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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 国際連合安全保障理事会決議第1874号 和訳

[場所] ニューヨーク
[年月日] 2009年6月12日
[出典] 国際連合安全保障理事会
[備考] 官報告示外務省第328号(平成21年6月19日発行)
[全文]

安全保障理事会は、

決議第825号(1993年)、決議第1540号(2004年)、決議第1695号(2006年)及び特に決議第1718号を含むこれまでの関連する決議並びに2006年10月6日の議長声明(S/PRST/2006/41)及び2009年4月13日の議長声明(S/PRST/2009/7)を想起し、

核、化学及び生物兵器並びにその運搬手段の拡散が、国際の平和及び安全に対する脅威を構成することを再確認し、

2009年5月25日(現地時間)に北朝鮮により決議第1718号(2006年)に違反して実施された核兵器の実験、このような実験による核兵器の不拡散に関する条約(NPT)及び2010年NPT運用検討会議に向けて核兵器の不拡散に関する世界的な制度を強化するための国際的な努力に対する挑戦、並びに、このような実験が地域内外の平和及び安定にもたらす危険に対し、最も重大な懸念を表明し、

NPT及び同条約をそのすべての側面において強化するとの約束並びに核不拡散及び核軍縮に向けた世界的な努力に対する集団的な支持を強調するとともに、北朝鮮はいずれにせよNPTに従い核兵器国としての地位を有することはできないことを想起し、北朝鮮によるNPTからの脱退に関する発表及び核兵器の追求を遺憾とし、

北朝鮮が、国際社会が有するその他の安全保障上及び人道上の懸念に対応することが重要であることを再度強調し、

また、この決議により課される措置は、北朝鮮の一般市民に対して人道面の悪影響をもたらすことを意図するものではないことを強調し、

北朝鮮により行われた核実験及びミサイル活動が地域内外の緊張を更に増大させていることに深刻な懸念を表明するとともに、国際の平和及び安全に対する明白な脅威が引き続き存在することを認定し、

すべての加盟国が国際連合憲章の目的と原則を支持することの重要性を再確認し、

国際連合憲章第7章の下で行動し、同憲章第41条に基づく措置をとって、

1 北朝鮮が、関連する決議(特に決議第1695号(2006年)及び第1718号(2006年))及び2009年4月13日の議長声明(S/PRST/2009/7)に違反し、甚だしく無視して、2009年5月25日(現地時間)に実施した核実験を最も強い表現で非難する。

2 北朝鮮に対し、いかなる核実験又は弾道ミサイル技術を使用した発射もこれ以上実施しないことを要求する。

3 北朝鮮が、弾道ミサイル計画に関連するすべての活動を停止し、かつ、この文脈において、ミサイル発射モラトリアムに係る既存の約束を再度確認することを決定する。

4 北朝鮮に対し、関連する安全保障理事会決議(特に決議第1718号(2006年))の義務を直ちにかつ完全に遵守することを要求する。

5 北朝鮮に対し、NPTからの脱退に関する発表を直ちに撤回することを要求する。

6 北朝鮮に対し、NPTの締約国の権利及び義務に留意しつつ、NPT及び国際原子力機関(IAEA)の保障措置にすみやかに復帰することを更に要求するとともに、NPTのすべての締約国が自国の同条約上の義務を引き続き遵守することが必要であることを強調する。

7 すべての加盟国に対し、決議第1718号(2006年)に基づく義務(決議第1718号(2006年)に従って設立された委員会(以下「委員会」という。)が2009年4月13日の議長声明(S/PRST/2009/7)に従って行った指定に関するものを含む。)を履行することを要請する。

8 北朝鮮が、すべての核兵器及び既存の核計画を、完全な、検証可能な、かつ、不可逆的な方法で放棄し直ちに関連するすべての活動を停止すること、NPTの下で締約国に課される義務及びIAEA保障措置協定(IAEA INFCIRC/403)に定める条件に厳格に従って行動すること、並びに、これらの要求に加え、透明性についての措置(IAEAが要求し、かつ、必要と認める個人、書類、設備及び施設へのアクセスを含む。)をIAEAに提供することを決定する。

9 決議第1718号(2006年)8(b)の措置は、すべての武器及び関連物資並びにこれらの武器及び関連物資の提供、製造、維持又は使用に関する金融取引、技術訓練、助言、サービス又は援助にも適用することを決定する。

10 決議第1718号(2006年)8(a)の措置は、すべての武器及び関連物資(小型武器及びその関連物資を除く。)並びにこれらの武器の提供、製造、維持又は使用に関する資金上の取引、技術訓練、助言、サービス又は援助にも適用することを決定し、各国に対し、北朝鮮に対する小型武器の直接又は間接の供給、販売又は移転を監視することを要請し、さらに、各国は、北朝鮮に対する小型武器の販売、供給又は移転の少なくとも5日前までに、委員会に通知することを決定する。

