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日本政治・国際関係データベース
東京大学東洋文化研究所 田中明彦研究室

[文書名] ニコラエ・チャウシェスク・ルーマニア社会主義共和国大統領夫妻の訪日に際しての共同コミュニケ

[場所] 東京
[年月日] 1975年4月9日
[出典] 外交青書20号,83−86頁.
[備考] 訳文
[全文]

 ニコラエ・チャウシェスク・ルーマニア社会主義共和国大統領は夫人とともに、1975年4月4日から9日まで国賓として日本国を訪問した。ニコラエ・チャウシェスク・ルーマニア社会主義共和国大統領夫妻は、滞在中天皇・皇后両陛下と会見した。

 ニコラエ・チャウシェスク・ルーマニア社会主義共和国大統領は三木武夫日本国内閣総理大臣と公式会談を行つた。会談は極めて友好的、建設的かつ親密な雰囲気の中に行われた。会談の同出席者は次のとおりであつた。

 日本側    宮澤喜一外務大臣、石川良孝駐ルーマニア大使

 ルーマニア側 ゲオルゲ・オプレア副首相、ジョルジェ・マコヴェスク外務大臣、ミハイル・フロレスク化学工業大臣、ヴァシーレ・プンガン大統領顧問およびニクラエ・フィナンツー駐日大使

 右会談において日本国内閣総理大臣とルーマニア社会主義共和国大統領は、相互に自国の経済的社会的発展について説明した。また両国関係の現状及び将来の見通し並びに両国が相互に関心を有する主要な国際問題につき有益な意見の交換を行つた。

 総理大臣と大統領は、近年多くの分野において両国関係が順調に発展していることに満足の意を表するとともに、特に経済、文化及び科学技術の分野における両国関係の一層の拡大及び多様化の可能性があることを指摘した。

 総理大臣と大統領は、両国間の経済貿易関係が引き続き発展していることに満足の意を表明した。双方はまた近年における実業界の交流の増大に満足の意を表するとともに、日本・ルーマニア経済委員会及びルーマニア・日本経済委員会が果たした重要な役割を高く評価し、両国間の経済関係の拡大のために同経済委員会の活動をさらに支持する用意があることを表明した。

 両国間の貿易経済関係に関する事項を検討するため、政府の代表者で構成される混合委員会を設立することが合意された。右混合委員会は東京とブカレストで交互に開催される。

 総理大臣と大統領は、大統領の日本滞在中に文化交流取極が署名されたことに満足の意を表し、同取極が両国間の文化交流の促進に貢献するであろうとの期待を表明した。

 総理大臣と大統領はまた査証料の免除及び査証発給の促進に関する取極が署名されたことに満足の意を表し、同取極が両国間の人的交流の増大に貢献するであろうとの期待を表明した。

 総理大臣と大統領は、所得に対する二重課税防止条約締結交渉をまもなく開始することになつたことに満足の意を表し、同条約締結が両国経済貿易関係の発展に貢献するであろうとの期待を表明した。

 総理大臣と大統領は、科学技術分野における協力に関する取極が署名されたことを歓迎し、本取極が両国間の本分野における交流の活発化に貢献するであろうとの確信を表明した。

 総理大臣と大統領は、国際情勢の現状に関し長時間の意見交換を行つた。総理大臣と大統領は、国際関係における平和と安全という安定した環境を確保するためには国家間の関係を国民的独立と主権、平等な権利、内政不干渉、相互協力及び互恵の原則の厳格な遵守の上に基礎づけねばならないとの確信を強調した。

 総理大臣と大統領は、国際問題の解決に武力、又は武力による威嚇を用いることに反対であることを宣明した。

 総理大臣と大統領は、すべての国々が、国の大きさ、社会体制、発展の水準に係りなく、人類の共同体が直面する重要な諸問題の解決に、積極的に参加すべきであるとの見解を表明した。

 総理大臣と大統領は、世界の永続的平和の確保のためには軍備競争の中止及び有効な国際管理の下での全般的軍縮、なかんずく、核軍縮の達成が必要である旨確認した。核の分野における事態の推移を深く憂慮して、双方はすべての諸国民が核拡散の防止にあらゆる努力を払うべきであると強調した。

 この点に関し、総理大臣と大統領はかかる努力において核兵器保有諸国が高度の責任を有する旨を強調した。

 総理大臣と大統領は先進諸国と発展途上諸国の間の格差を縮め、かつ究極的にはこれを除去することが、世界の平和と安定にとり特に重要な要因であることに意見の一致をみた。

 両者は、低開発状態の一掃及び発展途上諸国の経済的、社会的発展の加速化のために有効な措置をとることが緊要であるとの確信を表明した。

 総理大臣と大統領は、協力、平等及び公正に基づいた新しい世界経済秩序の確立の必要性を確認した。

 大統領は、欧州の情勢、なかんずく、欧州安全保障協力会議等に見られる緊張緩和の動きについて、またバルカンの情勢について説明を行つた。

 総理大臣と大統領はサイプラスの情勢に関し憂慮を表明した。

 総理大臣は、極東の情勢に関して説明を行つた。

 双方は中東情勢につき憂慮の念を表明するとともに、安全保障理事会決議第242号及び第338号に従つて、1967年戦争の結果として占領されている全地域からイスラエル軍が撤退すること及び同地域のすべての国家の独立、領土保全、主権が保障されることを基礎とし、さらに国際連合憲章に合致したパレスチナ人民の自決権を含む合法的な諸権利が承認されることを基礎として当該地域における公正かつ永続的な平和をできるだけ早急に確立することの必要性を強調した。

 インドシナの現情勢につき、総理大臣と大統領は、同地域における永続的平和の確保並びに平和的手段により自己の問題を解決せんとするインドシナ諸人民の権利の遵守を確保するためパリ和平協定の実施については更に着実な努力が必要であることを強調した。

 国際平和と安全の維持、並びに経済的、社会的発展の促進について国際連合が有する重要性を考慮しつつ、総理大臣と大統領は、憲章に謳われた諸原則に基づいて、国際協力の手段としての国際連合の有効性を増進せしめるために、より確固たる措置をとる必要があることに合意した。

 総理大臣と大統領は、この会談が両国間の友好関係の発展に重要な貢献を行つたことを認めた。

 総理大臣と大統領は、同大統領訪日の結果に満足の意を表明し、両国間の協力関係の増進及び国際平和のために、種々のレベルにおける交流を継続することの重要性を強調した。

 滞在中ルーマニア社会主義共和国大統領、同夫人及び随員一行は東京、大坂、京都、堺及び横浜を訪れ、経済、社会及び科学の分野における日本国民の発展及びその文化的伝統を親しく見聞した。

 ルーマニア社会主義共和国大統領及び同夫人は日本国政府及び国民の暖かい歓迎ともてなしを受けた。

 大統領は、経済界の指導的要人とも会談した。会談は、極めて友好的な雰囲気の中で行われた。

 ニコラエ・チャウシェスク大統領、同夫人及び随員一行は、日本滞在中に示された暖かい歓迎と厚遇に対し、天皇・皇后両陛下、日本国政府及び国民への深い感謝の念を表明した。

 ニコラエ・チャウシェスク・ルーマニア社会主義共和国大統領は、三木武夫日本国内閣総理大臣に対し、ルーマニア社会主義共和国を公式訪問するよう衷心より招待を行つた。総理大臣はこの招待を感謝の念をもつて受諾した。訪問の時期は外交経路を通して取決められる。

東京にて

1975年4月9日

日本国内閣総理大臣 三木武夫

ルーマニア社会主義共和国大統領 ニコラエ・チャウシェスク