データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 大韓航空機事件安保理決議案についてのソ連の拒否権行使に関する安倍外務大臣談話

[場所] 
[年月日] 1983年9月13日
[出典] 外交青書28号,419頁.
[備考] 
[全文]

1.大韓航空機撃墜事件は,28名の日本人を含む269名の尊い人命が失われたという重大かつ衝撃的な国際事件であり,我が国は直ちに安全保障理事会に提訴した。緊急に招集された安全保障理事会においては,大韓航空機がソ連軍用機のミサイルによる攻撃を受けて撃墜された事実を世界に明らかにするため,我が国が所有するソ連機が地上と交した交信記録を米国と共同して提出した。

 安全保障理事会は世界の注視の下に6回の会合を重ね,40ヵ国以上が討議に参加した。その結果,圧倒的多数をもって,「非武装・無抵抗の民間機の撃墜は絶対に許されるべき行為ではない」との国際世論の圧力の前に,ソ連としてもソ連軍用機のミサイルによる撃墜という事実を認めざるを得なかった。

2.我が国は,14国の友邦諸国と共同し,決議案を上程したが,同決議案の骨子は,本事件に対する深い憂慮の意の表明,このような武力行使が人道上も国際法上も認められないこと,国際民間航空機の安全を確保するためICAOに協力すべきこと,国連事務総長への全面的調査要請等である。

 同決議案は,国際世論を代表するものであり,安全保障理事会の討議において圧倒的多数が同決議案の内容に賛成を表明した。

3.それにもかかわらず,ソ連は責任を認めないばかりか,責任を第三国に転嫁せんとの態度に終始し,のみならず,同決議案の表決に際しては,拒否を行使する暴挙に出た。かかるソ連の厚顔無恥の態度は何人も許さないであろう。そして,ソ連がかかる理不尽不誠実な対応を続けていることに対しては,我が国は,友邦諸国と共同し,今後とも,国際場裏において,真相の究明と責任の追求のためあらゆる努力を続ける所存である。