データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] イスラエル・シリア間兵力引離し協定

[場所] 
[年月日] 1974年5月31日
[出典] 外交青書19号,140−141頁.
[備考] 仮訳
[全文]

A.イスラエルおよびシリアは,1973年10月22日の国連安保理事会決議338を履行するため,この文書の調印の時点から陸,海,空における停戦を忠実に守り,相互すべての軍事行動を抑制する。

{地図は省略}

B.イスラエル軍とシリア軍は以下の原則に従つて引離される。

 1.全イスラエル軍はこの文書の付属地図にラインAと明示されたラインの西側に位置する。ただしクネイトラ地域では例外としてラインA−1の西側に位置する。

 2.ラインAの東側領域はシリアの行政下におかれ,シリア住民はこの領域に復帰する。

 3.ラインAと,付属地図にラインBと明示されたラインとにはさまれた地域は引離し地域となる。この引離し地域には付属議定書に従つて設立される国連引離し監視軍が駐留する。

 4.全シリア軍は付属地図にラインBと明示されたラインの東側に位置する。

 5.合意された如くラインAの西側およびラインBの東側にそれぞれ同面積の軍備および兵力の制限地域を設定する。

 6.双方の空軍は相手方の干渉を受けることなくそれぞれのラインまで行動することが許される。

C.付属地図のラインAとラインA−1の間の地域には軍隊をおいてはならない。

D.本協定および付属地図は,イスラエルおよびシリアの軍事代表によつて遅くとも1974年5月31日までにジュネーブで調印される。調印は国連主宰のエジプト・イスラエル軍事作業部会で,まずシリア軍代表の同部会加入後,米国およびソ連の代表の参加を得て行われる。正確・詳細な地図の作成および兵力の引離し実施計画はエジプト・イスラエル軍事作業部会においてイスラエルおよびシリアの軍事代表により作成され,その過程の各段階で合意するものとする。同作業部は,本協定署名後24時間以内に,ジュネーブにおいて国連主宰のもとにこの目的のための作業を開始する。同部会はこの仕事を5日以内に完了する。兵力引離しは軍事作業部会の仕事の完了後24時間以内に開始する。兵力引離し作業は開始後20日以内に完了するものとする。

E.A,BおよびCの各項の規定は,本協定に基づく国連兵力引離し監視軍を構成する国連要員によつて査察されなければならない。

F.ジュネーブにおける本協定の署名後24時間以内に,双方が抑留し,国際赤十字委員会によつて証明されている戦傷捕虜はすべて送還される。軍事作業部会の仕事が完了した翌朝,残余の捕虜全員が送還される。

G.双方が保管する戦没兵士の遺体はすべてそれぞれの本国に埋葬するため,本協定調印後10日以内に送還される。

H.本協定は平和協定ではなく,1973年10月22日の安保理事会決議338に基づく公正かつ永続する平和への第1歩である。