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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 中曾根内閣総理大臣の中国訪問関連文書,日中青年交流センター定礎式における胡総書記スピーチ

[場所] 北京
[年月日] 1986年11月8日
[出典] 外交青書31号,374−375頁.
[備考] 中国側翻訳
[全文]

青年友人の皆様

君たちが主催した中国青年交流センターの定礎式に中曾根首相と私という二人で合わせて139歳の年寄りが連名して参加を申し込んだのは,君たちに祝意を表し,両国青年が友情の増進のために,このような極めて有意義な活動方式を又創り出したことに対し祝意を表すためであります。

中曾根首相は私の招請によりおいでになったわけであります。私がわざわざ首相をお招きしましたのは,このセンターの設立が首相の御提案によるものであり,又その必要経費の多くは,首相が日本政府を代表して贈与されたものであったからです。本日,首相閣下は又公務御多忙の中,時間をさいて祝賀にお越しになりました。首相と日本政府並びに日本青年のこのような美しい友情に対し,重ねて感謝の意を申しあげたいと思います。

このような友情あふるる集いにおいて,私は思わず数日前日本のある有名な女流作家との会見を思い出しています。私たちは青年達が如何にして愛国主義を発展すべきかという主題について話しあいました。

私は世界諸国の青年が自分の祖国を愛すべきであると主張したのです。どの青年も自分のすべてを祖国の運命と結びつけるべきであり,青年は祖国の繁栄と富強のためにすべてをささげるべきであり,いざ自分を生み育てた祖国が侵犯されれば,身を顧みず祖国を守るべきであります。

だが,それが愛国主義の最も完ぺきな基準といえるでしょうか。それではまだ不十分だと私は考えています。他国の人民と睦まじくつき合い,友好的に協力するという遠い見通しを持つ国際主義の精神とも結びつかなければなりません。

もし,中国の青年は自分の国が裕富になることばかり考え,私たちの現行の開放政策に消極的であり,日本及び世界諸国の青年との団結,友好及び互助互恵に熱心でなければ,十分に分別をわきまえた愛国青年とは言えないでしょう。

歴史において,狭あいな愛国主義しかわきまえず,その結果誤国主義に陥ってしまったものは稀ではありません。中日両国の青年は歴史の経験と教訓の中から知恵を汲み取り,自分自身を愛国主義の情熱と国際主義の精神にも富んでいる気高い現代人に鍛えていくよう,私は望んでやみません。

われわれ両国の青年はここ数年の体験から,中日友好のもたらした大きな利益を身にしみて感じとったため,中日友好を擁護・発展させる自覚を一段と向上させました。これを目にして,私は大きな喜びを覚えております。そこで私は自信満々に次のことを申しあげます。

われわれ両国はいっそう友好的な未来を切り開くことができるでありましょう。

われわれ両国は友好協力を通じて,アジアひいては世界の平和のためにより大きな貢献をなすことができるでありましょう。

我々両国は平和と友好の中でよりよく国民と後世の子孫に幸福をもたらすことができるでありましょう。

有難うございました。