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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 盧泰愚韓国大統領の南北統一問題に関する特別宣言

[場所] 
[年月日] 1988年7月7日
[出典] 日本外交主要文書・年表(4),827ー829頁.外務省国内広報課「月刊国際政経情報」,1988年8月号,10−12頁.
[備考] 
[全文]

 親愛なる6,000万国民の皆様,

 私は,今日国民の念願である祖国の平和的統一を実現させていくための新共和国の政策を明らかにしたいと思います。

 我が民族が南北分断の苦痛を嘗めて来て以来既に半世紀近くになりました。

 分断の歴史は我が民族に数多い試練と苦難を与え,民族の正常な発展を妨げてきました。

 南北分断の障壁を取り除き,繁栄する統一祖国を開く道を開拓することこそ,今日を生きる我が民族皆に負わされた民族史の使命であります。

 相異なる理念と体制に分断された南北は,同族相争う戦争を犯し,南北に別れた同胞は分断の時から今日まで,お互いに不信誹謗を交わしながら敵対視する分断状況から抜け出られないままにいます。

 南北分断は我が民族の意思によるものではありませんでしたが,民族統合は我々の責任の下に我々の自主的力量で遂げられねばなりません。

 我々は南北間に和解と協力の明るい時代を真に開いていくべきであります。

 今は民族全体の福祉と繁栄のため共に努力すべき時期であります。

 今日の世界の理念と体制を超越して和解と協力の時代に向かっています。

 文化と歴史が違う民族の間でも果敢な開放と交流の新しい波が溢れています。

 私は,今こそ戦争の危険と対決の緊張が未だ残っている韓半島に平和を定着させ,統一の新転期を作るべき歴史的時点であると確信しています。

 同胞の皆様

 我々が未だに悲劇的な分断現実を克服できないままにいる根本的な理由は,南と北が民族共同体である意識に背を向けて,お互いを対決の相手と見做して敵対関係を激化させてきたところにあります。

 我が民族は1つの共同体であり,その中で生を営み民族の力と才智を集めて試練と挑戦を克服しながら,輝かしい歴史と文化伝統を創造してきました。

 したがって,南と北が共に繁栄を遂げる民族共同体としての関係を発展させていくことこそ統一祖国を実現する近道であります。

 これが即ち民族自尊の道であり民族統合の道であります。これからは南と北が分断の壁を壊して,全ての分野にわたって交流を実現させていくべきであります。

 相互信頼を回復し民族的な紐帯を強化する積極的な措置をとらねばなりません。

 また,対外的にも1つの共同体という認識を基にして,対決の関係を止揚すべきであります。

 北朝鮮が責任ある成員として国際社会に寄与し,それが,北朝鮮社会の開放と発展を促進させるよう希望します。

 南北は,国際社会で相互に,相手の位置を認め,民族全体の利益のために協力すべきであります。

 親愛なる同胞の皆様

 私は,今日,自主,平和,民主,福祉の原則に即して民族構成員全員が参加する社会,文化,経済,政治共同体を作り上げることによって,民族自尊と統一繁栄の新時代を開くことを約束するとともに,次のような政策を推進していくことを内外に宣言します。

1.政治家,経済人,言論人,宗教指導者,文化人,芸術家,学者,スポーツ関係者,学生を含め,南北同胞間の相互交流を積極的に推進すると共に,海外同胞が自由に南北往来ができるよう門戸を開放する。

2.南北赤十字会談が妥結する以前であっても,人道的見地に立ち可能な限りの総ての方法により,離散家族間における生死・住所の確認,書信往来,相互訪問等が実現されるよう積極的に周旋,支援する。

3.南北間における交易の門戸を開放し,南北間交易を民族内部における交易であるとみなす。

4.南北における総ての同胞の暮らしの質を向上させるため,民族経済の均衡ある発展が成就されることを希望すると共に,非軍事的物資の交易については,我が友邦国が北朝鮮との交易を行なうことに反対しない。

5.南北間における消耗的な競争対決外交を終結させ,北朝鮮が国際社会に対し発展的な寄与を行なえるよう協力するとともに,南北の代表が国際舞台において自由に会い,民族の共同利益のために相互に協力することを希望する。

6.朝鮮半島の平和を定着させる条件を造成するために,北朝鮮が日本・米国等我が友邦との関係を改善する上においての協力を行なう用意があり,我が方は,ソ連・中国を初めとした社会主義国との関係改善を追求する。

 私は,以上のような我が方の措置に対して,北朝鮮側にも積極的に呼応してくれることを期待する。

 北朝鮮が以上の提案に対して,肯定的な姿勢を示してくれるならば,より前進的な措置を講じていくことを明白にする。

 私は,本日のこの宣言が統一に向かっての南北間における関係改善に対して,新たな章を開く契機となるよう希望する。

 6,000万の我が同胞総ての者が知恵及び力を結集すれば,本世紀が終わる以前に,社会的・文化的・経済的共同体として統合されるであろう。

 このような基礎の上において,我々は遠くない将来の内に,1つの国として統一することができるものと信じている。