データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] オスマン・モロッコ首相の訪日に際しての日本・モロッコ共同コミュニケ

[場所] 東京
[年月日] 1976年2月20日
[出典] 外交青書20号,103−105頁.
[備考] 仮訳
[全文]

1.アハメッド・オスマン・モロッコ王国首相は,日本政府の招待により,夫人ララ・ヌズハ殿下を同伴し,1976年2月15日から20日まで,日本国を公式に訪問した。同首相夫妻にはハッサン・ゼムーリ観光・住宅・都市計画・環境相並びにモハメッド・ベルカイヤット及びアブデルカメル・レライエ両行政長官をはじめとするモロッコ政府関係者が随員として同行した。

2.オスマン首相夫妻は,2月16日,皇居において,天皇・皇后両陛下に謁見し,両陛下から午餐を賜わつた。

3.オスマン首相は,日本滞在中,三木総理大臣と極めて友好的な会談を行つた。両国首相は,両国が共通の関心を有する諸問題につき,有益な意見交換を行つた。

4.両国首相は,中東情勢を検討し,同地域における最近の状況の進展を十分勘案して,公正,かつ,永続的な平和が一日も早く達成されることについての希望を表明した。オスマン首相は,中東紛争の解決の方法についてのモロッコ政府の立場を説明した。三木総理大臣は,安保理決議242号が完全,かつ,すみやかに履行されるべきこと,及びパレスチナ人の国連憲章に基づく正当な権利が尊重されるべきことについての日本政府の立場を再確認した。オスマン首相は,日本が中東問題に関し,深い理解を有していることを認識し,これに満足の意を表明した。

5.両国首相は,地中海地域の情勢を検討し,同地域の諸国民の発展と繁栄のためには,同地域の平和と安定が前提条件であることにつき,意見の一致をみた。

6.両国首相は,両国間の関係について検討を行い,両国がきわめて友好的な協力関係にあることに満足の意を示すとともに,かかる友好的な協力関係にあることに満足の意を示すとともに,かかる友好関係は,今後一層促進されるべきであることについて意見の一致をみた。この関連で,両国首相は,2月17日,日本国から,モロッコ王国に対し,モロッコの国有鉄道に関する計画の実施のために供与される円借款についての交換公文が署名されたことは,両国間の益々促進される友好・協力関係のしるしであるとして,同慶の意を表した。両国首相は,両国間の経済関係を拡大することについての強い希望を有し,種々の協力分野について検討した。かかる協力を強化するための具体的な方策を探究し,このための今後の接触についての取り運び方を討議するため,随行のモロッコ側高官は,日本側の政府関係者と有益な会談を行つた。

7.オスマン首相は,日本滞在中,主要経済団体の関係者を含め日本の各界指導者と友好的,かつ,有益な懇談を行つた。

 また,オスマン首相は,新たに設立された日本・モロッコ友好協会の会員と懇談する機会を得,この有意義な企画に対し喜びと満足の意を表明した。オスマン首相は,日本とモロッコの友好関係の強化及び一層の拡大のために,同協会がたゆまず払つている格段の努力につき,ハッサン二世国王陛下の政府が如何に高く評価しているかを強調した。

 同首相一行は,また,京都を訪れ,日本の伝統的文化に親しく接する機会を得た。

8.オスマン首相夫妻は,日本政府及び国民より暖かい歓迎及びもてなしを受けた。オスマン首相は,日本滞在中に同首相夫妻及び随員一行が受けた友情に満ちた厚遇に対し,感謝の意を表明した。

9.オスマン首相は,三木総理大臣夫妻に対し,モロッコ王国を公式訪問するよう招待を行つた。三木総理大臣は,この招待を感謝の念をもつて受諾した。訪問の時期は,外交経路を通じ取決められる。

10.オスマン首相の今回の訪問は,日本・モロッコ両国間にすでに存在する相互理解と友好関係の促進に著しく貢献した。