データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] アブドルアジーズ殿下訪日に際しての日本・カタル国共同コミュニケ

[場所] 東京
[年月日] 1976年5月17日
[出典] 外交青書21号,59−61頁.
[備考] 仮訳
[全文]

1.カタル国の財政石油大臣アブドルアジーズ殿下は,1973年12月,三木特使がカタル国を訪問した際,訪日招待したことに基づき,日本国政府の賓客として1976年5月10日より日本を訪問し,16日までの公式日程を了した。同殿下には財政,石油,工業,及び貿易の各分野における同国の高級実務者よりなる代表団が同行した。

2.同殿下は,5月11日,皇居において天皇陛下に謁見した。謁見は暖かく,且つ誠意あふれる雰囲気の下で進められた。

3.同殿下は,また,三木総理大臣及び福田副総理を表敬訪問し,2国間友好親善関係を中心に懇談した。

 三木総理大臣は,1973年12月カタル国を訪問した際,ハリーファ首長殿下はじめ同国官民から暖かい歓迎を受けたことに対し改めて感謝の意を表明し,同国がハリーファ首長殿下の英明なる指導の下に近代化に邁進していることに敬意を表明した。

 福田副総理よりは,特に,日本の経済情勢,世界の経済環境等が説明された。これに対し,殿下は,日本の急速な経済成長,経済政策運営は,経済発展の範である旨表明した。

4.更に,同殿下は,宮澤外務大臣,大平大蔵大臣,及び河本通商産業大臣と相互に関心ある諸問題について有益な意見交換を行つた。

 これら会議においては,広く貿易,エネルギー,開発協力,投資等の分野における両国関係の一層の緊密化の可能性を含め,両国間友好・親善関係及び現下の国際経済情勢が主要な話題であつた。

 カタル側は,同国の経済開発,工業化の現状及び見通しを説明し,多くの日本企業が,カタル国の主要な諸プロジェクトに参画する等活発な活動を行つており,日本の協力,高度の工業技術を高く評価している旨表明し,今後更にかかる活動,協力が推進されることを期待している旨表明した。

 これに対し,日本側は,わが国の諸経済制度,経済情勢,及び同国におけるわが国の経済活動を説明し,カタル国におけるかかる日本の活動が,更に進展し,同国の発展に貢献することを期待している旨表明した。日本側は,カタル国の軽工業育成の分野における日本の技術協力の可能性を検討する用意がある旨表明した。

 双方は,液化天然ガスの分野における将来の協力に関心を示し,カタルと日本の液化天然ガス貿易の開発に関する技術的問題を更に検討することに合意した。

5.宮澤外務大臣とアブドルアジーズ殿下との会談においては,中東問題を中心に現下の国際情勢についても意見交換が行われた。

 同殿下は,中東問題の公正なる解決に対する同国の関心を説明した。更に同殿下は,日本国政府が中東問題について深い理解を有していることを高く評価した。宮澤大臣は,中東問題が世界の平和に対し有する重要性を認識し,1967年11月22日の安保理決議242号及び国連憲章に基づくパレスチナ人の正当なる権利を考慮し,中東地域に1日も早く公正且つ永続的な和平が達成されることに対するわが国の希望を確認した。

6.これとは別途,実務者レベルの合同会議が外務省において開催され,両国の経済情勢,石油需給問題,一層の両国間工業・技術協力の可能性等相互に関心のある事項につき一般的な意見交換がなされた。また,エネルギー及び工業問題に関する更に技術的詳細につき,通商産業省において実務者レベルの会合が持たれた。

7.アブドルアジーズ殿下は,公式日程期間中,同殿下及び随行代表団に示された暖かい歓迎と厚遇に対し,三木総理大臣,日本国政府及び国民への深い感謝の意を表明した。

8.同殿下の訪日は,日本国とカタル国との相互理解と協力の精神に基づく友好・親善関係の促進に大いに貢献した。

9.なお,5月17日以降の非公式日程期間中,同殿下は,財界関係者との会談,及び工場視察等を行う予定である。

 また,5月19日には,同殿下の訪日を機会に,日本・カタル友好協会の設立総会が開催され,同殿下は,同協会の名誉総裁に推戴される予定である。