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日本政治・国際関係データベース
政策研究大学院大学・東京大学東洋文化研究所

[文書名] 汪道涵上海市長主催歓迎宴における鈴木内閣総理大臣の挨拶

[場所] 上海
[年月日] 1982年9月30日
[出典] 鈴木内閣総理大臣演説集,237−238頁.
[備考] 
[全文]

 汪道涵上海市長閣下

 御在席の皆様

 本日は私ども一行のために,かくも盛大なる晩餐会を御開催いただき,また,只今は汪市長閣下の心暖まる御挨拶を賜わりました。一同を代表して,感謝の意を表します。

 私は今朝,景勝の地杭州を発ち,汽車でこちらに向かいました。車窓から,豊かに実った田園風景を眺めてまいりましたが,昔から,「江浙稔れば天下足る」と言われておりますが,貴国農民のたんせいの成果は見事なものであります。車外の景色には,やがて住宅や工場が目立ちはじめ,上海に近づきつつあるのが感ぜられました。

 上海は,貴国随一の商工業都市として,また人口一千万を越える世界最大の都市として,今日,貴国民が一致して取り組んでおられる近代化建設に,きわめて大きな役割を期待されております。私は,上海の皆様がその勤勉と英知をもって,この大業を成し遂げ,貴国の前進に大きく貢献されることを信ずるものであります。

 また,この近代化については,我が国もさまざまな支援をいたしており,私が本日参観した宝山製鉄所もその例の一つであります。日中共同の努力により建設されているこの製鉄所は,近い将来,貴国の産業を支える大きな力となり,かつまた,日中経済協力の象徴として立派に発展して行くことでありましょう。

 私ども一行の旅程は,本日で終わりますが,日中国交正常化十周年を記念して行われたこのたびの私の中国訪問は,きわめて実り多いものでした。何よりも大きな成果は,日中両国が十年前の日中共同声明の精神を再確認し,子々孫々にわたる友好を改めて誓い合ったことであります。さらに,趙紫陽総理閣下をはじめ中国要路の方々との会談を通じ,私の日中関係の将来についての確信は不動のものとなりました。私は,両国が相互理解を深め,相互信頼を固めつつ,誠実に努力して行くならば,必ずや,日中両国間には,「豊かな交流」が保証され,「揺るぎない友好」が築かれることを確信してやみません。

 御在席の皆様

 近代化建設の力強い槌音,多くの市民の方々の明るい笑顔,そして,広大で豊かな中国の大地,こうした数々の思い出を携えて,私は,明日貴地を発ち,帰国いたします。貴国滞在中皆様方から私どもに寄せられた心暖まるおもてなしと御友情に対し,改めてお礼申し上げるとともに,皆様方と御一緒に乾杯をさせていただきたいと存じます。

 日中国交正常化十周年を祝し,国慶節前夜に際し,第三十三回国慶節をお祝いし,中華人民共和国の一層の繁栄のために,上海市の一層の発展のために,汪道涵上海市長閣下及び御在席の皆様の御健康を祈って

 乾杯!