データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日本国とドイツ連邦共和国との間の文化協定

[場所] 
[年月日] 1957年2月14日
[出典] 外交青書1号,213−215頁.
[備考] 
[全文]

 日本国及びドイツ連邦共和国は,両国間に存在する文化関係を深めることを希望して,

 このため,文化協定を締結することに決定し,次のとおり全権委員を任命した。

日本国

日本国外務大臣 岸信介

ドイツ連邦共和国

ドイツ連邦共和国外務次官,教授,ドクトル ヴァルター・ハルシュタイン

 これらの全権委員は,その全権委任状を示してそれが良好妥当であると認められた後,次の規定を協定した。

第一条

1 両締約国は,特に次の諸手段により,自国における相手国の文化の研究を奨励し,かつ,容易にするよう努力するものとする。

(a) 書籍,雑誌その他の出版物の頒布

(b) 講演,演奏会及び演劇

(c) 美術展覧会及び文化的性質を有する展覧会

(d) ラジオ,音盤及び類似の手段

(e) 科学映画,教育映画又は文化的性質を有する映画

2 両締約国は,文学的及び芸術的内容の著作物の翻訳及び頒布を奨励するよう努力するものとする。

第二条

 両締約国は,教授,学者,学生その他文化的分野において活動する者の交換を奨励するよう努力するものとする。

第三条

 両締約国は,自国の大学その他の教育又は研究の機関における相手国の言語,文学,芸術,歴史又はその他の文化に関する問題を取り扱う講義及び教科の拡充及び創設を奨励するよう努力するものとする。

第四条

 両締約国は,両国の国民が,奨学金その他の方法により,それぞれ相手国内において修学若しくは研究を行い,又は技術を習得する可能性を与えられることについて研究するものとする。

第五条

 両締約国は,相手国の学位並びに修学及び資格の証書が修学上の目的のため,及び今後定める場合には職業上の目的のため,自国の相当の学位並びに修学及び資格の証書と同等の価値を認められるための可能性を研究するものとする。

第六条

 両締約国は,両国間の文化関係の発展に資する文化団体の設立,運営及び発展を奨励するよう努力するものとする。

第七条

 両締約国は,学会その他の文化団体の協力を奨励するよう努力するものとする。

第八条

 両締約国は,自国内において,相手国の国民に対し,博物館,図書館その他類似の施設への入場及びその利用について便宜を与えるもとする。

第九条

1 この協定を実施するため,二の日本・ドイツ常設混合委員会を一は東京は他はボンに設置するものとする。

2 各委員会は,委員長並びに二人の日本人の委員及び二人のドイツ人の委員で構成される。東京においては,日本人が委員長となり,ボンにおいては,ドイツ人が委員長となるものとする。

3 委員会の委員長及び委員は,日本国については,日本国政府により任命され,ドイツ連邦共和国については,連邦の関係各省大臣及び各州の文部大臣の了解の下にドイツ連邦共和国外務省により任命されるものとする。

4 各委員会は,委員長の招集により少くとも年に一回会合するものとする。

5 各委員会は,それぞれの手続規則を採択するものとする。

6 各委員会は,それぞれの事業計画をできる限り毎年作成するものとする。

第十条

 この協定においてドイツ国民とは,ドイツ連邦共和国の官憲が発給し,かつ,有効であるドイツの旅券又は身分証明書の所持者をいう。

第十一条

 この協定において国(ラント)とは,ドイツ側については,ドイツ連邦共和国をいう。

第十二条

 この協定は,ドイツ連邦共和国政府がこの協定の効力発生の後三箇月以内に日本国政府に対して反対の宣言を行わない限り,ベルリン地区についても効力を有するものとする。

第十三条

1 この協定は,批准されなければならない。批准書は,ボンで交換されるものとする。この協定は,批准書の交換の後一箇月で効力を生ずる。

2 この協定は,五年間効力を有する。この協定は,いずれか一方の締約国がその期間の満了後においても一年の予告により廃棄を通告しない限り,そのつどさらに一年間引き続き効力を有するものとする。

 以上の証拠として,前記の全権委員は,この協定に署名調印した。

 千九百五十七年二月十四日に東京で,ひとしく正文である日本語及びドイツ語により本書二通を作成した。

日本国のために

岸信介

ドイツ連邦共和国のために

ハルシュタイン