣閣下は今回が初めての御訪日と伺っております。非常に短期間の御訪問で残念でございますが、この機会にわが国国情の一端なりとも御視察頂ければ幸いです。

 貴国は、古代メソポタミア文明発祥の地に位置し、中世においては絢爛たるイスラム・アラブ文化の中心地として栄えました。現在も多くの貴重な遺跡に恵まれ、往時の伝統を豊かに継承されていると承っております。

 このため従来より貴国に対するわが国の関心は極めて高いものがありますが、最近においても貴国のハムリン遺跡発掘にわが国の考古学者が協力し成果を挙げていると聞き、両国間の交流を一層促進するものとして喜ばしく思っております。さらに、貴国とわが国の古くからのつながりを示す証左として御紹介させて頂ければ、日本の織物の種類にカナキン及びモスリンという言葉があります。

 その語源は、実は貴国の二都市カナキン及びモースルに由来するものであり、その昔遥かシルク・ロードを経てこれらの織物はわが国に伝えられたことに由来するものと聞いております。

 こうした貴国とわが国との古代よりのつながりは、近年において種々の分野で一層緊密化しております。特に、この二、三年の両国間の要人交流は極めて活発なものがあり、誠に喜ばしい限りであります。

 私は、両国が経済面で相互補完性を踏まえ、今後、更に、より多方面にわたり建設的協力関係を構築していくことを強く望むものであります。

 現在、不幸にして、貴国とイランとの間に紛争が生じております。私は、この紛争が一日も早く平和理に解決されることを強く希望するものであります。わが国としても紛争解決のために努力を惜しむものではありません。

 貴国は、フセイン大統領閣下の英邁なる御指導の下、近年、中東地域のみならず、広く世界においてますます重要な地位を占めつつあります。私は、今後貴国が世界の平和と安定に大いに貢献されることを期待致します。

 最後に、フセイン大統領閣下、ラマダーン第一副首相閣下及び御一行の皆様の御健康、貴国の御繁栄、そして日本・イラク両国の旧来に倍する友好関係増進を祈念しつつ、御挨拶に代えさせて頂きます。