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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 航空業務に関する日本国政府と大韓民国政府との間の協定 (略称)韓国との航空協定

[場所] 東京
[年月日] 1967年5月16日
[出典] 外務省条約局,条約集(昭和42年 二国間条約)261‐279頁
[備考] 目次は省略
[全文]

昭和四十二年五月十六日 東京で署名

昭和四十二年七月二十一日 国会承認

昭和四十二年八月二十九日 承認の閣議決定

昭和四十二年八月三十日 ソウルで承認通知書の交換

昭和四十二年八月三十日 効力発生

昭和四十二年八月三十日 公布及び告示

            (条約第一二号)


 航空業務に関する日本国政府と大韓民国政府との間の協定

前文

 日本国政府及び大韓民国政府は、

 両国が千九百四十四年十二月七日にシカゴで署名のため開放された国際民間航空条約の当事国であるので、また、

 それぞれの領域の間の及びその領域をこえての航空業務を開設し、かつ、運営するために協定を締結することを希望するので、

 次のとおり協定した。

 第一条

定義

1 この協定の適用上、文脈により別に解釈される場合を除くほか、

 (a)「条約」とは、千九百四十四年十二月七日にシカゴで署名のため開放された国際民間航空条約をいい、かつ、同条約第九十条の規定に基づいて採択される附属書並びに同条約第九十条及び第九十四条の規定に基づいて行なわれる同附属書又は同条約の改正を含む。

 (b)「航空当局」とは、日本国にあつては運輸大臣及び同大臣が現在遂行している民間航空に関する任務又はこれに類似する任務を遂行する権限を有する人又は機関をいい、大韓民国にあつては交通部長官及び同長官が現在遂行している民間航空に関する任務又はこれに類似する任務を遂行する権限を有する人又は機関をいう。

 (c)「指定航空企業」とは、第三条の規定に従い、一方の締約国が、他方の締約国に対し、通告書により、その通告書に定める路線における航空業務の運営について指定し、かつ、当該他方の締約国が適当な運営許可を与えた航空企業をいう。

 (d)「航空業務」、「国際航空業務」、「航空企業」及び「運輸以外の目的での着陸」という語は、条約第九十六条においてそれぞれ定める意味を有する。

 (e)「附表」とは、この協定の附表又は第十四条の規定に従つて改正される同附表をいう。

2 附表は、この協定の不可分の一部をなすものとし、「協定」というときは、別段の定めがある場合を除くほか、附表を含むものとする。

 第二条

協定業務の開設

 各締約国は、他方の締約国に対し、その指定航空企業が附表に定める路線(以下「特定路線」という。)における国際航空業務(以下「協定業務」という。)を開設し、かつ、運営することができるようにするため、この協定で定める権利を許与する。

 第三条

協定業務開始の手続

1 いずれの特定路線における協定業務も、第二条の規定に基づいて権利を許与された締約国の選択により、即時又は後日開始することができる。ただし、第十条の規定に従うことを条件とし、かつ、次のことが行なわれた後でなければならない。

 (a)権利を許与された締約国が当該路線について一又は二以上の航空企業を指定すること。

 (b)権利を許与する締約国が当該航空企業に対し自国の法令に従つて適当な運営許可を与えること。その締約国は、2及び第六条1の規定に従うことを条件として、遅滞なくこの許可を与えなければならない。

2 一方の締約国の航空当局は、他方の締約国が指定した航空企業が、その航空当局により条約の規定に従つて国際航空業務の運営に通常かつ合理的に適用される法令で定める要件を満たすものである旨を立証することを、その航空企業に要求することができる。

