データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 大平外務大臣のユーゴースラヴィア社会主義連邦共和国訪問に際しての共同コミュニケ

[場所] 
[年月日] 1973年5月1日
[出典] 外交青書18号,105−106頁.
[備考] 
[全文]

 大平正芳日本国外務大臣は夫人及び随員と共にミニッチ・ユーゴースラヴィア社会主義連邦共和国副首相兼外務大臣の招待により,1973年4月29日より5月1日まで同国を公式訪問した。

 滞在中,大平外務大臣は,ドゥゴニッチ連邦幹部会副議長及びビェディッチ首相と会見した。

 大平外務大臣は,ミニッチ外務大臣と会談した。友好かつ相互理解の雰囲気の中で行なわれたこの会談において,双方は日本・ユーゴースラヴィア両国間の諸問題及び両国が関心を有する諸国際問題について討議した。

 双方は,近年,日本・ユーゴースラヴィア関係が多くの分野で着実に進展していることに満足の意を表明し,今後ともあらゆる分野における両国関係を更に発展せしめるよう,相互に努力することに意見の一致をみた。

 双方は,特に,両国間の経済貿易関係が増進していることに満足の意を表明するとともに日本・ユーゴ経済委員会及びユーゴ経済会議所対日経済協力促進部会の役割を高く評価した。双方は産業協力,ジョイント・ベンチャー等の分野になお多くの可能性があることを指摘し,現下の貿易収支の不均衡を取除くため双互に努力することを強調した。

 双方は,国際情勢に関する意見交換に際し,独立,主権尊重,及び内政不干渉の諸原則に基づき,世界平和と国際協力を促進し,かつ,国際問題が平和的な方法により解決されるよう両国が引続き協力していくことに合意した。これに関連し,双方は,アジア及び欧州における緊張緩和への顕著なる動きを歓迎し,かかる動きが,更に進展し,世界の他の地域における諸問題の解決と緊張の除去にも好影響を及ぼすようにとの希望を表明した。

 双方は,中東において緊張が続いていることに関心を表明し1967年11月22日付国際連合安全保障理事会の決議を基礎として紛争の解決を見出す必要があることを強調した。

 双方は,ヴィエトナムおよびインドシナにおける永続的な平和確立のためパリ協定の周到な履行が重要であることを強調した。

 双方は,すべての国の平和と安全の強化,先進諸国と発展途上諸国の隔差の縮少等の重要な国際問題の解決にあたつて,国際連合が積極的な役割と有効性を発揮することが重要であることを指摘した。

 大平外務大臣の今回の訪問は,両国間の相互理解の増進と友好関係の一層の発展のために大いに貢献した。

 大平外務大臣は,ユーゴースラヴィア滞在中,同大臣に示された暖かい歓迎と厚遇に対し,衷心より感謝の意を表明した。

 大平外務大臣は,ミニッチ外務大臣が日本国を公式に訪問するよう招待した。右招待は喜びの意をもつて受諾された。訪問の時期は,追つて外交経路を通じて取決められる。