データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] メイジャー英首相歓迎晩餐会における細川内閣総理大臣の挨拶

[場所] 
[年月日] 1993年9月20日
[出典] 細川内閣総理大臣演説集,71−72頁.
[備考] 
[全文]

 メイジャー首相閣下、令夫人、御列席の皆様、

 本日、ここに、ジョン・メイジャー首相閣下の御一行をお迎えし、また、これまで日英関係に様々な形で関わってこられた皆様方をお迎えしてこの席を設けさせていただくことを大変光栄に存じます。

 日英両国には、「日英同盟」以来の歴史的関係がありますし、海洋国家としての地政学的な共通性もありますが、それに加えて精神的な面での共通性もあるのではないかと感じております。

 日英関係においては、「三浦按針」として知られる、四百年前に江戸幕府の外交顧問として活躍した英国人ウィリアム・アダムズ、明治時代の外交官アーネスト・サトウ、或いはわが国の文豪である夏目漱石、森鴎外といった人々を通じ、日本人は誰もが英国に格別の親しみを感じております。

 また、英国は一世紀以上も前に「政治腐敗防止法」を導入し、近代議会主義の基礎を確立しましたが、わが国は遅まきながら今、本格的に政治改革の実現に取り組み始めております。

 この八月、日本では政治の歴史に新たなページがめくられました。約四十年振りの政権交替によって誕生した私の内閣は、八党派の連立によるものであるため、これを「ガラス細工の政権」だと評して早く壊れることを期待する向きもあるようですが、近頃のガラス細工はなかなか頑丈に出来ており、残念ながらその期待通りにはならないと思っております。

 わが国の政治史において記念すべきこの内閣が初めての公式の賓客としてお迎えしたのがメイジャー首相御一行であることは、これからの日英両国間の関係にとって非常に象徴的な意味合いをもつものであるように感じます。

 ここに、今回のメイジャー首相の訪日が新時代の日英関係の幕開けとなることを希望し、また、日英両国民の一層の友好・親善を祈念して、杯を上げたいと存じます。