データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日英共同コミュニケ

[場所] 
[年月日] 1962年11月15日
[出典] 外交青書7号,23−24頁.
[備考] 
[全文]

 池田総理大臣は英国政府の招待により宮沢経済企画庁長官を伴い、一九六二年十一月十二日より十五日まで英国を訪問した。池田首相はマクミラン首相、ヒューム外相、モードリング蔵相およびエロール商相と会談した。

 これらの会談はもっとも友好的な雰囲気のうちに行なわれ、両国共通の関心を有する国際間の諸問題および日英間の友好関係の増進について率直な意見の交換が行なわれた。

 両国首相は、自由陣営の一員であり多くの共通の問題に直面している英国および日本は両国の共通の利益のため、また平和愛好諸国の中で対等な友邦として、一層緊密な協力に邁進すべきであることに意見の一致をみた。また、この目的を達成するため、両国相互の関係に関連ある問題のみならず自由世界の一員としての立場に関係ある諸問題について、より緊密な協議を行なっていくことに合意した。

 両国首相はキューバおよびベルリン問題を含む最近の緊張した国際情勢を検討し、自由諸国間における最も強固な団結が一層必要であることに意見が一致した。

 両国首相は有効な管理と査察を伴った一般的軍縮協定、特に核兵器実験停止協定が速やかに締結されるべきことに意見の一致をみた。

 両国首相はアジアおよびアフリカにおける政治的、経済的諸情勢を討議し、新興諸国をして生活水準の向上を達成しうるよう援助するため協力することに意見の一致をみた。

 両国首相は欧州の経済的、政治的統合およびこれへの英国の参加につき意見を交換した。池田首相は欧州経済共同体が開放的な政策をとることを希望する旨述べた。マクミラン首相に池田首相の見解に同意を表するとともに英国が加盟した場合はその実現に努力する旨述べた。

 両国首相は世界の開発途上にある諸国の経済発展の援助に関する共同責任を果たすために開発援助委員会等を通じてますます緊密に協調をはかる必要があることに意見の一致をみた。これに関連して、池田首相は、日本と西欧諸国との提携を一層緊密にするため日本が開発援助委員会のみならず経済協力開発機構にも全面的に参加する希望を表明した。これに対してマクミラン首相は極めて好意的に考慮する旨約した。

 両国首相は、両国はともに貿易に依存する国であり両国間の貿易拡大が共通の利益であることを認めた。特に両国首相は、本日両首相の臨席のもとに日英通商居住航海条約が署名されたことに満足の意を表し、この条約が発効すれば英国がガット三十五条の日本に対する援用を撤回することを認めた。両国首相はまた、この条約が両国間の貿易拡大のみならず、両国の政治的、経済的関係を含むすべての分野におけるより緊密な関係の端緒となるべき旨の希望を表明した。両国首相は、最近貿易および経済使節団が相互に交換されたことを歓迎し、かつ今後この種の接触が定期的に行なわれることを希望した。

 金融経済上の問題については、日本と英国とが健全な経済発展をとげるための政策を追求し、かつ必要ある場合には現在の国際支払制度を改善することに類似の利害関係を有することが強調された。両国首相は両国間における金融経済上の問題につき一層緊密に協力することに合意した。

 両国首相は近年両国の友好関係が著しく増進されたことに満足の意を表し、今後両国間に新たにして、かつ緊密な友好および提携関係が生まれることを期待した。