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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日韓基本条約の関係諸協定,日韓請求権並びに経済協力協定(財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定),交換公文(第一議定書の実施細目に関する交換公文)

[場所] 東京
[年月日] 1965年6月22日
[出典] 日本外交主要文書・年表(2),589−591頁.外務省条約局「条約集・昭和40年(二国間条約)」.
[備考] 
[全文]

   (日本側書簡)

 書簡をもつて啓上いたします。本大臣は、本日署名された財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する日本国と大韓民国との間の協定(以下「協定」という。)の第一議定書(以下「議定書」という。)に言及する光栄を有します。日本国政府は、両国政府が議定書第七条の規定に基づいて次のとおり合意することを提案いたします。

    I 実施計画

1 議定書第一条の年度実施計画(以下「実施計画」という。)は、両政府がその始期及び終期を合意する年度について決定されるものとする。

2 実施計画の決定は、原則として次のとおり行なわれるものとする。

(a)第一年度を除く各年度の実施計画は、その適用される年度の開始に先だつて決定される。このため当該年度の実施計画は、その年度の開始の少なくとも六十日前に協議のため日本国政府に提出される。

(b)第一年度の実施計画は、協定の効力発生の日から六十日以内に決定される。このため同年度の実施計画は、できる限りすみやかに日本国政府に提出される。

3 実施計画は、当該年度中に大韓民国による調達が予定されている日本国の生産物及び日本人の役務を掲げるものとする。

4 実施計画は、両政府間の合意により修正することができる。

    II 契約

1 議定書第三条1の契約は、日本円で通常の商業上の手続によつて締結されるものとする。

2 議定書第三条2の契約(以下「契約」という。)の実施に関する責任は、議定書第五条1の使節団(以下「使節団」という。)又は大韓民国政府の認可を受けた者及び議定書第三条1の日本国民又は日本国の法人で、契約の当事者であるもののみが負うものとする。

3 議定書第三条3の適用上、商事仲裁委員会とは、契約のいずれか一方の当事者が仲裁への付託を要請した場合における他方の当事者が居住する国にある商事仲裁機関をいう。

    III 支払

1 大韓民国政府は、日本国の法律に基づき外国為替公認銀行として認可され、かつ、日本国民によつて支配されている日本国の銀行のうちから、議定書の実施に関する業務を行なう銀行を指定する。

2 使節団又は大韓民国政府の委任をうけた機関(以下「機関」という。)は、1に規定する指定銀行と取極を行ない、大韓民国政府の名義で特別勘定を開設してそれらの銀行に日本国政府からの支払の受領等を授権し、かつ、日本国政府に対しその取極の内容を通告するものとする。特別勘定は、利子を附さないものとする。

3 使節団又は機関は、契約の規定に基づいて支払の義務が生ずる期日前に十分な余裕をもつて、支払金額、2の指定銀行のうち支払が行なわれるべき銀行(以下「銀行」という。)の名称及び使節団又は機関が関係契約者に支払を行なうべき期日を記載した支払請求書を日本国政府に送付するものとする。

4 日本国政府は、支払請求書を受領したときは、使節団又は機関が関係契約者に支払を行なうべき期日前に、銀行に請求金額を支払うものとする。

5 日本国政府は、また、議定書第三条4の規定に従つて両政府が合意する供与に係る支払を、4に定めるのと同様の方法で、行なうものとする。

6 4及び5の規定に基づいて日本国政府が支払う金額は、特別勘定に貸記するものとし、他のいかなる資金も、特別勘定に貸記されないものとする。特別勘定は、3及び5の目的のためにのみ借記を行なうものとする。

7 使節団又は機関が特別勘定に貸記された資金の全部又は一部を契約の解除その他によつて引き出さなかつた場合には、未払金額は、両政府間の協議により3及び5の目的のための支払に充てられるものとする。

8 特別勘定から支払われた金額の全部又は一部が使節団又は機関に返還された場合には、その返還された金額は、6の規定にかかわらず、特別勘定に貸記するものとする。その返還された金額は、両政府間の協議により、3及び5の目的のための支払に充てられるものとする。

9 議定書第四条2の規定の適用上「支払を行なつた時」とは、支払が日本国政府により銀行に対して行なわれた時をいう。

10 日本国が議定書第四条2の規定に従い大韓民国に供与したものとみなされる生産物及び役務の額の決定に当たつては、日本円で支払われた金額から換算される合衆国ドルの等価額が計算の基礎となるものとする。前記の換算に用いられる為替相場は、日本国政府が正式に決定し、かつ、国際通貨基金が同意した日本円の合衆国ドルに対する平価で、次に掲げる日に適用されているものとする。

(a)契約に関する支払の場合には、日本国政府が当該契約を認証した日

(b)その他の場合には、各場合につき両政府間で合意する日。ただし、合意した日がないときは、日本国政府が支払請求書を受領した日とする。

    IV使節団

 大韓民国政府は、契約に関して使節団を代表して行動する権限を与えられる使節団の長その他の職員の氏名を日本国政府に随時通知するものとし、日本国政府は、その氏名を日本国の官報で公示するものとする。この使節団の長その他の職員の権限は、日本国の官報で別段の公示がされるまでの間は、継続しているものとみなされる。

 本大臣は、さらに、この書簡及び前記の提案の貴国政府による受諾を確認される閣下の返簡を、議定書第七条の規定に基づく議定書の実施に関する細目についての両政府間の合意を構成するものとみなすことを、議定書のその他の手続細目は両政府の当局の間で合意するとの了解の下に、提案する光栄を有します。

 本大臣は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。

  千九百六十五年六月二十二日に東京で

     日本国外務大臣 椎名悦三郎

 大韓民国外務部長官 李東元閣下

   (韓国側書簡)

(訳文)

 書簡をもつて啓上いたします。本長官は、本日付けの閣下の次の書簡を受領したことを確認する光栄を有します。

   (日本側書簡)

 本長官は、閣下の書簡に述べられた提案に本国政府に代わつて同意し、さらに、閣下の書簡及びこの返簡を、財産及び請求権に関する問題の解決並びに経済協力に関する大韓民国と日本国との間の協定の第一議定書の実施に関する細目についての両国政府間の合意を構成するものとみなすことに同意する光栄を有します。

 本長官は、以上を申し進めるに際し、ここに重ねて閣下に向かつて敬意を表します。

  千九百六十五年六月二十二日に東京で

         外務部長官 李東元

 日本国外務大臣 椎名悦三郎閣下