11 すべての国に対し、当該貨物が決議第1718号(2006年)8(a)、8(b)若しくは8(c)の規定又はこの決議9若しくは10の規定により供給、販売、移転又は輸出が禁止されている品目を含むと信じる合理的根拠があることを示す情報を当該国が有する場合には、これらの規定の厳格な履行を確保する目的で、自国の法的権限及び国内法令に従い、かつ国際法に適合する範囲内で、海港及び空港を含む自国の領域内で、北朝鮮向け及び北朝鮮からのすべての貨物を検査することを要請する。

12 すべての加盟国に対し、当該船舶の貨物が決議第1718号(2006年)8(a)、8(b)若しくは8(c)の規定又はこの決議9若しくは10の規定により供給、販売、移転又は輸出が禁止されている品目を含むと信じる合理的根拠があることを示す情報を有する場合には、これらの規定の厳格な履行を確保する目的で、旗国の同意を得て公海上で船舶を検査することを要請する。

13 すべての国に対し、11及び12の規定に基づく検査に協力することを要請し、また、旗国が公海上の検査に同意しない場合には、当該旗国は、船舶が11の規定に基づく現地の当局による必要な検査のために適当かつ都合のよい港に航行するよう指示することを決定する。

14 すべての加盟国が、11、12及び13の規定に基づく検査において確認された、決議第1718号(2006年)8(a)、8(b)若しくは8(c)の規定又はこの決議の9若しくは10の規定により供給、販売、移転又は輸出が禁止されている品目を、決議第1540号(2004年)を含む関連の安全保障理事会決議の下での義務並びにNPT、1997年4月29日の化学兵器の開発、生産、貯蔵及び使用の禁止並びに廃棄に関する条約及び1972年4月1日の細菌兵器(生物兵器)及び毒素兵器の開発、生産及び貯蔵の禁止並びに廃棄に関する条約の締約国のいかなる義務にも反しない方法で押収及び処分することを認め、また、すべての加盟国がこれを行うことを決定し、さらに、すべての国がそのような努力に協力することを決定する。

15 いかなる加盟国も、11、12若しくは13の規定に従って検査を行い、又は14の規定に従って貨物を押収及び処分したときは、検査、押収及び処分につき、関連する詳細が含まれた報告を委員会に対してすみやかに提出することを要求する。

16 いかなる加盟国も、12又は13の規定に基づく旗国の協力が得られない場合は、関連する詳細が含まれた報告を委員会に対して速やかに提出することを要求する。

17 加盟国は、北朝鮮の船舶が、決議第1718号(2006年)8(a)、8(b)若しくは8(c)の規定又はこの決議9若しくは10の規定により供給、販売、移転又は輸出が禁止されている品目を運搬していると信じる合理的根拠があることを示す情報を有する場合には、人道的目的のために必要な場合を除き、又は、貨物が検査を受け、必要な場合は押収及び処分されるまで、自国民による又は自国の領域からの当該北朝鮮の船舶に対する燃料若しくは物品の提供等の供給サービスの提供又はその他の船舶の保守に係る役務の提供を禁止することを決定し、また、この規定が合法な経済活動に影響を与えることを意図するものではないことを強調する。

18 加盟国に対し、決議第1718号(2006年)8(d)及び8(e)の規定に基づく義務の履行に加え、北朝鮮の核関連、弾道ミサイル関連又はその他の大量破壊兵器関連の計画又は活動に貢献し得る金融サービスの提供、又は自国の領域への、自国の領域を通じての若しくは自国の領域からの、又は自国民、自国の法律の下で組織された団体(海外の支店を含む)、自国の領域内の者若しくは金融機関に対する若しくはこれらによる、いかなる金融又はその他の財産又は資産の移転も防止することを要請する(自国の領域内の、又は今後自国の領域内に入る、自国の管轄権に服する、又は今後自国の管轄権に服することとなる、前記の計画又は活動に関連するいかなる金融又はその他の財産又は資産の凍結、及び、自国の権限及び国内法令に従った、すべてのそのような取引を防止するための監視の強化の適用を含む。)。

19 すべての加盟国並びに国際金融機関及び信用機関に対し、一般市民の必要に直接応える人道及び開発目的のもの又は非核化の促進のためのものを除き、北朝鮮に対する無償援助、資金援助又は緩和された条件による貸付けの新たな約束を行わないことを要請し、また、各国に対し、現行の約束を削減するよう警戒を強化することを要請する。

