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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 北朝鮮人民軍板門店代表部スポークスマン談話

[場所] 板門店
[年月日] 2003年2月17日
[出典] 朝鮮日報統韓研究所データベース、朝鮮中央通信2003年2月18日放送
[備考] 翻訳 玄大松
[全文]

米国側が制裁を加えて来れば停戦協定義務履行を放棄

今年は、朝鮮で停戦協定が締結されてから50番目の年輪を刻む年である。50年の長き歳月にわたる、朝鮮人民は民族分裂の不幸と共に、戦争でもなく平和でもない不安定な停戦状態がもたらす常時戦争の危険と尖鋭な緊張による、言葉では言い表せないあらゆる苦痛を強いられている。わが人民は、もうこれ以上、この苦痛と不幸をそのまま甘受することが出来ないし、忍耐力も限界に達した。

元来、停戦協定は、朝鮮問題の平和的解決を保障するために、協定が調印され効力発生後3カ月内に、一段階高い政治会議を招集して、朝鮮からのあらゆる外国軍隊の撤去及び朝鮮問題の平和的解決などの問題を協議することを予見して締結された。しかし、世界でその類例を探すことができない、長々半世紀に達する朝鮮での停戦の歴史は、朝鮮問題の平和的解決を予見した停戦協定に米国が署名したことが一つの欺瞞劇であったことをそのまま証明してくれている。停戦協定第60項の要求によって、1953年10月に、板門店で行われた政治会議招集のための予備会談過程で、米国側代表が何らの理由もなく会談場から退場したため予備会談が破綻、政治会議は招集もできなかった。これで停戦協定が予見した朝鮮問題の平和的解決の道は断たれてしまった。米国側は、停戦後5年も満たない間に、南朝鮮で、自分たちの非法的な武力増強と、戦争準備に邪魔になると見る協定のあらゆる核心条項を一方的に破棄してしまって、南朝鮮を米国の軍事基地、核基地に転変させた。この時からわが人民は、核脅威というもう一つの新しい挑戦に直面するようになった。これと時を同じくして米国側は、朝鮮に対していかなる種類の封じ込めもしてはならないと規定した停戦協定第15項を乱暴に蹂躙しながら、わが国の西海に北方境界線というものを一方的に引いて置いて、数十年間我々に対する海上封鎖を続けてきている。停戦協定は事実上何らの効力も意義もない、空の紙くずになってしまった。今日、停戦協定は、実際的に朝鮮半島における敵対行為の再発を防止するために存在しているのではなく、米国の対朝鮮敵対視政策に利用されている。特に、厳重に注視しなければならないのは、米国の核騒動により朝鮮半島の情勢が極度に尖鋭化されている今日、米国側が停戦相手方に反対して武力増強ができないように規定している停戦協定を無視して、朝鮮半島とその周辺地域に空母と戦略爆撃機をはじめとする莫大な武力を増強配置しようとしていて、今我々を狙った各種の不義的な打撃練習を猛烈に繰り広げ、3月16日からは連合戦時増員演習と「鷲」訓練を統合して進行するようになる合同軍事練習を口実に、南朝鮮に多くの兵力と作戦装備を引き込もうとする等、わが共和国に対する先制攻撃の試みを時々刻々に実践に移していることだ。

事態は日々に厳酷になりつつある。それに加え、米国が昨年12月9日、公海上で航行していたわが国の貿易貨物船を白昼に拿捕して臨検を行った同じ日、白昼強盗的な主権侵害行為を今後わが国の近隣海上で継続して敢行すると公然と宣布したことは、戦争時期の交戦国の間でだけにあり得る海上封鎖作戦を行うということであり、これは結局厳然な戦争宣言と同じである。あらゆる事実は、停戦協定があるために朝鮮で平和が保障されている、という米国の詭弁がどれくらいおかしくて偽善的か、ということをよく見せてくれている。米国が停戦協定を無視して敢行している露骨な戦争行為のために造成された厳しい事態は、米国側の交戦相手である朝鮮人民軍側にとって、これに対処するため必要なあらゆる措置を至急に取らざるを得なくなるよう追い詰めている。米国側が現在のように停戦協定を勝手に違反して悪用するならば、我々だけが不利な形で停戦協定に拘る必要はなくなるであろう。

朝鮮人民軍板門店代表部は委任によって、米国側が朝鮮半島とその周辺地域に我々を攻撃するための武力を集結し、そのどこからでも我々に対する制裁を加えて来れば、これは即ち、停戦協定が禁止している我々に対する封鎖行為と見なし、朝鮮人民軍側はやむを得ず停戦協定調印の一方として、協定によって課せられた義務履行を放棄して、停戦協定のあらゆる条項の拘束から抜け出す断固とした措置を取らざるを得なくなる、ということを宣言する。

今後の事態展開はすべて米国次第である。

主体92(2003)年2月17日

板門店