データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 北朝鮮政府の日朝関係の現事態と関連した三つの原則的立場の闡明

[場所] 平壌
[年月日] 1999年8月10日
[出典] 朝鮮日報統韓研究所データベース
[備考] 翻訳 玄大松
[全文]

朝鮮民主主義人民共和国政府は、日帝植民地統治基盤からの祖国解放54周年を迎えて、正義と自主、平和を指向する世界進歩的人類と良心の前に、日本の対朝鮮政策100年犯罪史をもう一度明らかにするためにこの声明を発表する。

20世紀が暮れ、新しい世紀を目前に控えた今、わが人民は、一世紀間朝鮮人民に前代未聞の犯罪を犯した日本が明確な反省もせず、対朝鮮敵対視政策もあきらめないままで今世紀を越えようとしていることに対し、限りない民族的憤怒と驚きを禁じ得ない。

昔からわが国は、住みやすい三千里の美しい山川と呼ばれてきたし、半万年の悠久の歴史を誇る美しいこの領土の上でわが民族は、お互いに助け合い、導きながら代々にわたって和睦した生活を営んできた。

平和だったこの領土に侵略と略奪、血腥い人間屠殺蛮行が氾濫し、わが人民を不幸と苦痛が襲おい始めたのは、まさに朝鮮に対する日本の侵略の歴史が始まったその時からであった。

朝鮮に対する侵略の機会だけを狙っていた日帝は、1905年、膨大な侵略武力でわが国を強制占領してはそれを合法化するためにあらゆる威嚇恐喝と強盗的詐欺の方法で、いわゆる条約を捏造することによって朝鮮の外交権と内政権を強奪したし、わが国に対する植民地統治を強行した。

こうしてわが人民は、40余年間の長きにわたって、日帝植民地統治下で、あらゆる民族的蔑視と虐待を受けて、日本の法律に服従するか、でなければ死ななければならないという、言葉では言い表せない精神的屈辱と大変な苦労を味わなければならなかった。

朝鮮を強制占領した日帝は、わが民族の言葉と文、朝鮮人の姓と名前まで強制的に奪って、固有の民族的風習さえなくしてしまおうとしたし、わが人民に自民族の心魂を捨てて皇国臣民として日本天皇に忠誠することを強要した。

日帝は、朝鮮強制占領の全期間、中世の奴隷売買人を彷彿させる最も野蛮な方法で、当時の朝鮮民族青壮年労働力のほぼ全部である600余万名を拉致、強制連行して、アジア及び太平洋戦争で消耗される兵力と労働力に充て人間以下の奴隷労働を強要したし、百数十万名の無辜な住民を殺戮して、20万名近い朝鮮女性を従軍慰安婦として連れだし日本軍隊の性奴隷にするなど、わが民族に莫大な人的被害を与えた。

また、わが人民が創造して祖先代々受け継いだ数十万点の貴重な国宝及び文化財、莫大な量の自然資源と一切の生産物を略奪していったことをはじめとして、日帝がわが人民に与えた物質的被害は実に天文学的な数字に達する。

このように、日帝の強制占領統治時期に朝鮮人民が被った精神的、人的、物的被害は、その形態と方法、内容と範囲において、真に人類史上最大最悪のものであった。

敗亡後日本は、当然朝鮮人民の前に過去の罪を反省して、新しく出発すべきであった。

しかし日本は、朝鮮分裂の原罪を犯しただけでは足りず、分裂の張本人である米国を傘に着て、始終一貫わが国の統一と発展を阻害する新しい犯罪の道に入ったし、日朝関係をずっと最悪の対決関係へ追い込んできた。

特に、米帝が起こした朝鮮戦争の時期、日本は数万名の旧日本軍残党と警察予備隊を朝鮮戦線に投入し、膨大な輸送手段で米帝の戦争物資輸送を保障したし、軍需機材の生産と修理、軍事基地提供などを通じて朝鮮戦争に積極的に参加した。

