データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日韓共同コミュニケ

[場所] 
[年月日] 1965年2月20日
[出典] 外交青書9号,26−27頁.
[備考] 
[全文]

 椎名悦三郎日本国外務大臣は李東元大韓民国外務部長官の招待により,一九六五年二月十七日から二十日まで大韓民国を訪問した。両外相はこの間三回にわたり友好的な雰囲気のうちに会談を行なった。椎名外務大臣はこのほか,朴正煕大統領に謁見し,李孝祥国会議長,丁一権国務総理および張基栄副総理兼経済企画院長官を表敬訪問した。

 椎名外務大臣と李外務部長官は現下の国際情勢ならびに現在進行中の日韓全面会談その他両国が共通の関心を持っている諸問題について意見を交換した。両外相はアジアをはじめ世界のその他の地域のすべての人々のために,正義と自由と繁栄とにもとづく平和を維持することが両国の共通の目的であり,日韓全面会談の妥結は日韓両国にとって著しい利益であるばかりでなく,自由世界全体のためになるものであることを再確認した。

 李外務部長官は過去のある期間に両国民間に不幸な関係があったために生まれた,韓国民の対日感情について説明した。椎名外務大臣は李外務部長官の発言に留意し,このような過去の関係は遺憾であって,深く反省していると述べた。椎名外務大臣は,日韓会談を誠実に進めて両国間に新しい友好関係を樹立していくことこそが,正義と平等と相互の尊敬とに基づく両自由国民の繁栄をもたらすものであるとの強固な信念を披瀝した。

 両外相は日韓全面会談の最近の交渉経過を検討した。両外相は正当かつ公正な基礎において会談を速やかに妥結させるため,最大限の努力を払うとの固い決意を表明した。

 両外相は日本国と大韓民国との間の基本関係に関する条約案に本日イニシアルがなされたことに満足の意を表明した。両外相はこのことが両国間のその他の懸案を全面的に解決するための重要な一歩となると意見が一致した。

 両外相は在日韓国人の法的地位ならびに待遇に関して現在進行中の討議が結実し,これによって在日韓国人が平和な幸福なそして安定した生活を営なんでいくことを希望した。両外相はさらにこの問題の円満な解決が日韓両国民間の友好増進のための重要な橋渡しになることを認めた。

 両外相は両国間の漁業問題を合理的に解決することが望ましいと述べ,さらにこの解決が両国の漁民の利益に合致したものとなるべきであると述べた。両外相は,この問題の妥当な解決を探求するため両国の農相会談ができるだけすみやかに開催されることを希望した。

 両外相は両国間に健全で相互に利益のある貿易関係を維持することがきわめて重要であることを再確認し,両国政府がより均衡した基礎で相互間の貿易を拡大するため緊密に協力すべきであると意見が一致した。

 このことを念頭において,両外相は,両国の輸出力増強の可能性の問題を含め両国間の貿易関係を討議するためできるだけ早い機会に会議を開くことに意見が一致した。

 椎名外務大臣は李外務部長官に対し,日本国を訪問するよう招請した。李外務部長官はこの招待を喜んで受諾し,できるだけ早く訪日したいとの希望を述べた。

 両外相はこの会談が非常に実り多いものであり,両国間の諸懸案ならびにその他共通に関心を持っている諸問題について相互理解を深めたと意見が一致した。両外相はさらに,李外務部長官が日本国を訪問した際に行なわれる会談で討議を続けることに意見が一致した。