 第四条

指定航空企業の享有する特権

1 各締約国の指定航空企業は、この協定の規定に従うことを条件として、特定路線における協定業務を運営する間、次の特権を享有する。

 (a)他方の締約国の領域を無着陸で横断飛行する特権

 (b)運輸以外の目的で他方の締約国の領域に着陸する特権

 (c)国際運輸の対象たる旅客、貨物及び郵便物の積卸し及び積込みのため、その特定路線について附表で定める他方の締約国の領域内の地点に着陸する特権

2 1の規定は、一方の締約国の航空企業に対し、有償又は貸切りで他方の締約国の領域内の別の地点に向けて運送される旅客、貨物又は郵便物をその領域内において積み込む特権を与えるものとみなしてはならない。

 第五条

施設使用料

1 各締約国がその管理の下にある空港その他の施設の使用について他方の締約国の指定航空企業に課し、又は課することを許す料金は、公正かつ合理的なものでなければならず、また、最恵国の航空企業又は国際航空業務に従事する自国の航空企業が当該空港その他の施設を使用するため支払う料金よりも高額のものであつてはならない。

燃料、部品等に対する関税

2 一方の締約国の領域内に他方の締約国の指定航空企業により若しくはその名において持ち込まれ、又は前記の領域内で他方の締約国の指定航空企業により若しくはその名において航空機上に積載される燃料、潤滑油、予備部品、正規の航空機装備品及び航空機貯蔵品で、その指定航空企業の航空機により又はその航空機内で使用することのみを目的とするものは、関税、検査手数料及びこれらに類似する国又は地方公共団体が課する租税その他の課徴金について、税関の通常の規制に服することを条件として、当該一方の締約国により次の待遇を与えられるものとする。

 (a)航空機が前記の領域に到着した際に積載している燃料、潤滑油、予備部品、正規の航空機装備品及び航空機貯蔵品で、その領域から出発する際にも積載しているものについては、免除

 (b)(a)に含まれない燃料、潤滑油、予備部品、正規の航空機装備品及び航空機貯蔵品については、前記の領域内に持ち込まれ、又はその領域内で航空機上に積載される同様の物品で、最恵国の航空企業若しくは国際航空業務に従事する当該一方の締約国の航空企業の航空機により又はその航空機内で使用することを目的とするものに与えられる待遇よりも不利でない待遇。この待遇は、各締約国が条約第二十四条の規定に基づいて与える義務を負う待遇に加えて与えられるものでなければならず、かつ、これを害するものであつてはならない。もつとも、いずれの締約国も、自国の指定航空企業に対して他方の締約国が関税、検査手数料又はこれらに類似する国若しくは地方公共団体が課する租税その他の課徴金の免除又は払戻しを行なわない限り、他方の締約国の指定航空企業に対し、当該関税、検査手数料又はこれらに類似する国若しくは地方公共団体が課する租税その他の課徴金の免除又は払戻しを行なう義務を負わないものとする。

 第六条

特権の制限及び停止

1 各締約国は、他方の締約国が指定した航空企業の実質的な所有及び実効的な支配がその航空企業を指定した締約国又はその国民に属していないと認めた場合には、その航空企業に対して第四条1に定める特権を与えず、若しくは取り消し、又は、その航空企業によるそれらの特権の行使について、必要と認める条件を課する権利を留保する。

2 各締約国は、他方の締約国の指定航空企業が1にいう特権を許与する締約国の法令を遵守しなかつた場合又はこの協定で定める条件に従つて運営しなかつた場合には、その航空企業による前記の特権の行使を停止し、又は、その航空企業によるそれらの特権の行使について、必要と認める条件を課する権利を留保する。ただし、この権利は、即時に特権の行使を停止し又は即時にこれに条件を課することが、法令にさらに違反するすることを防止するため又は航行の安全上の理由により必要である場合を除くほか、他方の締約国と協議した後にのみ行使しなければならない。

 第七条

機会均等の原則

 両締約国の指定航空企業は、両締約国の領域の間の特定路線において協定業務を運営する公平かつ均等な機会を有する。

 第八条

相手国航空企業の利益の考慮

 いずれか一方の締約国の指定航空企業が協定業務を運営するにあたつては、他方の締約国の指定航空企業が同一路線の全部又は一部において提供する業務に不当な影響を及ぼさないように、当該他方の締約国の指定航空企業の利益を考慮しなければならない。