これは日本が、米国と共に、朝鮮戦争においても直接的責任がある犯罪国という明白な証拠になる。

第2次世界大戦で敗亡した日帝が、米国の庇護の下で朝鮮戦争好景気を奇貨に、黄金の夕立に降られ、再生、再武装できるようになったのは、周知の事実である。

その後も日本は、米国の二つの朝鮮操作と対朝鮮圧殺政策を国是としながら、我々の社会主義制度を孤立圧殺しようと悪辣に策動した。

我々式社会主義を、目に刺さった棘のように感じている日本反動らは、わが国に対して政治軍事的威嚇恐喝と経済的制裁を絶えず敢行してきたし、日帝の植民地統治の後禍で日本に住んでいる朝鮮の人々とその子孫たちに対する苛酷な民族的差別と弾圧行為を続けている。

100年間にわたる日本の対朝鮮政策は一言で言えば朝鮮民族を抹殺して、分裂、離間させ、排他して反目する政策に一貫した朝鮮民族圧殺政策であった。

共和国政府は、20世紀の日本の対朝鮮政策を評しながら、日本が朝鮮強制占領40余年間わが人民にあらゆる不幸と苦痛を負わせた犯罪、そして敗亡後当然すべきであった過去清算を今世紀が終わるまでにせず、半世紀以上もわが国に対する敵対視政策を実施して、大きな政治的、経済的被害を与えた犯罪は、千秋に容赦することができない、万古の大罪であり、日本が清算しようとしても原状そのままにはとうてい回復することが出来ない、重大なものであることを、もう一度厳重に警告する。

日朝関係の改善問題は本質において、過去に日本がわが人民に犯した罪を清算した基礎の上で、両国人民等の利益と時代的要求に合うように、新しい善隣関係を発展させることである。

我々は、日本が今世紀末葉にはじめて、情勢の流れに乗って我々との関係正常化のための政府的な対話の庭に出てきたのに対し、時遅しという感はあるけれど、雅量で応対し。近くて遠い国である日本が、近くて親近な隣りになるという期待感を抱いて、歴史的及び法律的見地から日朝関係の過去をきれいに決算して不幸だった過去史に終止符を打ち、和解と善隣、平等と友好、自主と互恵の原則で日本との関係を新しく結ぶために積極的に努力した。

しかし日本は、過去の罪に対する反省はさておき、慢性的な対米追従と、対朝鮮敵対視政策の延長線に立って、日朝会談とは何らの関連もない核疑惑やら拉致問題やらの、前提条件を持ち出すことによって、せっかく準備された会談を人為的に破綻させた。

日朝会談が決裂して7年になろうとする今日までも、日本は相変らず過去清算のための会談を無視しており、あたかも関係正常化が何のそのお土産でもあるかのように、むしろ我々に分不相応な要求をしながら、破廉恥に行動している。

関係正常化はどちらか一方が他方に施す恩恵でなく、また日朝関係改善が我々にとって切実な利害関係があるのでもない。

戦後54年間、我々は、日本がなくても生きてきたし、日本の制裁と孤立圧殺策動の中でも微動だもしなかった。

歴史的に朝鮮は、日本がそばにいることで不便だけ感じてきたのであり、得をしたことは一つもなかったし、これまでそうであったように、日本と関係改善をしなくても十分に生きていくことができる。

日本の過去清算回避は本質において、犯罪の過去を再現しようという軍国主義的な黒い本音の発現であり、大東亜共栄圏の昔の夢を是が非でも実現するための再侵野望の発露である。

加害者である日本は、我々に過去のあらゆる罪過に対して誠実に謝罪し、補償する法的、道徳的義務をもっており、被害者である我々は、国際法によって公認された原則と国際慣例に従い、過去のあらゆる被害に対して、日本から補償を受けるべく堂々たる権利を持っている。

わが国における日本の過去清算問題は、単純に僅かなお金を払ってもらうか否かという経済実務的問題でなく、朝鮮民族が自らの尊厳と自主的権利を擁護し、行使するための重大な政治的問題であり、日本の再侵略を防いでアジアにおける平和の担保を用意するための、尖鋭な軍事的問題だ。

同時にそれは、日本が国際社会の一員として堂々と生きていくことができる資格を備えられるか否かという焦眉の問題で、日本自身のためにも必ず解決しなければならない重大事である。

