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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 日中平和友好条約交渉(第1回会談)

[場所] 北京
[年月日] 1978年7月21日
[出典] 情報公開法に基づき公開された外務省資料
[備考] 
[全文]

極秘

総番号 (TA) R052678  5273  主管

78年  月21日20時25分  中国発

78年07月21日21時55分  本省着  ア局長

外務大臣殿  佐藤大使

昭{前1文字ママ}日中平和友好条約交渉(第1回会議)

第1371号 極秘 大至急

(限定配布)

往電第1362号に関し

21日午後3時より5時まで約2時間にわたり(休けい時間を含む)外交部迎賓館(3号賓館)において第1回会談をおこなつたところ概要次のとおり。(双方より代表団全員が出席)

1.会談冒頭、約5分間邦人記者が写真さつ影を行なつた後、韓副部長はあらかじめ用意された原こうに基づきわが方代表団にかん迎の意を述べ、日本代表団と努力を共にして今回の条約交渉を1日も早く円満に成功させたい旨述べるとともに、条約交渉の経過を回顧するとして要旨次のとおり発言した。

(1)74年11月に交渉を開始して以来、3年半経過した。この間継続的に交渉の回数を重ねてきたが、75年3月及び4月に双方は条約案文を交換した。75年11月には日本側が修正案を提出し、これに対し76年2月6日、中国政府は当時の小川大使に正式な回答を行なつた。

(2)条約交渉が進展しなかつた主な理由は反は権条項の問題である。この問題は双方が真に共同声明を基礎にして政治的かく度から、また大局に着がんすれば障害はのりこえることができ、決して解決できないものではないというのが中国側の一かんした態度である。

2.韓副部長は引き続き日中共同声明に言及し次のとおり述べた。

(1)中日共同声明は両国関係に深えんな意義を有する歴史的文けんである。国交正常化以来の実せんが証明しているように、共同声明の諸原則は全く正しいものであり、両国人民の根本利益に合致し、アジア・太平洋地域の各国人民から広般なかん迎を受けている。

(2)同声明は両国の善りん友好関係を発展させる準則であり、中日平和友好条約の締結の根拠と基礎である。道理としてはこの条約は共同声明を基礎として前進するものでなければならず、決して後退するものであつてはならない。同声明の精しんと原則は更に発ようし一層かがやかしいものにすべきであつて、弱めたりほねぬきにしてはならない。

3.続いて韓副部長は反は権に関し次のとおり述べた。中国側

(1)は権反対は共同声明の一つの極めて重要な原則である。中国側の反は権に関する原則的立場は一かんした明確なものであり、日本側もよく承知しているものである。

(2)共同声明にいうは権を求めず、とは権を求める試みに反対するとの2つの意味をそのまま条約の本文に盛り込むべきである。

(3)中日両国が平和友好関係を強固にし発展させることは、第三国に対するものではない。中日そう方は、アジア・太平洋地域においては権を求めず、いかなる国あるいは国の集団がこの地域においては権を求めることに反対する。は権を求めるものがあればだれであろうとそのものに反対する。

(4)実を言えば反は権条項は、主として字くの表現の問題ではなく、中日関係をより良くする決意に係わる実質的問題である。

(5)75年4月に提出した中国側草案、特に第2条の反は権条項の表現は、共同声明の精しんと実質を正しくつらぬき、(注;中国語原分「体現了・・・精しん和実質」)そう方とも満足のいく案文であると確信している。

(6)私は、ここに再び日本側にこの案文を真けんに検討するよう要請し、同時に、中国側としても、日本側の建設的意見をうかがうことを希望する。

4.以上約30分間にわたる中国側の冒頭発言を終了したので、本使よりしばらく休けいすることを提案し、そう方それぞれのひかえ室に移つた。

(休けい時間約25分間)

5.4時5分より交渉を再開し、冒頭本使より韓副部長の冒頭のあいさつ及び中国側の諸手配に対する感謝の意を表する簡単なあいさつを行つた後、往電第1365号の通りの冒頭見解表明を発言した。

6.本使の見解表明に対し、韓副部長は次のとおり発言した。

(1)ただ今サトウ大使の御発言を詳細におききした。特に日本政府の対外方針及び政策、日中条約締結に関する意見を再び説明され、また最後に中ソ同盟条約にも言及されたが、これは自然なことである。日本側の発言については次の会談で中国側の考えを申述べたい。中ソ同盟条約問題については、われわれは日本の指導者の方(注:中国語は「日本的領導」方面)にわれわれのこの問題についての態度を明らかにするであろうから安心していただきたい。

(2)しん重を期するため、われわれはただ今のサトウ大使の発言をまじめに、かつ詳細に検討した上次回会合でわが方の見解を提出したい。一つの考え方として、交渉は3年半余を経過し、中国側は2年以上前に条約草案を提出したので、日本側が条約草案を提出され、検討と討論の便に供して下さるよう希望する。それは、時間を集中し節約して条約締結問題を討論するのに役立つものと考える。

7.以上に対し、本使より、「韓副部長の健こうが許すなら明日再び会談を開き、その際わが方として最善と考えている条約草案を提出したいと考える」旨述べたところ、韓副部長より、「大使の意見に同意する、明日は午後3時よりで如何。午前中はしん察がありい者が許可してくれない」と述べたので、本使より、「同意する」旨述べた。

8.最後に本使より、新聞発表につき相談したいとして、「内容には触れず簡単に行うこととし、中国側に御めいわくをかけないつもりであるから、お任せ願えるか」と述べたところ、韓副部長は、「日本側にはこの問題があることは承知しているが、その発表ぶりは”交渉が開始された”ということだけではどうか、中国側もそれだけを新聞発表する予定である」旨述べた。これに対し本使より、「われわれとしては、日本側が日中平和友好条約についての一般的な考え方を述べたということ位は発表せざるを得ない」旨述べたところ、韓副部長は、「内容には絶対に触れないようにしていただきたい」旨重ねて強調した。以上をもつて会談を了した。

9.なお、会談のふん囲気は、友好的で良好なものであり、本使の発言中、韓副部長は、しばしばうなづいたりしつつ真けんに聞き入つていた。

(了)