 第九条

運送力

 いずれか一方の締約国の指定航空企業が提供する協定業務は、その航空企業を指定した締約国の領域への及びその領域からの当該時期における運輸需要及び予測される運輸需要に適合する運送力を供給することを第一の目的としなければならず、他方の締約国の領域において積み込まれ又は積み卸される貨客を、その航空企業を指定した国以外の国の領域内の特定路線上の地点へ向けて又はこれらの地点から運送することは、補足的性格を有するものとする。その航空企業が特定路線上の地点で他方の締約国の領域内にあるものと第三国にある地点との間で貨客を運送する権利は、輸送力が次のものに関連を有するように、国際航空運送の秩序ある発展のために行使されなければならない。

 (a)その航空企業を指定した締約国の領域への及びその領域からの運輸需要

 (b)その航空業務が経由する地域の地方的及び地域的航空業務を考慮した上でのその地域の運輸需要

 (c)直通航空路の経済的運営の要求

 第十条

運賃

1 いずれの協定業務に対する運賃も、運営の経費、合理的な利潤、業務の特性(たとえば、速力及び設備の程度)及び特定路線のいずれかの部分についての他の航空業務の運賃を含むすべての関係要素に十分な考慮を払い、合理的な水準に定めなければならない。

2 これらの運賃は、次の規定に従つて定めるものとする。

 (a)1に規定する運賃及びこれに関連して使用される代理店手数料率は、可能なときは、各特定路線の全部及び一部に関して、関係指定航空企業の間で合意しなければならない。この合意は、可能なときは、国際航空運送協会の運賃決定機関を通じて行なうものとする。合意された運賃は、両締約国の航空当局の許可を受けなければならない。

 (b)関係指定航空企業が運賃に関して合意することができなかつた場合又は運賃に関し他のなんらかの理由により(a)の規定に従つて合意することができなかつた場合には、両締約国の航空当局は、相互の間の合意によりその運賃を決定するように努めなければならない。

 (c)いずれか一方の締約国の航空当局が(a)の規定に基づいて提出された運賃を許可しなかつた場合又は両締約国の航空当局が(b)の規定に基づき運賃を決定できなかつた場合には、紛争は、第十三条の規定に従つて解決しなければならない。

 (d)新たな運賃は、いずれか一方の締約国の航空当局が当該運賃について満足しない場合には、効力を生じないものとする。ただし、第十三条4の規定に基づく場合は、この限りでない。この条の規定に従つて運賃が決定されるまでの間は、すでに実施されている運賃が適用されるものとする。

 第十一条

情報及び統計の提出

 一方の締約国の航空当局は、他方の締約国の航空当局の要請があつたときは、その航空当局に対し、自国の指定航空企業が他方の締約国の領域への及びそこからの協定業務において運送する貨客に関する情報及び統計で、通常当該指定航空企業が公表のために作成して自国の航空当局に提出するものを提供しなければならない。一方の締約国の航空当局が他方の締約国の航空当局に対し要求することがある貨客に関する追加の統計資料については、要請があつたあときは、両締約国の航空当局の間で討議を行なうものとする。

 第十二条

定期的協議

 両締約国の航空当局は、この協定の実施に関するすべての事項について緊密な協力を確保するため、定期的にしばしば協議しなければならない。

 第十三条

紛争の解決

1 この協定の解釈又は実施に関する両締約国間の紛争は、まず、外交上の経路を通じて解決するものとする。

2 1の規定により解決することができなかつた紛争は、いずれか一方の締約国の政府が他方の締約国の政府から紛争の仲裁を要請する公文を受領した日から三十日の期間内に各締約国政府が任命する各一人の仲裁委員と、こうして選定された二人の仲裁委員が当該期間の後の三十日の期間内に合意する第三の仲裁委員又は当該期間内にその二人の仲裁委員が合意する第三国の政府が指名する第三の仲裁委員との三人の仲裁委員からなる仲裁委員会に決定のため付託するものとする。ただし、第三の仲裁委員は、両締約国のうちいずれかの国民であつてはならない。