それにも拘わらず日本当局者らは、朝鮮人民に負わせた被害に対する反省さえしないで、可笑しなことに、血で汚された彼らの侵略の歴史を美化し、粉飾し、歪曲している。

歴史教科書を改悪して、次の世代に偽りの歴史を注入して、国粋主義、軍国主義を鼓吹し、彼らに罪悪の過去史に対する初歩的な認識と罪の意識感覚とを持つことが出来なくさせたのも、やはり日本が犯した犯罪の中の一つである。

歴史は否定するからといってなくなるものではなく、歪曲するとして変わるものでもない。

他民族から受けた民族的蔑視と毀損された民族的自尊心は、歳月が経っても決して忘れることができない。

日本が、20世紀犯罪国家の汚名を返上するための努力を怠って良心を浄化することができなかったため、彼らの罪過は世代を継続してより一層増大しており、結局日本の新しい世代らは前世代が返していない持分まで合わせ、途方もなく累積された借金を返さなければならない羽目に陥っている。

日本は、世代が変わって世紀が変わっても、過ぎた日のあらゆる罪過に対して、朝鮮人民の前に徹底的に謝罪して補償する法的、道徳的義務から絶対に抜け出ることができない。

今、世界の良心は、一時人類の前にファッショ的犯罪を犯したドイツやイタリアの過去清算を通して、日本の道徳的低劣性を見ている。

今日、日本当局が実施している諸般政策は、わが国をはじめとするアジアの人民と世界の人民に大きな憂慮と幻滅を醸し出している。

日本は過去の大陸侵略の苦い惨敗から教訓を得る代わりに、むしろ平和国家の看板の下で復讐の力を系統的に培ってきたのであり、最近では海外侵略戦争に直接参加できる軍事作戦的、法律的、思想精神的準備を完成して、それを実践する危険千万な段階に入った。

日本の現当局者は、彼らの海外侵略の最初の対象がわが共和国であることを隠すこともせず、我々の輝かしい科学技術研究の成果である人工衛星光明星1号発射を、ミサイル発射だとやっきになってごり押ししながら、類例のない反共和国対決を鼓吹する一方、わが国に対する再侵略の機会だけを虎視耽々と狙っている。

日本反動らが掲げている北朝鮮脅威論は、朝鮮再侵略の前奏曲であり、朝鮮再侵略は、アジア再侵略の序幕になるであろう。

世界的な経済大国の地位にまで登りつめた過去の日本軍国主義が、変わることのない侵略野望に、敗亡を報復しようとする復讐心まで装弾し、殺気衝天して、日の丸を掲げ、君が代を叫びながら、海外膨脹の道に飛び出す時、世界と人類の前にどんな災難が差し迫ってくるかは察するに難くない。

朝鮮民主主義人民共和国政府は、日本が日朝関係の厳しい現事態を放置しては、絶対に21世紀に無難に入っていくことができないということを宣言しながら、我々の原則的立場を、次のように厳粛に闡明する。

第一に、日本は、対朝鮮圧殺政策を放棄すべきである。日本は100年にわたった対朝鮮敵対視政策を反省して、新しい政策へ転換すべきである。

第二に、日本は、朝鮮人民に犯した過去のあらゆる罪に対して、誠実な謝罪と徹底した補償をするべきである。罪深い過去を今世紀中に清算するか、次の世紀に持ち越すかという歴史の分岐点で日本は深思熟考して、人類の良心の前に自らの意志と決心を明らかにすべきである。

第三に、日本が再侵略の野望実現のための口実をさがしながら、最後まで力の対決へと進むならば、我々もそれに相応した対応策を選択するしかない。日本の過去清算は必ず交渉の方法によってだけ実現されるのではなく、我々はこの問題解決をいつまでも座視したり放任したりはしない。被害者の選択は加害者の態度如何に掛かっている。我々は、日本が過去清算を通じた善隣関係の樹立に出てくるならばそれに精一杯応じるが、あくまで罪悪に満ちた歴史の前轍を踏みつつ冒険的な挑発を敢行するならば、その機会をのがさず、無慈悲な報復を加え、一世紀間積もり積もった高い血の代価を払ってもらい、骨髓に徹した民族的怨念を何が何でも晴らすつもりである。日本は、新しい文明世紀に向かった入り口に立っているこの歴史的瞬間に、理性を持って正しい選択をすべきである。

主体88(1999)年8月10日

平壌