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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 三木内閣総理大臣によるジャック・シラック首相(フランス)歓迎晩餐会における挨拶

[場所] 
[年月日] 1976年7月29日
[出典] 三木内閣総理大臣演説集,179−181頁.
[備考] 
[全文]

 ジャック・シラック首相閣下、令夫人ならびに御列席の皆様、

 この度、遠路はるばる来訪されたシラック首相閣下及び同令夫人、ならびに随行のソーヴァニャルグ外務大臣、パール貿易大臣同令夫人他御一行をお迎えし、今夕歓迎の晩餐会を開くことができましたことは、私の大きな喜びであり、かつ光栄とするところであります。私は、ここに、日本国政府及び国民を代表し、心から歓迎の意を表するものであります。

 日仏間の交流の始まりは百年余の昔に遡りますが、その後のわが国の近代化の過程において、わが国が貴国から学術・文化・法律その他の分野で多くのものを学びとり、爾来わが国国民が貴国に対し親近感を抱いていることは、皆様ご承知のとおりであります。近年かかる伝統的な友好の絆に結ばれた両国の関係が、ますます緊密の度を加えていることは誠にご同慶の至りであります。文化・芸術の分野における活発な交流関係は申す迄もありませんが、最近、原子力をはじめとする科学技術、第三国における協力などの分野において、具体的な成果が着々とあがりつつあることは、日仏関係に新たな展望をひらく動きとして、私としても深い関心を抱いているところであります。

 今後双方において努力を積み重ね、貿易をはじめ日仏経済関係全体の均衡的な発展を計ってまいりたいと考えます。

 今日、先進民主主義諸国は、世界の平和と繁栄の確保の上で、数多くの共通の課題と責任を有しており、これら諸国の協力の強化の必要性は、ますます高まっております。

 貴国は、国際経済協力会談の開催を提唱され、また、ランブイエにおいて主要国首脳会談を開催されましたが、私が、かかる貴国のイニシアティブを高く評価し、これを支持して来たことは、御承知のとおりであります。日仏間の協力は、このような先進民主主義国間の協力の一環としても大きな意義を有しております。「自由と独立」の維持を対外政策の基本とし、欧州建設の過程の中で主導的役割を果しておられる貴国との対話と協調は、わが国としてもこれを一層深めていく考えであります。

 閣下御一行は、明後日から京都をはじめ、関西方面に御旅行されると承知しておりますが、わが国の歴史のふるさとである京都の文化的遺産は、偉大な文化的伝統を有するフランスの皆様の心の琴線に触れるものと期待しております。

 首相閣下、ならびに御列席の皆様。今や日仏関係の新たな発展の条件は整っております。これを両国民の協力により実現せしめることが我々の課題であります。この意味で今回の閣下御一行の御来訪は、誠に時宜を得たものであり、これを契機に、日仏間の友好協力関係は、一層ゆるぎないものとなることを確信するものであります。

 最後に、盃を上げてフランス国民の繁栄とジスカールデスタン大統領ならびにシラック首相閣下御夫妻のご健康、さらに日仏友好関係の一層の発展をお祈りしたいと思います。