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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 盧泰愚韓国大統領との共同記者会見における宮澤内閣総理大臣の冒頭発言

[場所] 
[年月日] 1992年1月17日
[出典] 宮澤演説集,87−88頁.
[備考] 
[全文]

 虜泰愚大統領閣下

 私は,総理就任後の初の外国訪問で,アジアの重要な隣国である貴国を訪問し,大統領とお会いできたことを大変嬉しく存じます。二回にわたる首脳会談では,日韓関係は勿論のこと,朝鮮半島,アジア・太平洋地域の情勢,さらには国際情勢一般についても,率直かつ建設的な意見交換を行うことができ,また,日韓間では多くの点で共通認識があることを確認でき,非常に満足しております。

 東西冷戦構造が崩壊した今日,世界は新たな秩序を模索している途上にあります。そのような中にあって,貴国が,南北国連同時加盟,APEC開催,南北首相会談での合意書署名,さらには核問題に関する南北共同宣言の仮書名等,朝鮮半島のみならずアジア・太平洋地域全体の平和と繁栄のため,目覚ましい外交的成果をおさめられておられることに賛辞を送りたいと思います。

 大統領と私は,今回の首脳会談の結果,激動する世界の中で,日韓関係を益々堅固なものとし,アジア・太平洋地域,ひいては世界の平和と繁栄に貢献すべく,二十一世紀に向けて共に協調しながら歩んでいくことが重要であるとの点で意見が一致いたしました。

 大統領と私は,両国の経済関係についても率直に話し合い,両国間に存在する貿易不均衡の問題が現在日韓両国が真剣に取り組むべき最も重要な問題であることについて認識を一にしました。私たちは,今後,両国間の率直な話し合いによって,この問題の根本的原因を明らかにし,その改善のため,具体的対策を講じて解決に努力することが重要という点で一致しました。そのため,日韓貿易産業技術協力委員会等をして集中的に討議せしめ,その結果について六月末までに合意計画を作成し,報告を受けることと致しました。

 なお,私からは,日韓両国の経済関係のより一層の発展のためには,両国経済界の間における相互理解,相互信頼関係をより一層強固なものとする必要があり,そのため日韓経済関係のあり方を両国の経済人が中長期的な観点から検討し,提言を行うフォーラムを設置するよう提案いたしました。

 産業技術振興の問題については,大統領のご熱意を踏まえ,我が国全体としてどのような協力ができるか検討する予定です。尚,産業・科学技術協力のため財団については,政府自身が出資して設立することは,我が国の財政制度の仕組みから困難ですが,財団が設立された場合には,日本政府として同財団の事業に対して適切に支持を行うことを検討してまいりたいと思います。

 また,大統領と私は,両国間の協力関係を推進し,未来志向的な日韓関係を具体化していくために,両国国民レベルでの深い相互理解と幅の広い交流の促進が重要であることにつき意見が一致しました。そのため,私は,明年度から五年間にわたり,さらに五百名の貴国青年を我が国に招招聘したい旨申し上げました。なお,単に二国間だけでなく,近隣諸国を含めた幅広い交流を進めていくため,多角的な青年交流計画を検討している旨申しあげました。

 近年,日韓関係は良好に推移してきており,二十一世紀に向けて,未来志向的な,かつ,アジア・太平洋地域ひいては世界全体への広がりをもった友好・協力関係を構築していこうとの機運が高まりを見せております。私は,今回の貴国訪問が,このような機運をさらに増進させることの一助となればと願ってやみません。