20 すべての加盟国に対し、当該金融支援が北朝鮮の核関連、弾道ミサイル関連又はその他の大量破壊兵器関連の計画又は活動に貢献し得る場合は、北朝鮮との貿易のための公的な金融支援(そのような貿易に関与する自国の国民又は団体に対して輸出信用、保証又は保険の供与を行うことを含む。)を提供しないことを要請する。

21 すべての加盟国が、北朝鮮における外交使節団の外交関係に関するウィーン条約に基づく活動を妨げることなく、決議第1718号(2006年)8(a)(iii)及び8(d)の規定に従うべきことを強調する。

22 すべての加盟国に対し、この決議の採択から45日以内に、またその後委員会の要請があれば、決議第1718号(2006年)8の規定、この決議9及び10の規定並びにこの決議18、19及び20の規定に定める金融措置を効果的に実施するために取った具体的措置につき、安全保障理事会に報告するよう要請する。

23 決議第1718号(2006年)8(a)、8(b)及び8(c)の規定に定める措置は、INFCIRC/254/Rev.9/Part1a及びINFCIRC/254/Rev.7/Part2aに列挙される品目にも適用することを決定する。

24 決議第1718号(2006年)8の規定及びこの決議により課された措置を調整すること(団体、物品及び個人の指定を含む。)を決定し、委員会に対し、このためにその任務を実施し、この決議の採択から30日以内に安全保障理事会に報告するよう指示し、さらに、委員会が行動しなかった場合には、安全保障理事会がその報告の受領から7日以内に措置の調整のための行動を完了することを決定する。

25 委員会が、2009年7月15日までに理事会に提出される、遵守、調査、広報、対話、支援及び協力に関する作業計画を通じて、決議第1718号(2006年)、2009年4月13日の議長声明(S/PRST/2009/7)及びこの決議の完全な実施を促進するための努力を強化し、またこの決議の10、15、16及び22の規定に従い加盟国からの報告を受理し、検討することを決定する。

26 事務総長に対し、委員会と協議し、以下の任務を遂行するために委員会の指示の下に行動する7名までの専門家のグループ(「専門家パネル」)を当初1年の間設置することを要請する。(a)決議第1718号(2006年)に明記された権限及びこの決議25の規定に明記された任務の遂行に当たり委員会を支援する。(b)国、関連する国際連合の関係機関及びその他の関係当事者からの、決議第1718号(2006年)及びこの決議により課された措置の履行に関する情報(特に違反の事例に関するもの)を収集、審査、及び分析する。(c)理事会、委員会又は加盟国が検討しうる、決議第1718号(2006年)及びこの決議により課された措置の実施を改善するための行動につき勧告を行う。(d)自らの作業につき、この決議の採択後90日以内に理事会に中間報告を、また、その権限が終了する30日前までに理事会に最終報告を、所見及び勧告とともに提出する。

27 すべての国、関連する国際連合の関係機関及びその他の関係当事者に対し、特に決議第1718号(2006年)及びこの決議により課された措置の実施に関して保有するいかなる情報も提供することにより、委員会及び専門家パネルと完全に協力することを要請する。

28 すべての加盟国に対し、北朝鮮の拡散上機微な核活動及び核兵器運搬システムの開発に寄与し得る分野の、自国の領域内における若しくは自国民による北朝鮮市民に対する専門教育又は訓練を監視し防止することを要請する。

29 北朝鮮に対し、すみやかに包括的核実験禁止条約に加盟するよう要請する。

30 平和的対話を支持し、北朝鮮に対し、直ちに無条件で6者会合に復帰することを要請し、また、すべての参加国に対し、朝鮮半島の検証可能な非核化を達成し、かつ、朝鮮半島及び北東アジア地域の平和と安定を維持するために、中国、北朝鮮、日本、大韓民国、ロシア連邦及びアメリカ合衆国によって2005年9月19日に採択された共同声明並びに2007年2月13日及び2007年10月3日の共同文書を完全に、かつ迅速に実施するための努力を強化することを要請する。

31 事態の平和的、外交的かつ政治的解決の約束を表明し、また、対話を通じた平和的かつ包括的な解決を容易にし、また、緊張を悪化させるおそれのあるいかなる行動も差し控えるための理事国及びその他の加盟国による努力を歓迎する。

32 北朝鮮の行動を絶えず検討すること、また、北朝鮮による決議第1718号(2006年)及びこの決議の関連する規定の遵守の状況にかんがみ、決議第1718号(2006年)8及びこの決議の関連する規定の措置の妥当性について、その時点における必要性に応じ、検討(これらの措置の強化、調整、停止又は解除についての検討を含む。)を行う用意があることを確認する。

33 追加の措置が必要な場合には、更なる決定が必要とされることを強調する。

34 この問題に引き続き積極的に関与することを決定する。