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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] リュプケ・ドイツ連邦共和国大統領の訪日の際の日独共同コミュニケ

[場所] 
[年月日] 1963年11月15日
[出典] 外交青書8号,29−31頁.
[備考] 
[全文]

 リュプケ・ドイツ連邦共和国大統領は、夫人並びにシュレーダー外務大臣夫妻、フオン・ヘルヴァルト大統領府長官等を伴い、一九六三年十一月六日から十五日まで国賓として日本を訪問した。

 滞日中大統領一行は、天皇陛下と会見し、池田総理大臣及び日本政府首脳者と意見の交換を行なった。

 日独両国は、ひとしく自由諸国の一員として協力すること、及び国際連合の目的と原則ならびに法の尊重、自由、政治的自決及び経済的社会的進歩を基礎とする平和秩序を擁護することを確認した。大統領は、日本政府が常に理解と好意をもってドイツの国家再統一の要求を支持してきたことに対しドイツ国民の謝意を伝達した。双方は、部分的核実験禁止条約の成立を歓迎するとともに、右条約を出発点として、一般的かつ管理された全面軍縮がなるべくすみやかに実現されることを強く希望した。

 日独双方は、日本と統合が進展しつつある欧州経済共同体との協力のため引き続き尽力することに意見の一致をみた。

 日独双方は両国間の貿易及び経済諸分野の協力関係が着実に進展していることを満足の意をもって確認し両国が従来から行なっている経済関係強化の努力を継続すべきことについて意見の一致を見た。

 大統領は、日本国民及び政府の経済建設における業績を賞讃するとともに、きたるべき日本のOECD加盟に対し歓迎の意を表明した。

 双方は文化並びに学術の分野において一世紀にわたり存続している両国の緊密なる関係に満足の意を表し、今後この関係を特に、また、日独文化協定及び一九五八年以来設立されている日独文化混合委員会の枠内における協力により一層強化することに意見の一致をみた。

 そのため両国は両国民の間の文化関係を維持発展せしめるための中心として、ドイツ側は、ドイツ文化協会のための会館を東京に建設し、日本側はドイツの一都市に文化会館を建設する意向のあることを明らかにした。又ドイツ連邦共和国は日本政府に対し、従来与えられていた奨学金のほかに、十名分のドイツ学生交換事業奨学金を提供するよう申し出た。さらに、一九六五年度のベルリン芸術祭を日本文化を中心として実施する計画が検討され、日本政府はこれを歓迎し、これに対しできる限りの支援を与える意向のあることを明らかにした。

 日独双方は、両国間の訪問者が増加し両国民間の人的関係が強められつつあることに満足の意を表した。

 シュレーダー連邦外務大臣は特に池田総理大臣、並びに大平外務大臣と会談を行ない一般的国際情勢、とくに最近の東西関係、アジア情勢、欧州情勢、一般国際経済問題、低開発国援助問題、その他両国に関連する諸問題につき意見の交換を行なった。この意見交換は、両国間の伝統的友好関係にもとづき、隔意なき雰囲気のうちに行なわれ、国際政情の重要問題に関する判断につき意見の一致をみた。右会談は昨年ボンにおいて行なわれた日独間の実り多き会談の継続であった。両国外務大臣はこの種の会談が双方にとって大いに有益であることにつき意見の一致をみた。

 両大臣は、通常の外交的接触のほかに、年一回ボンと東京において交互に国際情勢及び両国間の関係に関する当面の諸問題につき、定期的な外務大臣協議を行なうことを決定した。

 大統領一行は四日間の東京滞在後、京都、奈良、大阪及び神戸に赴き多数の文化財及び史跡を視察したが、各地において盛大な歓迎をうけた。

 日独双方は、リュプケ大統領の訪日は欧州の元首の最初の訪日として、ひとり日独間のみならず、日本と欧州との友好関係の強化に多大の貢献をしたことを満足の意をもって確認した。