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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 第9回日韓定期閣僚会議共同コミュニケ

[場所] 東京
[年月日] 1977年9月6日
[出典] 外交青書22号,374−377頁.
[備考] 
[全文]

1.第9回日韓定期閣僚会議は,1977年9月5日及び6日の両日,東京において開催された。

  会議には,日本側からは,鳩山威一郎外務大臣,坊秀男大蔵大臣,鈴木善幸農林大臣,田中龍夫通商産業大臣,倉成正経済企画庁長官,石原慎太郎環境庁長官が須之部量三駐韓大使とともに出席した。

  韓国側からは,南悳祐副総理兼経済企画院長官,朴東鎮外務部長官,金龍煥財務部長官,崔●{王に玉}圭農水産部長官,張禮準商工部長官,申鉉●{石に高}保健社会部長官が金永善駐日大使とともに出席した。

2.会議は,次の事項を議題として採択し,討議した。

 (1) 国際情勢及び両国関係一般

 (2) 両国の経済情勢

 (3) 日韓経済関係

 (4) その他

3.両国の閣僚は,現下の国際情勢一般及びアジア情勢について隔意なき意見を交換した。

  両国の閣僚は,日韓両国の善隣,友好,協力関係が東アジアの平和と安定に大きく貢献するとの認識を共にした。

  両国の閣僚は,この地域における緊張緩和を促進し,より安定した平和をもたらすための適切な国際的努力がなされることが重要であり,両国はこのために緊密に協力していくべきであることを確認した。

4.韓国側閣僚は,朝鮮半島情勢に言及し,在韓米地上軍の撤退問題に関し,先般行われた韓米安保協議会の成果について説明した。日本側閣僚は,韓米両国がこの問題について密接な協議を行つていることに関心をもつて留意し,今後ともこの地域の平和と安定を損なわないような形で取り進められることが重要であるとの考え方を述べた。

  韓国側閣僚は,朝鮮半島の緊張緩和と平和定着,更に平和的統一達成のために,今後とも忍耐と誠意をもつて南北対話の速やかなる再開のための努力を継続することを表明した。

  日本側閣僚は,このような韓国政府と国民の努力を高く評価し,朝鮮半島の緊張緩和と平和定着のために南北対話が速やかに再開され,朝鮮半島の統一が平和的な方法で達成されることを強く希望した。

5.両国の閣僚は,最近の日韓関係について検討し,意見を交換した。

  両国の閣僚は,両国間の友好関係が順調に発展していることに満足の意を表明した。両国の閣僚は,両国の発展と繁栄が相互に密接な関係にあることに鑑み,広く国民的基盤に立脚した善隣友好関係が発展することが望ましいことを認識し,今後とも政治,経済のみならず,学術,文化等を含むあらゆる分野において,交流と協力を一層緊密に進めることの必要性について意見の一致をみた。

  両国の閣僚は,1974年1月30日に両国政府間で署名された日本国と大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚の北部の境界画定に関する協定および日本国と大韓民国との間の両国に隣接する大陸棚の南部の共同開発に関する協定が,速やかに発効することが,石油エネルギー資源に乏しい両国にとつて極めて望ましいとの見解を再確認した。

  韓国側閣僚は,在日韓国人の福祉増進に関連した諸問題に関し,日本政府の格別な配慮を要望し,これに対し日本側閣僚は,引き続き好意的に検討することを約束した。

  両国の閣僚は,環境問題の重要性に鑑み,日韓両国が今後,この問題について緊密な協調関係を維持していくことに意見の一致をみた。

6.両国の閣僚は,最近の海洋秩序が大きく変りつつあることに留意し,新しい海洋秩序の成立のための国際的な努力において両国が緊密に協調していくこと,及びかかる新しい海洋秩序をふまえつつ,両国間の円滑な漁業関係のため両国が密接に協力していくことが望ましいことに意見の一致をみた。

7.両国の閣僚は,両国の経済情勢に関して検討した。

  日本側閣僚は,日本政府が物価の動向に配慮しつつ,内需の拡大を通ずる景気の回復をより一層確実なものとするべく,財政金融両面にわたる各般の景気対策を実施していることを強調し,さらに今後とも一連の景気対策の効果の一層の浸透を図るとともに,事態の推移に即応した機動的な対策を講じ,もつて世界経済の健全な発展にも貢献する所存である旨説明した。

  韓国側閣僚は,1976年の韓国経済が物価,国際収支及び経済成長において,安定と成長趨勢を取りもどしたことを説明し,第4次経済開発5カ年計画の初年度である1977年には,国際収支の改善,国民貯蓄の増大,物価の安定等の安定基盤の構築,産業の国際競争力強化及び社会開発の拡大等に施策の重点を置いていることを説明した。また,韓国側閣僚は,1977年の韓国経済は安定傾向を維持し,7月まで産業生産,輸出等が堅実に伸張し,今年の成長目標10%は達成される見通しであることを述べた。

8.両国の閣僚は,世界経済の安定的発展を確保するとの観点に立つて,自由な国際貿易の維持発展のために努力することが必要であることに意見の一致をみた。

  両国の閣僚は,日韓貿易の均衡的拡大の必要性に留意しつつ,両国の利益の増進に資するべく今後の貿易関係の健全な発展の実現のため相互に積極的な努力を傾注することにつき意見の一致をみた。

  また,両国の閣僚は,本年中に開催することが合意されている第14回日韓貿易会議において両国貿易の発展について率直な意見の交換が行われることを希望する旨表明した。

9.両国の閣僚は,両国間の経済協力に関して意見を交換した。

  両国の閣僚は,本年3月開催された国際復興開発銀行主催の対韓国協議グループ会議において,韓国の第4次経済開発5カ年計画の開発の諸目標を達成するためには,同計画期間中引き続き中長期借款の適切な導入が必要であると認められたことに注目しつつ,両国間の経済協力関係が今後も一層増進されることが望ましいことについて意見の一致をみた。

  両国の閣僚は,韓国の第4次経済開発5カ年計画の事業のうち,政府ベースの協力を必要とする案件については,農業開発を含む経済,社会基盤施設の整備拡充等,均衡ある経済発展のため開発が必要とされる分野を中心に,政府間実務者レベルの協議を通じ検討の上適切な案件につき具体化していくことに意見の一致をみた。

10.両国の閣僚は,両国間の科学技術協力がこれまで順調に進行していることに留意し,今後もこの分野での協力を拡充していくことに意見の一致をみた。

11.両国の閣僚は,両国間の民間経済交流について意見を交換した。

  両国の閣僚は,最近の韓国掲示の着実な成長に伴う民間経済交流の順調な発展に留意しつつ,両国国民の善隣友好および共同利益の増進に資する見地から,今後ともこの分野の交流が,韓国の第4次経済開発5カ年計画の期間を通じ,一層増大されることが望ましいことに意見の一致をみた。

12.両国の閣僚は,今回の会議が終始友好的な雰囲気の中で運営され,両国の相互理解と友好協力関係の増進のために極めて有益であつたことに対し満足の意を表明した。

  また,両国の閣僚は,第10回日韓定期閣僚会議を来年ソウルで開催すること,およびその細目は今後外交経路を通じて決定することに合意した。

  韓国側閣僚は,第9回日韓定期閣僚会議に際し,日本国政府と同国民から示された歓迎に対し,深甚な謝意を表明した。