3 いずれか一方の締約国の政府が当該期間内に仲裁委員を任命しなかつたとき、又は第三の仲裁委員若しくは第三国について当該期間内に合意されなかつたときは、仲裁委員会は、両締約国政府のそれぞれが三十日の期間内に選定する国の政府が指名する各一人の仲裁委員とそれらの政府が協議により決定する第三国の政府が指名する第三の仲裁委員をもつて構成されるものとする。

4 両締約国政府は、この条の規定に基づく仲裁委員会の決定に服するものとする。

 第十四条

協定又は附表の改正

 いずれの一方の締約国も、この協定を改正するため、いつでも、他方の締約国との協議を要請することができる。この協議は、要請を受領した日から六十日の期間内に開始しなければならない。改正が附表についてのみ行なわれる場合には、協議は、両締約国の航空当局の間で行なうものとする。両締約国の航空当局が新たな又は修正された附表について合意したときは、その合意した改正は、外交上の公文の交換によつて確認された後に効力を生ずる。

 第十五条

航空運送に関する国際条約との関係

 航空運送に関する多数国間の一般的な条約が両締約国について効力を生じたときは、この協定は、その条約の規定に適合するように改正しなければならない。

 第十六条

終了通告

 いずれの一方の締約国も、他方の締約国に対し、この協定を終了させる意思をいつでも通告することができる。その通告の写しは、国際民間航空機関に対し同時に送付しなければならない。その通告があつたときは、この協定は、他方の締約国が終了通告を受領した日の後一年で終了するものとする。ただし、両締約国間の合意によりその通告が前記の一年の期間が経過する前に取り消された場合は、この限りでない。他方の締約国が通告の受領を確認しなかつたときは、国際民間航空機関がその通告の写しを受領した日の後十四日を経過した時に通告が受領されたものとみなす。

 第十七条

登録

 この協定及びその改正は、国際民間航空機関に登録しなげればならない。

 第十八条

承認の通知による効力発生

 この協定は、各締約国によりその憲法上の手続に従つて承認されなければならず、その承認を通知する外交上の公文の交換の日に効力を生ずる。

末文

 以上の証拠として、下名は、各自の政府により正当に委任を受け、この協定に署名した。

 千九百六十七年五月十六日に東京で、ひとしく正文である日本語、韓国語及び英語により本書二通を作成した。解釈に相違がある場合には、英語の本文による。

日本国政府のために

 三木武夫

大韓民国政府のために

 金東●{しめすへんに作のつくり}


附表

運営路線

1 日本国の一又は二以上の指定航空企業が両方向に運営する路線

 (a)日本国内の地点−ソウル及び以遠の地点

 (b)日本国内の地点−釜山及び以遠の地点

 注 日本国の指定航空企業は、路線(a)及び(b)において三をこえる異なる以遠の地点に運航することができない。

2 大韓民国の一又は二以上の指定航空企業が両方向に運営する路線

 (a)大韓民国内の地点−東京(北太平洋経由)−シアトル

 (b)大韓民国内の地点−大阪−台北−香港

 (c)大韓民国内の地点−福岡

3 いずれか一方の締約国の一又は二以上の指定航空企業が行なう協定業務は、その締約国の領域内の一地点を起点とするものでなければならない。ただし、いずれの路線上の他の地点も、いずれかの又はすべての飛行にあたつて、その指定航空企業の選択により省略することができる。


(参考)

 この協定は、わが国と韓国との間に定期航空業務を開発することを目的とし、業務運営に必要な権利を相互に許与すること及び業務運営についての手続と条件を規定するとともに、それぞれの国の航空企業が業務を行なうことができる路線を定めているものである。