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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 釣魚島、国連平和協力法案についての斉懐遠外交部副部長の橋本駐中国大使に対する談話

[場所] 北京
[年月日] 1990年10月27日
[出典] 日中関係基本資料集 1949年−1997年,761−762頁.
[備考] 
[全文]

 斉懐遠中国外交部副部長は十月二十七日午後、橋本駐中国日本大使を緊急に招いて会見し、釣魚島問題について厳正な交渉を行うとともに、日本政府が海外に派兵しようとしている問題について中国政府の立場を次のように伝えた。

  釣魚島問題について

 釣魚島は昔から中国の領土であり、中国はそれに対し争う余地のない主権を持っている。日本がこの問題について見解を異にしていることを、われわれも知っている。このため、中日国交正常化交渉のとき、われわれ双方は問題を「後日に棚上げ」することに同意した。中国側は、われわれ双方がそのときこの問題について到達した了解事項は非常に重要なもので、両国の友好協力関係の発展に有利であると認めている。

 残念ながら、日本政府は双方の了解事項に違反し、こともあろうに日本の一部の右翼団体が設置した標識灯に無関心の態度をとり、それを容認する用意のあることを明らかにし、甚だしきは艦艇を釣魚島海域に繰り出して中国台湾省の漁民を追い払った。中国政府は、日本政府が双方のこれまでに達成した了解事項を守り、釣魚島とその海域でとっている一方的な行動を直ちに停止するよう強く要求する。

 中国政府は、双方が主権を棚上げして、共同で釣魚島海域の資源を開発し、同海域の漁業資源を開放するなどの問題についてできるだけ早く交渉するよう提案する。

  「国連平和協力法」問題について

 一、中国政府と中国人民は日本政府が作成し日本国会で審議中のこの法案に大きな関心を寄せている。なぜなら、この法案の核心は自衛隊を海外に派遣する問題であり、「海外に派兵しない」という戦後の日本の四十五年来のタブーを破るものであるからである。

 一、中国人民が他のアジア各国人民と同じようにこの問題に強い反応を示すことには道理がある。

 一、日本が海外に自衛隊を派遣することは、国連の要請ではなく、アジア諸国の要請でもない。中国政府は、日本政府が慎重にことを運ぶことを強く希望する。

 総じて言えば、中国政府は、これは日本政府が戦後実行してきた軍事政策を打ち破る面で採っている重大な措置であると見ている。いったんそれが採択されると、必ずや日本軍国主義の侵略の害を受けたことのある中国とアジア各国人民の強い反応を引き起こすことになろう。平和を愛する広範な日本人民も同意しないであろう。