データベース「世界と日本」(代表:田中明彦)
日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 胡耀邦中国共産党中央委員会総書記の訪日に際しての中曽根内閣総理大臣の記者会見発表

[場所] 
[年月日] 1983年11月24日
[出典] 外交青書28号,471−472頁.
[備考] 
[全文]

 胡耀邦総書記との会談を終えた機会に,今後の日中関係のあるべき姿についての私の所信を次の通り申し述べたい。

1.日中両国が,体制の相違を乗り越え,21世紀に向かって,堅固な平和友好関係を維持,発展させることは,両国のみならず,アジアひいては世界の平和と繁栄にとっても緊要である。

2.日中両国間においては,すでに1972年の国交正常化の際の共同声明及び1978年の平和友好条約が存在し,これらにより両国関係の基礎となるべき原則が確立している。私は,今般の胡総書記との会談において,これら諸原則を確認し,特に日中両国が,相互理解と信頼及び国際連合憲章の原則に基づき,両国間のいかなる問題も,話し合いによって平和的に解決し,武力に訴えない決意であることを確認した次第である。

3.日中両国は,相手の国情に配慮しながら経済,文化,科学技術等の各方面の交流をさらに促進し,特に次代を担う青年の交流を一段と強化することが重要である。

4.最近の国際情勢をみるに,国際関係の緊張が増大しつつあると認められることは誠に遺憾である。特に世界各地において地域的紛争,あるいは暴力事件が頻発しており,また,SS−20をはじめとするソ連の戦力がアジアにおいて増強していることについては懸念が持たれる。今後かかる傾向が持続し,増幅する場合には,世界平和に対する重大な脅威ともなりかねないであろう。

5.私は,国際的な紛争あるいは懸案に関しては,話し合いのテーブルについて相互に相手の主張に真摯に耳を傾け,理性に基づく対話と交渉により,意見の対立を克服するよう常に努力を続けていくべきであると確信し,及び,軍縮の進展を含む平和への努力により国際的な緊張の緩和がもたらされることを希求するものであり,日中両国は,アジア及び世界の平和と安定の維持及び増進のために各々の立場から関係諸国に対し,このような努力を呼びかけていくことが重要であると考える。

6.私は,日中両国間の友好協力関係を21世紀以降の子々孫々に及ぶ確固たるものならしめるために,「日中友好二十一世紀委員会」(仮称)を設立することが望ましいと考え,胡総書記にこの考え方を述べたところ,原則的賛同を得た。同委員会の性格,構成等に関する詳細については,今後両国政府の間で協議した上で同委員会を発足させることとしたいと考えている。