データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 金泳三韓国大統領歓迎晩餐会における細川内閣総理大臣の挨拶

[場所] 
[年月日] 1994年3月25日
[出典] 細川演説集,81ー82頁.
[備考] 
[全文]

 金泳三(キム・ヨンサムとルビ)大統領閣下,令夫人,並びに御列席の皆様,

この度,金泳三大統領閣下御夫妻とその御一行をわが国にお迎えすることができましたことは,私にとってこの上ない喜びであります。日本政府及び国民を代表して,御一行に対して心から歓迎の意を表しますとともに,この機会に,昨年私が貴国の古都慶州を訪問した際に大統領閣下御夫妻並びに貴国民から賜りました心温まるおもてなしに対して,改めて御礼を申し上げたいと思います。

 大統領閣下

 昨年の私の慶州訪問は,歴史的変革への志を共にする大統領閣下と友情を深め,未来に向かって日韓の堅固な友好関係を築いてゆくための第一歩になったと考えております。その歩みは,今回の大統領閣下の訪日により,一層確固たるものとなりました。

 このような日韓関係の発展の基礎となるものは,申すまでもなく両国の間の信頼関係であります。そして,真の信頼関係は,過去を率直に直視することから始まります。今後とも歴史の教訓を活かしていくことが,日韓間の未来に向けたバートナーシップを強化していく途であると固く信じております。

 大統領閣下

 来年は日韓国交正常化三十周年を迎えます。これまでの日韓関係の飛躍的発展には,正に,目をみはるものがあります。日韓両国は,自由,民主主義,市場経済という基本的価値を共有する隣国であり,私は,両国の関係は二十一世紀に向けて今後とも大きな発展の可能性を秘めていると確信しています。

 そのような発展のためには,私は,日韓関係の多様化と国際化の二つが重要だと考えております。まず,日韓関係の多様化とは,あらゆる分野,世代での交流の促進のことです。交流が深まり,これに多様性が加わることにより,相互理解の根は両国社会の隅々まで行き届くようになると思います。また,日韓関係の国際化とは,国際社会の中での幅広い日韓協力関係の構築のことです。開発途上国への経済協力,環境分野での協力,APEC等,国際社会における日韓両国の協力の分野は,新しい世紀に向けて今後益々広がってゆくものと思います。そして,国際社会で協力する日韓関係の姿をみることにより,私たちは,日韓がお互いにかけがえのないバートナーであることを更に確信することになると思います。この多様化と国際化を通じて,日韓関係はより安定したものになると考えます。

 大統領閣下

 この季節に大統領閣下御夫妻をお迎えできましたことは,本当に喜ばしいことです。ただ惜しむらくは,大統領閣下御夫妻にゆっくり我が国を見ていただく時間がないことです。私は,この度の御一行の御滞在が有意義なものとなるよう心からお祈り申し上げますとともに,是非もう一度大統領閣下御夫妻が,ゆっくりと気軽に我が国を訪れていただくことができるよう願ってやみません。

 御列席の皆様

 金泳三大統領及び令夫人の御健康,大韓民国の益々の御発展並びに日韓友好関係の末永い発展を祈念して,ここに杯を上げたいと存じます。

 乾杯{コンべとルビ}!