データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] ファン・アフト=オランダ首相夫妻の訪日に際しての共同新聞発表

[場所] 東京
[年月日] 1980年4月24日
[出典] 外交青書25号,418−419頁.
[備考] 
[全文]

1.アンドリース・ファン・アフト=オランダ王国首相及び同夫人は,日本国政府の招待により,1980年4月21日より25日まで日本を公式訪問した。ファン・アフト首相は,日本を訪問した最初のオランダの首相である。

2.滞日中,ファン・アフト首相夫妻は,天皇皇后両陛下より謁見を賜った。ファン・アフト首相は,大平正芳総理大臣と意見交換を行った。同首相はまた,佐々木義武通商産業大臣と会談を行ったほか,日本側経済団体代表とも懇談した。これらの会談は,極めて良好な日蘭関係を反映して,誠実かつ相互理解の雰囲気の裡に行われた。

3.ファン・アフト首相の滞日中,17世紀に遡る両国の文化関係の新たな基礎となる文化協定が署名された。

4.また,オランダ王国政府を代表してファン・アフト首相より,日本国政府に対し,オランダ船デ・リーフ号の彫刻が贈呈された。デ・リーフ号は1600年4月19日オランダ船として初めて日本に到着したものであり,建設的かつ実りある両国関係の端緒を開くこととなった。

 同彫刻の除幕式は,ファン・アフト首相及び伊東官房長官立合いのもとに行われた。

5.総理及び首相は,共通の関心を有する諸問題について忌憚のない友好的な意見交換を行うとともに,世界における最近の政治及び経済の動向に関する双方の見解の一致に満足の意をもって留意した。

 また,総理及び首相は,今日の世界は一方において相互依存の増大を,また,他方において不安の増大を特徴とするとの見解を共にし,先進民主主義国として日本とオランダはより大きな安定と繁栄のため緊密なパートナーシップの下で行動することが不可欠であるとの考えを表明した。

 総理及び首相は,近年両国の当面する諸問題の多くが2国間及び多国間の枠組における協議の対象となったことに満足の意をもって留意した。

6.総理及び首相は,世界の安定に脅威をもたらす最近の国際的動向,就中ソ連のアフガニスタンへの軍事介入及びテヘランにおける米大使館員人質事件に関し深刻な憂慮の念を表した。

 総理及び首相は,テヘランにおける米大使館員人質の早期解放を実現し,アフガニスタン国民が自らの将来を決定しうるよう先進民主主義諸国及び他の友邦諸国が一致団結すべきことについて合意した。

7.総理及び首相は,世界経済が直面する深刻な諸問題に対処するためにたゆまざる努力を続ける必要があることにつき意見の一致をみた。

 総理及び首相は,特にエネルギー問題に関心を払うとともに世界経済の持続的発展,インフレの抑制及び雇用の拡大が緊要であることを指摘した。

 総理及び首相は,このような観点から自由かつ開放された貿易体制を維持・強化することが重要であることを強調した。

8.総理及び首相は,公正かつ衡平な新しい国際経済秩序の樹立に向かっての開発途上国の願望と意欲に対し共鳴の意を表するとともに,両国政府は,現在先進国と開発途上国の間で進められている南北対話を一層推進するために最大限の努力を傾注する決意であることを確認した。

9.総理及び首相は,日蘭両国の友好関係があらゆる分野で良好に進展してきたことに対し満足の意を表明した。

 総理及び首相は,2国間貿易の調和のとれた発展を促進させる重要性を強調するとともに日蘭両国の貿易促進使節団の相互派遣等の努力を歓迎した。

 総理及び首相は,特に投資交流の促進及び,例えば共同研究・開発などの分野におけるその他の協力活動を通じる産業協力の重要性を強調した。

10.ファン・アフト首相は,大平総理大臣にオランダ王国を訪問するよう招待した。大平総理大臣は,この招待を深甚なる謝意とともに受諾した。